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大きな失敗

 私はボフンと大きな大きな王宮のベットに飛びつく。


「あーーー。疲れたー。」


 私が大きな声を上げると、アイリーンが優しく笑う。


「すんごい緊張してたもんね…ふふ。」


「そりゃするよ…。私だってさ、あんな大事になるとは思わなかったしさぁ……。」


 勲章式の間、私とカルミア様は決して離れなかった。きっと、私への攻撃を避けさせる為。はじめはどうして私と入場したりしたのか疑問に思ったりもしたけれど、全て私の為の行動だった。


 勲章式で私はとてもとても目立った。それは、沢山の怨恨を買うのと一緒。もっと直接的な攻撃を受けると思っていたが、カルミア様のお陰で避けられてた。助けられた。


「それにしても…嬉しく無いの?顔が暗いよ。」


「嬉しい…?」


 私は今日……何よりもカルミア様の顔が暗いのが気になって、それどころではなかった。はじめは全然そんなことなかったと思うけど…。私何かしちゃったかな。うーん。ダメだ、何も思い当たらない。


「え、だって婚約成立したんじゃ無いの?セレナに正式に……。」


「は!?!?決まってないよ!?」


 私は思わぬアイリーンの言葉に目を剥いた。


 そもそも、まだ婚約者は私を含めて四人いる筈だし、決まってないよ。もちろん、そうなれば超嬉しいけどね!?何故そんな話にアイリーンはなってるのか…


「え!?だって、勲章で第一功だったんでしょ?お願い聞いてもらえるんでしょ?カルミア様の正式な婚約者になりたいですってお願いしたんじゃ無いの?」


「……………へっ??????」


 え、うそ。ちょっと…………待って。


 あ、え。もしや。私………やらかしたっ!?

 この感じは…。嘘でしょ!?

 もしかして、私が正式なカルミア様の婚約者となるには絶好のタイミングだったの!?


 そうよ。たしかにそうだ。だって、私がカルミア様のお隣に座るチャンスとすれば今のタイミングしかなかった。嘘でしょ。私、一体何の為に頑張ってきたのよ。


 というか、思わないじゃない!そんなことをお願いできるなんて!そんな禁じ手が有りだなんて思わないじゃない!そんな単純な方法で婚約者の座がいただけるなんて思わないよ!私があの場でお願いして良いことだったの!?


「ま……まさか、セレナ。全然違うことをお願いしたの……?」


 アイリーンの言葉にギギギと首を向け、思わず飛びつく。


「……ど…どうしよう〜〜〜。アイリーン。」


「ええぇ〜〜〜!!!」


 最悪だ。何のためにここまで頑張ってきたのか。私は思わずジワリと涙がこみ上げる。こんな所でヘマするなんて。お願いして良いものだなんて知らなかったのよ。もしかして、カルミア様の様子がおかしかったのって……このこと?


 私以外のみんなそうなるものだと思ってた?気づいていないの私だけだった!?


 そんな私の様子を他所に、アイリーンはうーんと顎に指を添えて何かを考えていた。


「まぁ、でも、ちょうど良かったかもね。ある意味。」


「へ?」


 縋り付くようにアイリーンにくっつく私にアイリーンはポツリと言葉を落とす。丁度いい?


 なにが?これ以上ないチャンスを逃したのに?


 しかし、アイリーンに言葉の続きを聞く前に、扉がバタンと開く。


「きゃ!」


 いきなりで思わず声を上げると、そこにはニコニコのお父様が立っていた。いつものようにムカつくぐらい綺麗な顔立ちで。


「ちょっと、お父様。年頃の娘の部屋はノックしてから入ってください!」


 私が怒鳴ると、私の泣き顔を見て心底面白そうに笑う。


「セレナ。久々にやらかしたんじゃないか?まぁ、僕としては、お嫁に行くのが伸びて少し嬉しいけどね。」


「余計なお世話です!!」


 お父様とは、あのお母様の一件以来会っていなかった。というのも、何故かあの後すぐに出かけてしまって、お母様と仲直りしたのかも聴けないままだったからだ。


 正直、触れたくないというのもある。私にとって両親同士の関係や、親子の関係はデリケートな問題というか、個人的に後回しにしてきたものだからだ。


 端的に言うと怖いのよね。お父様やお母様からの愛情なんてものは諦めているけれど、淡い期待や希望というものは捨てられないものだ。

 お父様に関しては、関わる機会も増えていたから、それこそ慣れてはきたけど、お母様に関しては本当に数年ぶりで、あの日は衝撃的すぎたのだ。


 これで期待して、裏切られたら、きっとかなり落ち込むから触れていなかったけど…………


 仲直りしたかだけは気になるのよね!!


「お父様、そういえばお母様とは仲直りされたのですか?」


 私が恐る恐る聞くと、お父様は満面の笑みで返す。なによ、その笑顔。逆に怖いんですけど。


「きっとこれから出来ると思うんだ。」


「…………は??」


 何言ってんのこの人。もしかして、お母様をあのまま置いてきたんじゃないでしょうね?あの、シクシク泣いていたお母様を置いて、貴方一体何がしたいのよ!


 きっとこれから仲直りできるって、何寝ぼけたことを!


「お父様!!あなたねぇ!!」


「ついでにセレナにもプレゼントだ!」


 私の怒りの言葉を遮り、お父様はゆっくり私にあるものを渡す。私はそれをみた時、それがなんなのか一瞬わからなかった。


 恐る恐るお父様の手の中の物を受け取る。


「……え。これ…は。」


 キラキラと光る黄金の鍵。こんな綺麗な鍵見たことない。


 ついで?それって、お母様にもこれを渡しているということ?一体何の鍵?


 そもそもこれで仲直りが何で出来ると思ってるの?


「これはどこの?何の鍵ですか?」


 私が困惑をそのまま素直に尋ねると、お父様は性格の悪そうな笑みで笑った。


()()の、君の部屋の鍵だよ。」


「ハァァァァァ!?」


 私は、人生で一番と言っていいほどの大声で叫んだ。


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