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14 ちょろ……

流「………」


さとみ「………」


結局あの後から、まともに会話ができていない。だが何故だか…、僕には一切として悔いはなかった。なんせ、ずっと思っていたことを言えたのだからな…と、内心で思っていると……。


さとみ「……あの…」


とさとみが弱々しそうな声で、小さくそう僕に呟いた。


流「どうした?」


と僕が尋ねると……。次に彼女はこう言葉を口にした。


さとみ「わっ私は別に、そんなに可愛くなんかないからね!」


……と、訳のわからないことを口走り出した。あと、そんなにってどういうこと?


さとみ「確かに私は、お姉ちゃんからも可愛いって言われたけどさ、結局そこまで可愛いとは限らないじゃん?だから、君の言ったのことはお世辞なんでしょう?!」


と言ってきた。いや、本当の気持ちを言ったつもりなんだけどな…と、思っていると。僕はあることを思いついてしまった。

少し意地悪をしてやろうと、彼女をからかうことに決めた。


流「はぁ…、そうかそうか……。君は僕の気持ちをそうやって無かったことにしようとするんだな…」


さとみ「……へ?」


流「あーあ、全て本当のことなのに冗談で済まされちゃうなんてな〜…。僕はとっても悲しいよ、気持ちが伝わらなかったことが…」


もちろん嘘である。別に僕は悲しんでいないし、逆に心の中は楽しそうに踊っている。ふと、彼女の反応が気になった僕は、さとみの方に視線をゆっくりと寄せる。すると……、彼女は困惑した様子でアタフタとしていた。それが面白くて、ついつい笑みが溢れてしまっていた。


さとみ「……って、あなた笑ってるでしょう!」


そう言われた時には、もう遅かった。気づけば僕の顔はニヤついていて、彼女をからかっていたことがバレてしまった。


さとみ「私をからかってたのねお兄ちゃん!酷いわ、人の気持ちをもてあそんで!!」


流「その言い方は語弊があり過ぎるからやめろ!」


と痴話喧嘩のようなことをやっていると…。


??「ふ〜〜ん。なら1から10まで説明してもらいましょうか?」


と聞き覚えのある声が背後から響き渡る。その瞬間、僕は死を覚悟した。だって、その後ろにいたのは……。


七海「さあ、さとみちゃんの心を弄んでたって聞いたけど……。どういうことなのか……キッチリと説明をしてもらいましょうか……?」


七海が立っていたのだから。


流「なっ七海!?なんでお前がここに!?」


七海「なんでって、大家さんから合鍵を借りて入ってきたのよ」


大家ぁぁぁぁーー!!なんてことをしてくれたんだあの人はーー!!と心中で悶え叫ぶ。


七海「…さて、女の子の気持ちを弄んだこの男には……、しっかりと天誅を下さないとね」


と、恐ろしい目つきと顔で言われた僕は恐ろしさのあまり鬱になりかけたのだった。

因みに余談だが、怒られてる間ずっとちびりそうなトイレを我慢していましたとさ。

めでたしめでたし………、な訳もなく……。


七海に説教された僕は、次にさとみにも説教を受けたのだった。それから、さとみはずっと不機嫌でなにを話そうにも反応してくれませんでした。


□□□


そして翌日。

僕らは学校の屋上で、弁当を食べていた。

そして、今隣にいる奴に僕は相談しようと思っていた。


流「はぁ……」


真紀「……ねえ。元気無いみたいだけど……、どうかしたの?さとみちゃんも、今日いないみたいだし……。」


と僕の疲れ切ったため息に反応したのか、真紀さんが気遣って話しかけてきた。僕はそれを、疲れた表情で話し始めた。


流「実は、昨日酷い目にあってさ…」


幸兎「ん?どうふぁしたほか?」


と言うと、隣に座っていた幸兎が反応して聞いてきた。僕は、その聞き取りにくい声に、こうツッコミをかました。


流「飲み込んでから喋ってくれ」


……と。すると、幸兎はひと噛みもせずに一気に口の中の物を飲み込んだ。それに僕は、さらにツッコミをする。


流「……ちゃんと噛めよ」


幸兎「まっ……、細けぇこたぁ良いじゃねえか、気にすんなって!」


流「……そやな。でっ本題なんだが…、昨日とんでもない目に遭ってさぁ…」


そうして、昨日あった僕の災難を嘘偽りなく幸兎に伝える。幸兎は、小刻みにうんうんと頷きながら僕の話を聞いてくれた。やがて、彼はこう感想を述べた。


幸兎「お前が悪くね?」


……と、言ったのだ。


流「えっ!僕が悪いの!?」


幸兎「当たり前だろ、何言ってんだお前?」


お前バカか?と言った顔で言われた。失礼かもしれないが、普段馬鹿そうなお前には言われたくなかったな。


幸兎「なるほど、だから今日さとみちゃんがいなかったのか…」


流「……うん」


実は、今日はさとみはついてこなかった。理由は、言わずとも簡単にわかるだろう。


幸兎「でっ?それを言ってお前は俺になにをしてもらいたいんだ?」


流「……え?」


幸兎「あれだろ?さとみちゃんの機嫌を損ねてしまったから、俺に相談しにきたんだろ?……もしかして違ったか?」


幸兎は、完全に僕の考えていたことの的を射ての発言を口にした。だけど、少し不安なのか確認を取るような言葉もそのあと口にした。僕は、彼の的を射た発言にしばらく唖然とする。まさか、こんなにも勘がいいとは思っていなかったからだ。やがて、僕はその口を開いた。


流「よくわかったなお前、僕がそれで悩んでるって……」


幸兎「顔を見ればわかるし、大体の話とさとみがここに居ない訳を考察すれば、それくらいは容易に推理できる。」


と淡々と告げる彼に、僕はこう言葉をこぼした。


流「お前……探偵に向いてるな」


幸兎「いやいや、俺はそこまで賢くねぇさ…」


ここまで見抜いておいて賢くないとは、謙遜のし過ぎだと思いますよ…、と心の中でそう思った。だが、あえて僕はこれ以上の褒め言葉は言わなかった。もしかしたら、調子に乗るかもしれないと思ったからである。実際、一度だけ調子こいて失敗しているしな。


幸兎「それなら、良い方法があるぜ!」


流「どんな方法なんだ?」


と聞くと、幸兎は自信満々にその方法を告げた。


幸兎「なにか…、さとみちゃんが喜びそうな物を買って謝る。そうすればなんとかなるぜ」


そんなの効果あるのか?と思ったので試しに聞いてみると、幸兎はこう返した。


幸兎「もちろん!なんせ、真紀が怒った時にそれやったら、案外ちょろかったからな!」


流「……そうか、ありがとう」


僕は無表情で後ろに視線を寄せながら、そうお礼を口にした。そして、立ち上がりながら……。


流「それじゃあ、また明日な……生きてれば」


とそう意味深に付け足して、僕は屋上を後にするのだった。なにが起きるのかを知ったうえで……。


僕が屋上から出て行くと同時に、二つの声が扉越しに響いた。


真紀「へ〜…、そんなに私ちょろかったんだね……」


幸兎「あっ、待て待て別にそんなつもりではなくて……」

「ぎゃあぁぁぁ〜〜ーー……!!!」


やっぱりあいつは、自ら地雷を踏みに行くバカな奴なんだな……と、僕はそれを再確認してから自分の教室へと戻っていくのだった。


□□□放課後


今は帰宅途中。僕は今、自らの家を目指して足を進めていた。目指す場所は自分の家だというのに、こんなにも帰りづらいと思ったのは初めてだった。だって、今まで一人暮らしをしていたのだから、そんなの感じるはずがないだろう?だけど、今あそこには不機嫌なさとみがいるため、こんなことになってしまっている。まあ、全て自分で撒いた種なので、仕方ないわけなのだが……。


流「一応、アイツのアドバイス通りに従ってはみたが……。さとみの好きなものって分からないんだよな。今まで聞いたことも言われたこともないから…」


今、僕の手にはある紙袋が握られていた。それは、女の子ならば嫌いな奴はいないと評判の甘味だった。


流「に、しても……こんなので機嫌直してくれるのかな?」


内心、少し不安だ。こんな食べ物如きで、機嫌が直って許されるのかどうか……。普段こうやって誰かを怒らせたことが無い僕にとっては、初めてのことだ。

何もかもが初めての経験……それに今、僕は直面していた。

そう考えてるうちに扉の前にたどり着く。


流「……まあ、一か八か…やるだけやってみるか…」


とそう僕は覚悟を決めて、その扉を開けた。


流「たっただいま〜……?」


そう言ってみたが反応は無かった。

僕はそれに肩を落としながら残念がる。いつもなら、僕の前まで来て満面な笑みを向けてくるのだが…、声も姿も現さなかった。

靴を脱いで廊下を少し歩くと、リビングから良い匂いがしてきていた。その匂いから、僕は彼女が今リビングにいることを確信した。そうして、僕はその扉を開けた。


さとみ「………おかえりなさい」


リビングに入ると、案の定キッチンには現在進行形でさとみが晩御飯を作っていた。

だが、僕に向けて言ったその言葉には気持ちが込められておらず、まだ彼女が不機嫌であることを表していた。そんな彼女に、僕は勇気を持って話しかける。


流「その、さとみ……」


さとみ「なに、流さん?」


どうやらお兄ちゃんと呼ばれなくなってしまったようだ。こんなにも他人行儀な口調で言われると、なんとも心にくるものがある。だが、僕は狼狽えることなく言葉を紡ぐ。


流「お前に謝ろうと思ってさ……ごめん!あと、お詫びとしてこれをお前のために買ってきた」


と言って、僕は紙袋の中からケーキの入った箱を取り出して見せる。


さとみ「えっ!ケーキ!?」


流「えっ、あっうん…。そうだけど?」


そのいつものさとみの反応に少し唖然としながらそう言った。すると……。


さとみ「お兄ちゃんありがとー!あと、冷たくしちゃってごめんね!」


と、さとみはいつもの満面な笑みを浮かべながら勢いよく抱きついてきた。僕はそれに喜びを感じながら、心の中でこう思った。

いやちょろ過ぎるだろ!?

……と。


さとみ「あ、もうご飯出来上がるから待っててね。今日は少し、隠し味を入れてるからさー!」


と言い残してさとみはキッチンで料理を作るのであった。僕はそれに少し、嫌な予感を感じながら、ご飯が出来上がるのを待つのであった……。

そうして、無事僕らは仲直りを果たしたのだが……。昨日のお返しなのか……、今日の料理は唐揚げだと言うのに、僕のだけ大量に辛しが練り込まれていたのでした。

めでたしめでたし……。

次回は、七不思議の話となります。

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