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17 学校の七不思議3

僕は今、ある妖女と共に学校にいる。

なぜかと言うと、先輩の提案によりここの七不思議を調べに行くことになったからだ。それで、今まで巡ってきた箇所を順に言うと……、理科室と2階女子トイレ、音階室、美術室の計四つだ。残る七不思議はあと三つ。そうして、今は五つ目のスポットである3階女子トイレの前に僕らは連れてかれたわけなのだが……。


流「まーた女子トイレかよ」


この学校二つもトイレの怪談あるのかよ。

流石に唖然とした、いや正しく言えば愕然とした。まさか、七不思議に二つも似たような怪談が存在していたとは……。


幸兎「それで、ここはどんな怪談の噂があるんですか?」


と幸兎が早速彩芽先輩にそう尋ねる。


彩芽「ここには、あの有名のトイレの妖怪がいるのよ」


流「トイレの妖怪?」


そう言われて思い浮かぶのはトイレの花子さんくらいだが……、それなのだろうか?と僕が思考を巡らせていると……。


彩芽「ぎゃぁぁあぁぁぁーー!?!?」


突如としてこの場からいなくなった先輩の叫び声が、目の前の女子トイレから甲高く響き渡ってきた。その声に反応した僕らは、即座にその女子トイレへと入った。

すると……。


花子?「ふふふ、大成功ね」


とうちの制服を着た同い年くらいの少女が、ゾンビのお面を持ってそう呟いた。


花子?「……あっ」


花子?「うがぁぁ〜!!」


僕らに気付いたのか、目の前の少女はそのお面をつけて驚かそうとし出すが……。

それを見た僕は……。


流「いや今更遅いわ!!」


……と、ツッコミをするのであった。


□□□


花子?「まさか、これで驚かない人間がいるとは思いませんでした。ここに倒れている人は気絶するくらい怖がっていましたけどね」


と言いながら倒れている彩芽先輩に視線を向ける。まさかトイレの床で倒れてしまうとは……、運がないな…。


花子?「それにしても、君たちは私のことが見えるんだね。……なんでなの?」


流「それは霊感が強いだからだそうです」


幸兎「へぇ〜そうなんだ。なら納得」


幸兎はなるほどといった感じですぐに納得する。そんな簡単に納得するものなのかという疑問は置いといて……。


流「あなたは誰なんですか?妖怪……なんですよね?」


と聞いてみると。


花子?「はいそうですよ。このトイレで人を驚かしている妖怪です」


と言った。それに続けて僕は次の質問をする。


流「トイレの妖怪ってことは、花子さんなんですか?」


そこが僕は気になっているところだ。


幸兎「確かに、女子トイレに住む妖怪の定番と言えば、花子さんしかいないからな」


花子?「まあ、たしかに定番と言えば定番ですね」


流「でしょー!」


花子?「ですが、私は花子さんではございません」


と目の前の少女はそう言い切った。だが、その次にこうも言い切った。


花子?「ハナコです!」


流「………はっ??」


待って?待ってほしい?頭が混乱する。

今この少女は、自分が花子じゃないって言ったよな?なのに、自分を花子とそうはっきりと言っていた。まて、おかしくないか?花子なのに花子じゃないってどういうこと?


ハナコ「……はぁ〜…」


と僕が頭を抱えていると、彼女はいきなりため息を吐いた。


ハナコ「一応補足として言うけど私の花子は……、華やかの華に子で華子よ!通称………」


華子「2代目花子さんの、華子!」


と意気揚々と語った。その姿に、僕ら二人は唖然とした反応をする。やがて、一人の男がこう口走り出した。


幸兎「大人っぽいのに胸は大人じゃないんすね」


流「…っ!?!?」


その衝撃的で決して口にはしていけない言葉をナチュラルに言い放つ幸兎に、僕は……馬鹿やろーー!!と心の中で叫んだ。いやマジで、馬鹿すぎないかこの男?言ってはいけないワードを、あんな堂々と言えるあの勇気は、世の変態たちからしたら勇者並みだよ。絶対尊敬されるレベルだよ。あいつもしかして変態の才能があるのではないか?とそう疑うレベルであった。それに、普通に言ってることセクハラ行為に当たるしな。


華子「……うな………」


幸兎「え?」


華子「それを言うんじゃなーーい!!」


幸兎「ごぼぉぉ!!」


見事なまでの右ストレートを喰らい倒れ伏せる幸兎を、僕は横で愕然としながら眺めた。


真紀「さすがは地雷男だね、良い気味だよ」


と気絶して倒れた幸兎の頬をつつきながらそう言い放つ真紀。ついに真紀からもそのレッテルが貼られるとは、アイツはやっぱり馬鹿だな、と心中で呟く。


華子「あら、久しぶりねさとみと真紀ちゃん」


真紀「お久しぶりです」


さとみ「誰だっけ?」


華子と真紀「ずこぉー!!」


とアニメのリアクションのようにずっこける二人。


真紀「覚えてないのさとみちゃん!?一回だけ会ったことあったよね!」


さとみ「あったような〜ないような〜……」


華子「もしかして覚えてないの?」


さとみ「うん知らない人だよ」


華子「うっ……(グサ)」


と心に何かが刺さったような音がする。


流「それは言ってやるなさとみ」


それが少しかわいそうだと思った僕は、華子さんを庇う。


華子「そうそう、私の胸は小さくないからね!真紀よりもあるからね!!」


といきなり胸のマウントをとってくる華子さんに、僕は困惑する。


真紀「……はっ??」


と真紀がつっかかる。うん、なんとなくこの展開は読めていた。


真紀「私より胸がでかいですって!ハッタリよそんなの!!」


華子「何よ、見た目的にも一目瞭然でしょ?私はアンタたちよりもお姉さんなんだから、デカいのは当然よ」


真紀「ぐぬぬぬ!!」


と悔しがる真紀。すると、さとみがいきなりこんな事を口走った。それと同時に、この場の空気が一瞬にして一変した。


さとみ「私よりも小さいんだね、華子さん」


華子「んなっ!?!?」


華子「何ですってー!!」


と言いながら、勢いに任せてさとみの胸を揉んだ。そして………。


華子「……っな!!!」


瞬間、急に彼女は膝をついた。


華子「そんな……馬鹿な……、Cカップもあるなんて……」


と小さな声で呟きながら絶望する。


さとみ「すごーい、触っただけでわかるんだね」


とさとみは特に変な声を出さず、困惑したりもせずにそう余裕そうに言った。

そして……。


華子「うわぁ〜〜ん!!」


と泣きながらどこかへと消えて行ってしまった。よっぽどあの言葉が効いたんだろうなと、思いながら彼女の背中を見届けたのだった。


□□□


彩芽「あー、酷い目にあったー」


幸兎「うぅ〜、女子トイレに入ってからの記憶がない……」


トイレから出た僕らは、六つ目の七不思議を見つけるため、廊下を散策していた。

彩芽先輩の集めた情報によると、残りの二つは廊下でしか現れないものらしく、どちらも稀に出現するらしいのでなかなか探すのに時間がかかるようなのだ。このあと教えてくれました。


彩芽「残りの二つは、廊下に忽然と現れる化けた美女と、徘徊するゴリラだそうです!」


……と言っていた。徘徊するゴリラって何だよ?てかなんでゴリラなの?という疑問は置いといて、僕らは探す。

それから探すのに長い時間が経過し、今は学食の食堂で歩き疲れた足を休めていた。


彩芽「あれから30分近く探していますが、全然現れませんね……、お陰で喉がカラカラですよ」


流「じゃあ何か飲みます?僕がなにか奢りますよ?」


と僕が自動販売機の方に近付いていこうとすると……。


彩芽「いやいや、流石に後輩に払わせるわけにはいかないよ、ここは私が」


流「いえいえ!いくらなんでも、財閥のお嬢様からお金を頂くわけには……」


と言ったのだが……。


彩芽「いいのいいの。こんな時くらいちゃんと先輩として後輩の世話をしないと、先輩としての顔が立たないでしょ!それに、部員は大切な社員のようなもの、社員を大事にしなくてなにが社長の娘って話よ」

「それに…、さっきカッコ悪く気絶しちゃったから挽回しないとだし」


それは別に言わなくてよくね?

みづから墓穴を掘っていくスタイルを見せつける彩芽先輩。まあでも……これだけ言われてしまっては折れるしかないなと、そう思った僕は先輩の言葉に甘えることにした。


流「わかりました、なら僕はカフェオレで」


幸兎「先輩、俺もいいですよね?」


彩芽「もちろん良いとも、なにが飲みたい?」


幸兎「それじゃあコーラで!」


彩芽「よしわかった!じゃあ行ってくるー」


そうして、彩芽先輩は自動販売機のところに向かって飲み物を買いに行った。割とここから自販機まで距離があるため、そこを狙って僕は隣にぽつんと座る少女に小声であることを尋ねる。


流「なあさとみ?」


さとみ「なにお兄ちゃん?」


流「あとの残りの二人ってさ、なんだかわからない?」


さとみ「ん〜……、一人だけなら覚えがあるけど、もう一人は知らないな〜……」


と言うので、気になった僕はこう質問を投げかける。


流「その知らないもう一人って誰なんだ?」


さとみ「徘徊するゴリラだよ。そんなの私、一度も見たことないんだもん」


と言った。その言葉を聞いた僕は、次は真紀の方へと視線を合わせた。すると、真紀も話を聞いていたのか、もしくは察したのか首を横に振って否定の意を示した。

とそうこうしているうちに彩芽先輩が帰ってきた。


彩芽「はい、最近寒いからホットにしておいたよ」


とそう言ってカフェオレが入った缶コーヒーを手渡される。


流「ありがとうございます」


と熱いのを我慢しながら蓋を開け、それを少しずつ飲みながら、みんなと雑談を交わすのだった。

そうして、また僕らは捜索を開始したのだが……。なんと彩芽先輩がいきなりこう言った。


彩芽「ごめん、ちょっとトイレに行っていいかな?」


……と。流石に我慢をさせるわけにもいかないし、このまま僕たちだけで探すわけにもいかないなと判断した僕らは、一階の女子トイレの前で先輩を待つことにした。その間、僕らは雑談を交わしていたのだが……。


??「……ねぇ?」


と、誰かからいきなり声をかけられた。その声のした方向を向くと、そこには綺麗な美女が立っていた。思わずうっとりしてしまいそうな、そんな気品ある佇まいと美しさを醸し出した美女がその場に立っていた。

と僕らが見惚れていると、目の前の美女はこう質問を投げかけてきた。


??「ねえ……私、綺麗でしょうか?」


流「はい、きれいですよ」


幸兎「はい!とても清らかな美人です!」


??「そう、なら……」


と一拍を置いて、目の前の美女は突如として姿を変貌させた。その姿はまさにケダモノで、大きさはギリギリ天井を貫かないデカさをもっており、目を赤く光らせ、大きな爪を鋭くこちらに突き立てていた。その姿を目撃した僕ら一同は……。


全員「ぎゃあああぁぁぁぁーーーー!!!」


と……叫びながら遁走する。

なんだあの化け物は、あんなのがいるなんて聞いてないぞ!完全に迂闊だった、まさかあんなのがこの世に存在していたなんて。僕らは振り返ることなくただただひたすらに下駄箱の方を目指して疾駆する。

あともう少しというところで、向かっていた方向から、懐中電灯を片手にもったゴツいゴリラが現れた。


全員「ぎぃぃやぁぁぁぁーーー!!!ゴリラーーー!!」


僕ら全員は悶え叫びながら校門を目指して学校を脱出し自宅へと走り去って行くのだった。


□□□


その叫び声は、一階の廊下から轟くほどに響いてきた。なにがあったのだろうと気になった私は、その場所へと足を運びその現場を目撃した。

そこには、猛獣のような姿と図体、眼光で威嚇する友人がそこにいた。なので私は、その友人に向かって彼女の名前を口にしながら呆れた口調で言った。


華子「またやり過ぎたのね……美景びけいさん」


美景「いやはや、お恥ずかしいですね華子ちゃん」


と図太い声で平謝りする彼女は麗美景うるわびけいと言い、私の昔からの友人だ。彼女は、長いごとこの学校の七不思議怪談で伝説として語り継がれる妖怪。獣女という妖怪の種族だ。そんな彼女には、悩みがあった。


美景「なかなか難しいわね、脅かしながらも人間たちと仲良くする方法」


そう、彼女は長年この学校で怪談としてやってきたが……。そんな彼女の以外な悩みは、人間と仲良く話すことだった。しかも……、その人間を脅かした後にお話しするというなんとも変なこだわりを持っていた。こういう難儀なところが無ければ、人間とお話しするなんて造作もないことなのだけど、これではやっぱり難しいわね。

と考えていると……。


技子「急に叫び声が聞こエタかラ急いデ来てみれば……、また美景さんの仕業ダッタのですネ」


と急に背後から気配を消して現れる技子に、私は一瞬ビクッとなりながらもすぐに冷静さを取り戻す。


華子「びっくりしたわね、いきなり背後から現れないでよ」


技子「すまないな華子、別に驚かせるつもりはなかったのだ」


華子「それはなんとなくわかるけど」


技子「それで、また美景さん脅かし過ぎちゃったのね」


と美景さんの方に視線を合わせてそう呟く。


華子「そんなのよね、本当にその姿を出さずに驚かせばいいものを」


美景「だって、これ以外に考え付かないんだもの」


と言い訳を口にする。それはもう少し努力をしてから言ってほしい言葉だったと、思いながら嘆息する。


華子「本当に難儀な性格だわ……」


技子「そういう設定だから仕方ないよ」


華子「意味わかんないこと言わないでよ」


と隣で変なことを言い出す技子に、冷静なツッコミをしながら私は再度彼女のために考え込むのだった。


□□□


肉附「なんなんだ急に私を見てゴリラとは失礼な」


と校門へと走り去っていく彼らを見届けながらそう思った。

えっ?もしかして俺の場面これだけなのかな?とそんなメタそうなことを思いながら…………。


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