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優しい選択【カルミアside】

セザール国第一王子カルミア視点です。

 俺は今までになく、道を急いでいた。シュパールと同盟を交わし、バンを含め何隊かを救護にまわし他の兵士達は森林国境を進む。ハクの話だと、アーサーとかいう王子は、この争いを止めにきたと言っていたことから、確かに乱暴はしていないだろうと推測できる。しかし、そうだとしても、この危険な森林国境で、セレナを護衛もない場所におくなど、考えただけでも震える。


「ドミ……砦まであとどれくらいだ。」


 ドミニク。俺の専属の護衛騎士で、ここまでずっとついてきていた。懐中時計で時刻を確認する。


「そう…ですね。もう少しだと思います。かなり森を抜けましたし…あ!ほら!」


 ドミニクが指を刺す方角にレンガの壁が少しずつ見えてくる。よし。あと少しだ。そこにいるとは限らないが、アーサーがいる場所はあの砦だとなんとなく感じる。もし、俺と友好的な取引をしたいと考えているのであれば、あそこに……


 !!!!


 俺は、思わず足を止める。それは、後ろのドミニクも大勢の兵士も同じであった。皆揃って同じものを凝視し、そこから動けない。


 真っ青なペンキで汚される我が国の紋章。何という侮辱。思わず手に力が入る。明らかに森林国境の砦は落ちており、さらに耐えがたい侮辱的な侵攻を受けたのが見て取れる。


「くそっ。あいつら!俺らをなんだと!」


 後ろで一人の兵士が思わず叫ぶ。その声を筆頭に、憎しみと屈辱は伝染していく。


 やってくれたな、リーブルス教会。こんな事をしたら、セザール国がどんなふうに感じるか、お前らだってわかるだろう。それをこんな風に汚すとは……


 嫌な理由で上がる指揮を背中で感じる。

 これは…復讐、憎しみ、屈辱であり、戦いの理由としてはかなり強い動機となる。


 しかし。


「皆聞け!!」


 俺が叫ぶと、叫んでいた騎士たちが一斉に口を噤む。シンとした空気の中、俺は続ける。


「この先、我々は森林国境砦を奪い返しにあの場所へ進軍する!」


 うおー!と、地響きの様な唸りが耳を裂く。

 が、手をかざすとピタリと止まる。


「しかし、我々は一切の殺戮を行わない!!それを肝に銘じて欲しい!!」


 先程とは打って変わり、動揺の波が騎士を襲う。


「し、しかし、殿下。あの様に我々が侮辱されているのに…それはっ!」


「我々は、アイツらとは違う!!」


 再び静寂が訪れる。


「皆の気持ちも重々承知している!なぜならば、私も同じく、悔しいと、許せないと、心の底から感じているからだ!!」


「しかし、奪われたものをそのまま同じように奪えば、憎しみの連鎖は続くだけだ!!」


 俺は静かにラグーン国を指差す。


「我々はこの先、永遠にラグーン国が滅びるまで戦いを続ける訳にはいかない。そうすれば、ラグーン国の死者はもちろん、我らにも多大なる被害が出る。おそらく、奴らの狙いはその戦争にある!」


「ならば!目先の憎しみに囚われ、奴らの狙いどうりに動くわけには行かない!」


 俺は、思い出したんだ。


 私はこの国の王子でこの背中には守るべき民が何百人も、何千人も、何万人もいるのだ。


 だから、


「私が必ず、ラグーン国との平和的解決を持ってくる。だから皆はそれまで一切の殺戮をせずに待っていてくれ。こんな下らないことで、もう誰も…死んで欲しくないのだ!」


 ―――――――――――――――――――


 俺は、進軍する軍を静かに見つめる。数は圧倒的に有利で、殺さない様捉えることはおそらく訳もないだろう。


 しかし…


「俺は、甘すぎるのだろうか……」


 俺が思わず呟くと、ドミニクは後ろで静かに笑った。


「確かに貴方は、現王のシャルス様とは全く似ていませんね。」


 思わずふっと笑ってしまう。

 まぁ、そうだろうな。現王ならば、こんなもの即皆殺しにしただろうし、そのままラグーン国に宣戦布告し、国を一つ滅ぼそうとしていたかもしれない。ラグーン国が戦争を望んでいる事が見えすいたていたとしても、あの人は確実に乗ってくる。力はより大きな力でねじ伏せる。そういう人なのだ。


 ただ、ラグーン国に関しては本当に土地が面倒な場所にあることで、容易に責められない理由もあるから、なんとも言えない。しかし、殺さないと言う選択は現王には存在しないだろう。それほどまでに酷い侵略の仕方なのだ。


 そうだとしても、俺は…


「でも、私は、とても好きですよ。」 


 思わず振り返り、ドミニクの顔を見る。


 ドミニクは困ったように笑って、俺を見つめる。


「この判断がどんな影響を及ぼすにしろ、貴方のような心優しい王子が作る国を見てみたいと、そうも思うのです。」


 意地悪そうなその笑みに俺は拍子抜けしてしまう。

 でも、そうか。そうだな。

 俺は、俺でいいのか。


「ドミ。お前は本当に俺の機嫌を取るのが上手いな。」


「まぁ、機嫌を取るのはキングサリ様で慣れていますから。」


 ぶっと思わず吹き出してしまう。


「ったく。たいした男だよ。お前は。」


 俺はそんな軽口を叩きながら、ひたすらに森林国境を回る。


「っというか、全然アーサー王子が見当たらないのだが、当てが外れたか?」


 早く王子と交渉しなければ。焦る足をさらに焦らせて、アーサー王子を探す。今の進軍する軍に早く平定を知らせたい。怪我人をこれ以上増やしたくないのだ。


 するとふと、白い外套が洞穴の様な場所に隠れるのを見つける。


「あんな外套、王子以外ありえん。」


 すぐさま数人の騎士、ドミニクを連れてその影を追う。


 すると、そこで信じられない光景を目にする。


 セ……セレナ…?


 セレナはアーサーを真っ直ぐ見つめ、アーサーはあろうことか、セレナの手に己の手を重ねている。


 カッと頭に血が上るのがわかる。


『目的を取り違えないでくださいね。』


 バンの言葉が呪いの様に頭に響く。

 わかっている。わかっているが、思わず剣に手がかかる。震える手が止まらない。


「セザール国の王妃になるよりも、ラグーン国の王妃になる方が簡単だぞ。なぜなら今私が認めたからだ。今帰ればすぐに判を押せる。」


 はっ………?


 一体何を…。ラグーン国の……王妃…だと?


 俺は頭で色々考えている事が全て抜け、スラリと剣を抜いていた。後ろで必死で止めるドミの声が聞こえるが、それが全く気にならない。


 カツカツと足を進める。いやだ。これだけは絶対に絶対に。絶対に譲れない。




『あの!私は王妃になりたいんじゃなくて、カルミア様のお嫁さんになりたいから王妃になるんです!』




 カラン。と、手から滑り落ちる剣。ドミニクが吹き出す声と動揺が走る騎士の声が遠くで聞こえる。


 セレナは頬と右肩から血を流し、泥だらけの傷だらけで、普段着ない様な服を身に纏っていた。


 しばらくアーサーを睨む様に口を膨らませていたが、静かなこの空気になにがあったのかと周囲を見渡し、俺を…見つける。


 みるみる赤くなる顔と、何故ここに…?という表情。


 ばかめ。それは、本来こっちのセリフだ。


 思わず何もかも頭から消え去り、セレナへ駆け寄る。


 グッと抱きしめると、自分の身体が震えていた事に気づく。小柄な身体を、存在しているか確かめる様に、優しく、しかしキツく抱きしめる。


「かっかるみあ様っ?うそ!なぜ!なぜここに…」


 離れたくない。身体を離したくない。

 セレナはすぐにどこかへ行ってしまうから。

 離せばきっと遠くへ消えてしまう。

 そんな気がして、さらにグッと力を強める。


「やっと…会えた。」


 俺がようやく出た言葉を絞り出す様に告げると、少し困惑した赤い顔を、キュッと結び、覚悟を決めたように、ゆっくり俺の背中に手を回した。


やっと会えたね。



活動報告更新しました笑

凄いくだらない話をしてますが、一応お時間が有れば読んでいってくださいませ笑


皆様のブックマーク評価感想とてもとても嬉しく思っております。いつもありがとうございます。

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