繋駕速歩競走
先日、現存する競走馬は「ダーレーアラビアンの子孫ではエクリプス系統のみ」と書きましたが、乗馬用などを含めるとダーレーアラビアンの子孫では「フライングチルダーズ」の系統も残っているそうです。
「フライングチルダーズ」の全弟に「バートレットチルダーズ」がいて、この曾孫が「エクリプス」です。
さて、「フライングチルダーズ」の子孫は「ブレイズ」→「サンプソン」→「エンジニア」→「マンブリノ」→「メッセンジャー」と続き、「メッセンジャー」が渡米して種牡馬として活躍します。
そして産まれたのが「マンブリノ」(米)で、サラブレッド競走馬ではなく、トロッターと呼ばれる速歩が得意な品種に繋がります。
「アブダラ」から「ハンブルトニアン」(米)と続き、この「ハンブルトニアン」がスタンダードブレッドの基礎種牡馬となりました。
欧米で盛んな繋駕速歩競走は、この「ハンブルトニアン」の子孫が繁栄しており、また繋駕速歩競走の人気が高いようです。
競走形態が二輪の馬車を牽引する様式ですので、古代ローマや古代ギリシアの戦車競走を彷彿とさせるのが人気の一つかもしれません。
さて、馬の歩様は常歩、速歩、駈歩、襲歩と速くなります。
繋駕速歩競走ではトロットで進むのでトロッターと呼ばれ、これより速い歩様は失格となる厳しい競走です。
ペーサーと呼ばれるのは走り方の違いで、トロットが前後左右の脚を交互に進めるのに対して、ペーサーは前後を揃えて左右対称に進みます。
詳しく説明すると、トロットでは同時に着地する脚が右前と左後、左前と右後になります。
対してペーサーは右前と右後、左前と左後が同時に着地します。
人で喩えると、トロットが通常の走り方で、ペーサーが「なんば走り」と言えそうです。
我が国でも繋駕速歩競走は昭和四十年代までは行われていましたが、スピードが遅く迫力に欠けていたことや、芝のコースが増えて車輪による傷みが看過できなくなったことで、中央競馬で廃止が相次ぎ、地方競馬からも廃れてしまいました。
戦前は軍馬の生産も含めて競走馬の生産や育成が奨励されていましたが、トロッター種は不評だったようです。




