ラーメン小宇宙
ラーメンについて書き進めるにあたってどうしても食べておかねばならいと考えているラーメンがあった。
中華そば320円。
私の行動範囲内、知る限りの最安値ラーメン。
むろんランチタイムだけではない標準の値段設定で、だ。
これまで地雷を踏むのが嫌で知ってはいたが入ったことのなかったこの店舗に
今、入店する。
店内は普通、地域最安値ラーメンを提供する店舗としては綺麗すぎるぐらいだ。
所謂、お年寄りが年金で食い繋ぎながら住居兼店舗で固定資産税自腹、人件費無償で地域に振る舞う(原価計算できてなくて全く儲かっていないのだがお金は動いているので事業している風、だが経営としては全く成り立っていない“働いても働いても楽にならない”ケース、田舎にはままある)タイプではなさそうだ。
カウンター内のお姉さんへ口頭で注文を伝える。
お姉さん作る。
お金を払って受け取る。
セルフで自席へ持っていく。
ワンオペ駅そば方式。人件費考えたらこのスタイル。
よもやよもやだ。
見た目は、ちゃんとラーメンしている(笑)
標準の具はワカメとメンマで揚げ玉と刻みネギがセルフで盛り放題。
大事なことなので2度言う。
税込み320円のラーメンに、揚げ玉と刻みネギが盛り放題。
なんということでしょう…。
流石に肉成分は見当たらないがむしろ当然、寂しいと感じたら別売りのコロッケや天ぷらをトッピングすればよろしい。
麺は普通のストレート麺、量も普通に一人前分。
おっと、レンゲがない、よもやよもやだ…丼を両手で捧げ持ち、スープを啜る。
!…謎は、すべて解けた。
『めんつゆだ!』
ラーメンスープを同時提供のそば・うどんのつゆと共用することにより単価を下げる。
所謂「蕎麦屋の中華」というやつだ。
山形の鳥中華、関西の黄そばがまさしくこの(中華麺+和風だし)方式。
煮干しや魚介スープのラーメンがあるのだから、鰹だしのめんつゆだって当然アリだ。
このスープの味わいが身体に染み渡りまたなんともいえない懐かしさを醸す。
日本人のDNAに深く刻み込まれたイノシン酸愛は和と中華の垣根をあっさりと乗り越える。
うまい。うまいぞ。
中華麺と共に“ラーメン”のアイデンティティを守っているメンマも普通に美味しい。
ワカメもネギも元よりそば・うどん・ラーメン共通のお友達、相性は抜群。
揚げ玉とめんつゆが合わない訳もなく。
むしろ動物系素材を多用したラーメンよりも全体が優しく、無化調に近い、まろい、ふつうにおいしい、からだがうれしい…。
ウィキペディアによれば、
ラーメンとは、中華麺とスープを主とし、様々な具を組み合わせた麺料理。
のことだそうだ。
何の問題もない。
中華麺+スープ+具
この三つを合わせて食す。
我は今、ラーメンの原点、ひいては食の原点と向き合っているのではないのか?
一杯320円のラーメンに小さくも確かな一つの宇宙を感じながらひたすらに食らう。
無心で完食、しばしの放心、やがて、ほっこりとした気持ちで、感謝を込めて伝えよう。
ごちそうさまでした。
20210206誤字修正
20100207エッセイ日間25位ありがとうございます!
20100208エッセイ日間14位ありがとうございます!