表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
対偶関係。  作者: ちゃぶ
2/22

なんだここは。


視覚と聴覚はあるようだが、いきなり眼前に現れた状況がまるで掴めないので周囲を見回す。


まずここは…

とりあえず家の中だな、よし。

僕は椅子に座っていて、目の前に大きなテーブル、その上には食事が並べられている。

白米、味噌汁、焼き魚…

典型的な朝ごはんかな?


僕のついているテーブルは長方形型で、他に3人が席についている。

僕と女性が向き合い、その横に制服を着た男女が向き合っている。


さっき声を発したのは僕の目の前にいるこの女性だ。おそらく40代、母親だろうか。

そして2人の男女はどちらも学生で、兄妹だろう。

家族で朝食をとっている状況か。素晴らしいな。


それにしても随分鮮明なんだな。明晰夢ってやつだろ?これ。

体重の感覚もあるし、どこを見渡しても現実と遜色なく、ティッシュ1枚から陽に照らされたホコリ1つまでしっかりと見える。

外から差し込む陽の光が部屋の中に明暗を作り出す。


あらゆる事物の完成度の高さに感動というか関心が止まらない。


すると母親らしき女性が口を開けて言う。


「ミカどうしたの?今日から学校でしょ?春休みはもう終わったんだから、切り替えていきなさい」


春休み?学校?よく分からないが取り敢えず肯定的な返事をしておこう。


「うん。分かってる」


???

なんだこの声、やけに高いな。もしかして変声期前とか?めっちゃ可愛い声なんだが。


そう言えば自分の立ち位置や姿を確認してなかったことに気づき、おもむろに視線を下に向ける。


すると手の太さに比べ、明らかに胸が盛りあがっていることが分かった。


なんだこれ?やけに胸板が厚いのかな?

どれどれ触ってみようぜ…


プニッ


は。えっと…柔らかい…非常に柔らかいぞ!


さらに下を注視すると、自分がスカートを履いていることに気づく。


えっとつまり、もしかして…これは…!!


「ごめん、ちょっと」


朝食の途中だったらしいが、部屋から抜け出し、急いで洗面所へ向かう。洗面所はどこだ?


玄関と階段が見える。ここは1階か。なら大体このへんに………あった!

へぇ〜。珍しく浴室と洗面所が通路を挟んで離れているのか。


いや今はそんなことはどうでもいいんだ。

よし、見るぞ〜っ。


高鳴る鼓動と苦しい程のワクワク感で一瞬鏡を見ることを躊躇ったが、せっかくの明晰夢なら覚める前にと、まずは自分の姿が見えない程度に細目にして、鏡の前に移動する。


そして恐る恐る目を少しづつ開けていくと、そこには素直に超絶可愛い美少女の姿があった。


小柄な体格、背中にサラサラと流れる長い髪、スラッと伸びた足、少しあどけない顔。

体格に対して十分大きな胸。


アニメに出てくるなら可愛くてしっかりしてそうな生徒会長って感じか。100点です。


あまりに理想通りなので、鏡て細部を見ながら自己陶酔に浸り、ニヤニヤが止まらない。もう無理だぁ耐えられん!


素晴らしみの連続にグッと来すぎて精神が避難を求めているので、反対方向を向いて、一呼吸いれる。


美少女だから許されるものの、元の現実の姿でこれをやってしまったら目も当てられないような残酷さだろう。


少し落ち着いたので再度鏡を見る。


いや〜制服も似合ってるし、実際に毎日着てそうな使用感もまたグッとくる。

スカートの丈も短すぎず、膝より少しだけ上という程度なのもまた好印象。


人生初の明晰夢ってそれだけで嬉しいのに、こんな美少女JKになれるなんて、日頃の行いがいいからかなぁ?


自慢じゃないが、僕は勉学と労働どちらにも励んでいる善良な大学生だ。

春学期のGPAは3.17だし、バイトも月7万円は稼いで親の負担をいくらかは減らせている。

ただぼっち生活なのが悔やまれるよなぁ。


おっと、そんなことより早く朝食に戻らなければ。


せっかく美少女JKになれたんだから、完全に好き勝手するよりはある程度ストーリー性を保っておきたい。

その為には主要人物からの不信感はなるべく割けねばならない。


待てよ?いつ目覚めるかも分からないならもっと自由にした方がいいかな…でもJKを堪能するならやっぱり学校行った方がいいよな。


この夢がどれだけ現実に即しているのかは分からないが、まずは今の流れのまま学校に行ってみることにした。


時計を見ると7時54分を指している。


これって大丈夫なのか?間に合うよね、多分。いや、遅刻するのもアリだな…

まあいいや、朝ご飯を食べよう。


トイレに言ってただけですよ。みたいな感じでそそくさと席に戻る。


さてさて味覚が働くかはまだ試して無かったな…


上の方が薄くなった味噌汁を箸でかき混ぜる。するとお椀の中で液体が回りだし、下に溜まっていた味噌が上に舞い上がっていく様子が見て取れる。


ここで、少女が話しかけてくる。


「お姉ちゃん今日どうするの?」


なるほど僕は姉ですか。

ならこの妹は妹にしては姉より随分大きいんだな。

しっかりしてそうだ。


「どうって、何が?」

「いや今日始業式だからさ、午後一緒にどこか行こうかなと思って」

「いいよ、行こっか。どこ行きたい?」

「えっとね、パンケーキ食べに行きたい!」

「じゃあ学校から帰ったら行こっか」

「うん!」


元気な妹だ…

てかパンケーキって!ガチガチのJKかよ!

いやまあそうなんだけどさ。


妹とはいえ美少女。そしてこちらからしてみれば全くの初対面。

その相手とスムーズに会話出来たことにニヤけそうになり、それを隠すのに必死である。


そういえば、おそらくの兄は既に食べ終わったのか、姿がない。


ススス…

優しく味噌汁を頂くと、少ししょっぱく、そして十分に濃い味噌の味がしっかりと感じられる。

魚は…これはアジか。醤油で食べると普通に美味しい。


あぁ〜。


一人暮らし初めてから朝はコンビニのパンしか食ってなかったからなぁ…

久しぶりの和の朝食、うめぇ…

これホントに夢なのか?


おっとあまり感動してる暇はないぞ。

まず学校に行ってみるといったが、その学校の場所を突き止めなくてはならん。まさか家族に自分の学校の場所を聞く訳にもいかんからな。

あと周辺情報も少しは欲しいから早く食べないとな。


「ごちそうさまっ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ