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10 お父さんがやってきたぞ

ズゾゾゾっと、コーヒーを啜る音が響き渡る。今日の朝、僕はソイツと対面をしていた。


親父「父親に向かってソイツとはなんだソイツとは。ちゃんとパピーと呼びなさい」


流「なんでわかるんだよ!あと、どこのパリピだよ」


何故か心を読まれてしまう。


親父「当たり前だろ、お前にはわたしの血が混じっているのだから、お前の考えていることぐらいわかって当然だろ」


流「理由になってねえし穴だらけの根拠にしか聞こえねえよ」


全く、どこで脳みそがバカになったのやらこの親父は……。


親父「そんなことは置いといてだな」


流「やっと本題か」


長々と話したわけでもないのに、疲れたかのように背伸びをして姿勢を正す。親父は無駄話をすると多少長くなるので、短い時間会話をしただけでも疲れを感じてしまう。


親父「今日はお前に、話があってここに来た」


流「どうせ母さんと喧嘩したんだろ?」


親父「さすがは我が息子、わかってるじゃないか」


流「わかりたくなかったけどな」


皮肉を込めた口調で呆れながらそう返す。


さとみ「お茶が入りましたよー!」


親父「うむ、悪いなさとみ君。いただこう」


親父はさとみがいることになんの反応もなく湯呑みを取り、さとみの入れたお茶を啜る。


親父「おいしいなこのお茶、ぬるくて飲みやすい。母さんもこれぐらいやさしくなってくれたらな…」


流「多分一生無理だな」


親父のその言葉に、僕は現実を突きつけるように否定を口にする。


親父「まあ、そんな話は置いておいてだな……」


流「なんだよ親父…、急に真剣な顔をして?」


こんな顔をした親父は初めて見た。僕はその圧に押され、つい息を呑んでしまう。

その間、沈黙と静寂がこの空間を支配する。やがて、その沈黙は破られ親父はその口を開いた。


親父「さとみ君とはどういう付き合いだね?いつ、子供ができるんだね?」


流「…はぁ?」


そんな予想外の質問に、僕は唖然としながらそんな素っ頓狂な声を漏らした。


親父「ほら、この妖怪少女と同棲をしているのだろう?だとしたら、二人であんなことやこんなことをしているのではと思ってな?」


流「なわけないだろクソ親父!」


やっぱりこの親父は馬鹿なんだなと改めて痛感する。なにが悲しくてこんな幼女とそんなことしなければならんのだ。


さとみ「ちょっとー!私はたしかに見た目は幼女だけど、これでも歳は十四歳なんだぞー!」


親父「そうだぞー!女の子にそんなこと思っちゃダメだぞ!」


流「なんで二人揃って僕の心が読めるんだよ!僕の心の声のセキュリティ低すぎんだろ!」


親父「我が息子ながら、やはり馬鹿だな」


流「アンタにだけは言われたくなかった…」


親父から言われたのならもうおしまいだな。よし、このまま死んでしまおうか…。

ま、そんな勇気僕には無いんですけどね。

と内心でボケる。


親父「にっ……、してもおじいちゃんが言っていた通りだな……、やはり」


流「…?なにがだよ?」


僕はなんのことか一切理解できていないため、ついそう問いかけた。


親父「ほら、お前のおじいちゃんやおばあちゃんがよく言ってただろう?」


流「だからなにがだよ?!」


さっさと言いたいことをはっきりと言わない親父に対して、僕は急かすように怒鳴る。


親父「私たちの家系は代々霊感が強い……と」


流「そういや、よくおばあちゃんが言ってたな」


おじいちゃんに関しては知らないが、おばあちゃんはよくその話をしていたことは覚えていた。


親父「あっ、そういえばお前はおじいちゃんに会ったことがなかったな。お前が産まれる前に亡くなってしまったから……」


流「そう…だな」


僕とおじいちゃんに面識はない。だけど、死んでしまっているということを聞くと、つい物思いにふてってしまう。もし、おじいちゃんが生きていたら、僕はきっと可愛がられていたんだろうな…と、そんなたらればの妄想をする。


親父「だから、私たちの家系は代々妖怪が見えるのだろうな……。まあ、それが着々と薄くなっていってるわけだがな」


親父「もしかたら近い将来、その妖怪を見ることができる霊感も、無くなってしまうのだろうな」


流「そうか…」


もし、霊感が無くなっていたとしたら、多分僕はさとみには会えていなかっただろう。

さとみがいない事を考えてると、何故か寂しさ覚えてしまった。おかしいな、前は一人でも寂しいなんて思わなかったのにな……。自分にも、何かしらの変化があった事を自覚する。


親父「にしても懐かしいな……、私も昔はよく妖怪と話したものだ。そうあれはたしか……」


流「あっ、わりい課題が残ってたから僕はこれで」


そう言ってリビングを後にしようとする僕。それを止めたのは、もちろんのことソイツである。


親父「おいちょっとまて!?まだ母さんとの喧嘩についてが終わってないだろ!」


と自分で脱線したくせに、今更本題に入ろうとする親父。そんな親父を無視して、僕はリビングを後にするのだった。

だが、その前に……。


流「そうそう、親父の問題は親父が自分で解決してくれよ?そんじゃあ、お帰りなさってね…」


と言葉を残して、僕は自室へと戻るのだった。

全く、いったい何が目的で来たんだかと、そう思いながら………。

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