千羽鶴
千羽鶴が飾ってある。
千羽鶴は病気や怪我の回復、平和への祈り。勝利祈願などの思いが込められた折り紙で作られた束だ。
はじめは何だこんなものと思っていた。
だが、ここへ来て、感謝の思いがめばえ、綺麗だなあと思うようになった。
孤独な私のために、医療従事者の皆さんが思いを込めて作ってくれたのだ。
私のすぐ傍に飾ってくれている。
自分の命が尽きる時というものは、なんとなくわかるそうだ。
私は千羽鶴に指をのばし触れた。
先生たちに看取られる中、
私は最期に見た。
光が。
千羽鶴たちが渦を巻いて、走馬灯のように私の人生の思い出とともに舞っている光の中に。
女神のような姿を見た。
あたたかい声が聞こえた。
私の耳は疾うに遠くなっていたが、いのちに直接に伝わってくる感覚で聴こえた。
私は夢見心地で、
静かに息をひきとった。