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何者?

私とカイトはセルテカで一晩を過ごし、いよいよ森林国境へ向けて出発していた。森の中では道が舗装されておらずここからは徒歩になる。正直歩くのはなんとでもなる。坂も下りも足さえあれば頑張れる。ただ、森の中の虫や、眠っている時の心細さや、夜の闇は、私の精神を不安定にさせた。


ただ、こんな環境下でカイトはこんなに長時間歩いても汗一つかいていなかった。余裕な顔で今日もズンズン森を進む。


「セレナ〜。おんぶしようか?」


いつもと変わらない、変わらなさすぎる笑顔、この顔に何回救われた事だろうが。少し前までは、ムカついて仕方がなかったと言うのに、本当に頼りになる。森林国境までは、かなり時間がかかる。おそらく、3〜5日。カイトなら3日だろうが、私と言う足手纏いがいることによってきっと5日もしくはもっとかかるだろう。


私は汗や泥にまみれながらも、必死で前へ進んだ。この世界に生まれて、ここまで汚くなったのは初めてかもしれない。流れる川で体を洗い、弓で仕留めた鹿などで簡単に調理し、食事をいただく。わかってはいたが辛く苦しい。森を抜けながら歩いていると、この世界で生きているのだと再び実感した。


「セレナは、なんでこんなに頑張るの?」


2日目の黄昏時、もう今日進むのは辞めようかと声をかけようとしたところ、いきなりそう聞かれた。


「カルミア様が好きだからかな。」 


私は迷わずそう答えた。

するとカイトは面白そうに笑って、「やっぱ似てんなぁ。」と呟く。似てる?誰と誰が?


「あっ。あと、この国が好きって言うのもある。かな。」


私は慌てて付け加える。まず先にこっちだったか。

カイトは私の焦りを感じ取ったのか、また面白そうに笑った。


「知ってる知ってる。好きすぎてキングサリ殿下に説教しちゃうくらいには国が大事な事知ってるよ。」


『っぶ………』


私たちは思わず笑い合う。懐かしいなぁ。まぁ、あの時は国が大事なのもあるが、何よりカルミア様を悪く言っていたのが許せなかっただけなのだけれど。今でも、カルミア様とキングサリが仲良くなれると良いなぁと心の底から思っている。たった一人の兄弟だ。憎み合っていがみ合っているのでは悲しい。


そして、ふと、喉に突っ掛かった魚の骨のように、カイトの発言に違和感を覚える。


「貴方……なんで…その事を()()()()の?」


私はあの時実はかなり神経質に箝口令を敷いていた。なぜならキングサリは国の王族。こんな所にいることがバレては危険に晒されるやもしれない。さらにはキングサリはバカときている。拐われた時に危害を加えられないよう犯人を刺激しない様にするなどの工夫ができるとも思えない。だから、人数は最小限に留め、あの出来事を知るのは、あの日あった商店街の人々と、私達だけだ。彼らも王族信仰は厚いからそうそう漏らしたりはしないはず。

まぁ、そんな努力をしてたのに、今では、勝手にあの王子様はふらふらと商店街を、出かけてしまうのだが。もうおバカでは無いし自分の身も守れるだろうからいいけどね。


「あぁ。バレちゃったぁ?」


急にカイトの顔がニヤリと歪む。今まで見ていた可愛い顔はそこにはなかった。不適な笑みを浮かべて、心底面白そうに腹を抱えて笑う。


「バレる?わざとバラしたようなモノでは?」


私は思わず警戒を強める。無意識に手の震えを感じる。私は明らかに後ろに後ずさり、もう兄妹という設定も忘れていた。コイツ!やっぱりやばい。


するとカイトは両手を挙げて敵意の無い事を表すように少し離れる。


「大丈夫だよ。相当、姫さんは気持ち悪いだろうけど、俺は敵ではない。」


いつも通りの笑顔に少し安心するが、敵では無いと言う言い回しに若干の不安を覚える。


「では、味方でもないと?」


私が恐る恐るそう聞くと、寂しそうに笑った。


「そう……だね。まぁ、でも、俺個人としては姫さんが結構気に入ってるから、危害は絶対加えない事を誓うよ。」


私は思わずホッとして、ヘナヘナと地面に座り込んでしまう。


「そっ。それならば、びっくりする事しないでください。急にそんな事されたら、この危険な森の中、一人ぼっちになるかと思ったでは無いですか!?」


キッと睨んでしまう。本当にこの森は危険なのだ。もちろん森の野生生物が危険ということもあるが、それだけでは()()()()で。信用していいかは、もうこの前決めた事。だから、その決意が揺らぐようなことはしないで欲しい。私は既に貴方に背中を預けているのだから。


カイトはなぜか口元を手で覆い顔を背ける。ゴニョゴニョ言っているが声がここまで聞こえない。


「なんですか!?」


私がムキになって聞き返すと、あははっと面白そうに笑った。


「いや、たしかにここでそう言う行動をしたのは不味かったけど、一応姫さんにわかってもらいたかっただけなんだ。」


「何をでしょう?」


私が素直に聞き返す。


「俺を信用しすぎるなって事だよ。」


何故かその表情から目が離せなくて、どうしたらいいのか分からなかった。だって、カイトの闇に触れそうで、手を出すことができなかった。


「で…でも。それはもう遅いです。あの時、二人でここまで来ると決めた時、信用すると決めてしまったので。どんなに怪しかろうが、私は貴方を信用するしか無いんです。私の背中は貴方に守ってもらわないと……。」


私がおずおずとそう言う。これは勝手な私の決意であって、全く持ってカイトには関係のない事なのだが、決めてしまった以上は仕方がない。私はもう彼を信じると決めて、そして更に、そんなにカイトが嫌いでは無いのだから。カイトの心の優しさはこの旅で充分にわかった。


私はゆっくり顔を挙げると、何故か目をまん丸にしたカイトが立っていた。


「どうしました?」


私がそう問いかけると「いや」と言ってまた顔を背けてしまった。なんなんだ。本当に。


というか、


「あの、ところで結局なぜ私とキングサリ様のお出掛けの件をご存知で?もしかして、噂になっていたりするのですか!?」


もう二年前の事だけど、噂になっていたのなら大惨事だ。やっぱり手紙が来なくなったのもあの時期だし、カルミア様のお耳にその噂が届いて、失望して辞められたのだろうか。


私が不安な表情で、それを聞くと、カイトはいとも簡単に否定した。


「いいや。全然噂になってないよ。姫さん、ちゃんと口を留めてたでしょ?一応若干の変装もさせてたし、行った店の店主と、子供産んだ母ちゃんくらいしか知らないと思うよ。今じゃ、自分で勝手に商店街行ってるし、全然平気。」


よ、よかった。とほっとする。が、同時に。


「貴方一体どこまで知っているのです?」


私が入った店の事や、アイシュのことまで把握してるなんてやっぱりおかしい。その場で見ていたとしか考えられない。


「それはね、秘密!」


可愛らしい笑顔でごまかされる。くそう。これは、何がなんでも教える気が無いとわかる。拷問されても吐かないな。


私が思わずため息をつくと、さっきまで綺麗な夕日を見せていた空がいつの間にか暗闇の世界への変わっているのに気づく。夜は絶対に先へは進めないし、危険が多く潜む。

やば!火を起こさないと。


「カイト。そろそろ火を起こしましょう。今日はここらで……」


『姫さん!!!!!!!』


急にカイトの声が響き渡る。私はとっさに弓を取り、構える。とんっと背中に気配がして、カイトだとわかる。カイトと背中合わせにして周囲に警戒を図る。くそ。火を起こしておくんだった。


通常、護衛騎士と背中合わせになることなどない。守る対象を背中に隠し戦うのが一般的だからだ。しかし私達は知らず知らずに背中合わせになっていた。それはつまり、全方向に敵がいると言うこと。しっかりと武を鍛えた訳では無い私でもわかる。数十人は、いる。これは…すでに見つかっていたのかっ。


『申し訳ないけど…目をつぶってもらえる?』


カイトの囁き声が聞こえる。

つまり私に見せたく無い事を行うのか。暗闇の中であまり見えないと言うのに意外と紳士的だ。これはカイトでも手加減すると私を守りきれないという事。そう、殺さなければ。


私はフーッと息を吐いた。


「ここの長はいますか!?」


私は大きく声を張り上げた。背中のカイトが動揺しているのがわかる。


『おい!!!言葉が通じる相手じゃ無いよ!!ここは森林国境の近くなんだ!姫さんならわかってるでしょ!』


囁きながらも強く非難するカイトの声。


わかってる、わかってるよ。

森林国境が危険と言われる理由は彼らなのだから。


すると奥からボアっと光の玉が近づくのがわかった。それは、松明の光。


光に照らされてその顔が不気味に照らされる。マスクをかぶった上半身裸の男。変な紋様が体に刻まれている。


「貴方達の森に勝手に入ってすみません。どうか、お話を聞いて頂けないでしょうか。」


私は震える体を無視した。無視して、まっすぐその仮面の男を見つめた。

新キャラ出しすぎで云々話した後にすぐに新キャラを出すのはそう、私です。


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