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対偶関係。  作者: ちゃぶ
7/22

純粋に

「じゃあ、そろそろ行こっか」


9時15分を過ぎたあたりで由依がそう言った。


ここまでの数分間の会話は当たり障りなく受け答えし、同調に徹した。それでも、かなりぎこちなかったと思う。


教室から出るとちらほらと他の生徒も移動し始めている。その後を追う。


由依と廊下を歩いている時に、ふと思った。いきなり全くの他人の身体になって、思い通りに動けるというのもなんか変かな、と。

触れちゃいけないかもしれないが、下の方の感覚にもあまり違和感を感じない。

そういえばこの世界に来てから身体の感覚について、違和感を覚えたことがない。


まあいいか。

夢から醒めて終わり。転生なら、なんか上手いことなってんだろ。


そんなことを考えた途端、トイレに行きたくなった。そういえば、こちらに来てから1回もトイレに行っていない。


「ごめん。ちょっとトイレいってくる」

「しょうがない。待ってあげる」


罪悪感もあるが、いつかしなければならないので、仕方ない。


「すみません。失礼します」


なんとなく小声で唱えた。


個室に入ると、なんとなくスカートを捲りあげて、前に寄せて手に持ってたんだけど、やり方はこれで合ってるのかな。

いや知らんけど。できるならいいだろう。



ふぅ〜スッキリ。


「おまたせ。ありがとう」

「よしいこう」


なんか。なんだろう。

この空間、この時間、色々と馴染んできた。何故か知らないけど、新鮮味が薄い。

なんてこった。せっかくの美少女JKへの転生なのに、新鮮味を感じないなんて…

いや、時間が経つにつれて慣れてくるのは当たり前か。


まあ、そこらへんについては深く考えずに、この学生生活を純粋に楽しむとするか。


「未佳先輩おはようございます!じゃあ!」

「あ、おはよう」


校舎と体育館との通路に第2のポニテ少女が颯爽と現れ、去った。

しかし先輩呼ばわりするとは、この子は1年生。今日が春の始業式であることから、面識があるなら中学が同じだったとか?


体育館に続々と生徒が入っていく。上履きのまま入っていいようで、貸出のスリッパがよく目立つ。


人数でいうと30人が3クラス、それが3学年とすると、全校生徒は270人。規模の感覚としては中学に近い。


体育館内では1年生が既に整列済みのようだった。後から2.3年生がダラダラと集まってくる感じ。だから急いでたのか。


あれ、背の順とか分からないし、どこに座ればいいんだろう。


「ねぇ、由依はどのへんに座るの?」

「さぁ私は背高い方だし、後ろから3番目とか?」

「じゃあ私は前から3番目ぐらいかな」


周りを見てみると、どうやら男女別の2列で、大体の背の順で座るようだ。そういえば、そんなことをした記憶があるようなないような。


2年3組では、桜井さんだっけ?この子が1番前に座っているので、とりあえずその後ろに座ることにした。


4月でも体育館の床は冷たい。特につま先が冷える。外は寒く、体感でたぶん10℃もない。教室には暖房がついていたが、体育館にそんなものはない。時間とともに暖まるのを待つしかない。


それ故この状況下で浴びる太陽の光は、なんというか、寒さの上に暖かさを乗せられて、非常に心地いい。寒いという辛い状況だからこそ、少しの幸せが増幅して大きく感じるのかもしれない。


頭がポカポカする。あ〜寝てしまいそう…


影に座っている生徒たち、可哀想に。寒かろう。

この極楽を味わえないなんて、すみませんね、いい思いしちゃって。


「ねぇ未佳ちゃんって…え?」

「どうしたの?」

「ダメだよ、スカートの中丸見え!ちゃんと隠さないと」

「あっ!」


急いでスカートを太ももに手で押さえる。

なんかスースーすると思ったら、そりゃそうだ…

膝上のスカートのまま体育座り。中身が見えるに決まってるよ。

だんだん恥ずかしくなってきた。


「未佳ちゃん、スカートの中は下着だけじゃダメだよ?せめてスパッツか、体操着でもはかないと」

「はい、ごめんなさい…」

「明日からは何かはいてくるんだよ?」

「うん、気をつける」


ナァーハハハハ!!!やばいニヤケ顔を隠さないと!フハハッ!


いやーテンションだだ上がりです。

同学年なのに年下のお姉ちゃんみたいな感じで、めちゃめちゃキュンときた。

桜井さん、クッソ可愛いじゃん!

クーッ!やはり年下の姉は存在していた。

次からはお姉ちゃんと呼んでみたいものだ。


「あの、ちなみに今は何はいてるの?」

「私?今は体操着の下はいてるよ」

「なら私もそれにしようかな」

「未佳ちゃんのスカートは膝より少し上だし、体操着だとすぐ見えちゃうかもだから、スパッツの方が良いかもね」

「ありがとう!」


いや〜優しい子。好き。恋愛感情じゃなくて、友達としてって感じだけど。


そうこうするうちに、周囲の整列は終わり、始業式が始まった。

初めにお決まりの校長の挨拶。春休み期間の生活や、年度始めの意識などについて。

次に新任の先生の紹介。

その後、教頭や学年主任が具体的な事を話していた。


あ〜っ、暖まってきたはいいけど、体育座りを維持するのはきついな。かれこれ40分は話を聞いている。ちょっと手を敷いておしりの痛さを紛らわそう。


「はい、ではこれで始業式を終わります。皆さんくれぐれも気持ち切り替えて、新学期に臨んで下さい。以上で終わります」


よっしゃ〜やっと終わる。

よくもまあこんなに長時間話を続けられるなあ。

うーっ、体が伸びるーっ!


「ねぇ未佳ちゃん」

「はい」

「新しくきた生物の先生、綺麗だったね〜」

「確かに。しかも新卒の22歳だから、生徒のき気持ちとか分かってくれそう」

「だねー」


うーん。桜井さんと話すと純粋に楽しい。素の自分で話せるというか、桜井さん自体が話しやすい性格をしているんだけど、それにしても自然体でいられると感じる。


僕が求めていたのはこういう友達だったのか

もしれない。


現実世界にも桜井さんがいれば、友達になりたいなと、強く思った。

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