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舞踏会へ行こう①

私は舞踏会の会場である王宮へ向かうべく、馬車を走らせていた。ガタガタ揺れる馬車の中で、最近聞いた二つの噂について考えを巡らせていた。


『ここだけの話、近いうちに婚約者を1人にするって噂が飛び交ってるぞ。』


そして、商店街で聞いたある噂。


『ラグーン国のヤツが病をワザとばら撒いているらしい。』


私は舞踏会の招待状を貰った日に仕事で商店街に赴いていた。その時に耳に入った噂。正直噂は噂で、本当かどうかなんて確証はない。しかし、内容がこれではラグーン国との外交問題に発展しかねない。それに、もしこの噂をアイシュが聞いたら……。彼女の旦那さんはラグーン国との国境警備の際に病で亡くなっている。本当ではないと仮定してもこの噂の出所は気になる。


そして私が考えていたのは、この二つの噂は一つにまとまるのではないか?という事。もし、本当にラグーン国との間に外交的トラブル、すなわち、仲が悪くなった場合、差し出されるのはカルミア様の婚約。ラグーン国にとっても、セザール国は多くの貿易を行っており、関係を悪くするのは痛い筈。当分はどんなおバカな王様でもそこまで関係が悪くなることは無いと思っていたが、この病の噂が広まっているのならば、それも無いことはない。


つまり、婚約者を四人から一人に絞るのではなく、ラグーン国の姫、モクレン様になるのではないか?と言うこと。以前のお父様の言う通りになるということだ。だとしたら、国際問題に手が出せるほど私の存在は大きくなく、何もできない。二人の婚約が決定した段階で私の出る幕はない。


そういえば、ここ最近お父様帰ってきてないよね。ラグーン国との外交問題で忙しいから?カルミア様のお手紙が返ってきてないのもそれが原因?


だめだ。悪い方向にしか考えられなくなっていく。せっかくの舞踏会だと言うのに、気がどんどん重くなっていく。


私は馬車の中で大きくため息をつく。いやな話題を無視して無理矢理頭の中の話題を切り替える。ダメダメ。こんなこと考えてちゃ!


カルミア様いらっしゃるかな。五年ぶり……私のこと覚えているだろうか。


私は、カルミア様の事を思い出す。あの植物園でお話したっきり。全然お会いできていないと言うのに、私の心はいつでもカルミア様の事でいっぱいだった。昔どこかで読んだ、恋愛小説かなんかで言ってた言葉を思い出す。『恋は会わない時間に育むものなのよ?』本当に、こればっかりはそうだなと思う。


もう一度大きく溜息をつくともう王宮の目の前に付いていた。いつの間に!馬車は王宮の門の前でゆっくり止まった。


馬車の扉が開き、私は、いつも通りロイに手を借りる。馬車の扉をくぐり、王宮のレンガに足をつける。


しかし、私は、馬車の影に、信じられない人を見る。夢に見た、ずっと夢に見ていた愛しい顔。


えっ。うそ。なんで。えっ!まって!!!


カルミア様は私を見て、何故かボーッと立ち尽くしている。


「うそ………」


私が思わず言葉が漏れる。カルミア様は私の言葉に反応して、今度は私に優しく微笑む。


「ロイ殿、ここからは私がエスコートしよう。」


ロイがスッと身を引く。五年ぶりの再会。何度夢に見たことだろうか。やはり変わらず美しく綺麗な顔。かっっっこいい。


「カルミア様……なぜ…」


私が思わず呟くと、申し訳なさそうな顔をして笑った。


「ずっと手紙の返事を出せず、すまなかった。()()()()は私にエスコートさせて貰えないか?」


今日だけ?


私は不穏な言葉尻に、嫌な予感を覚えながら、おずおずとカルミア様の手を取った。カルミア様は見ないうちに背が高くなり声も少し低くなった気がする。もうほとんどオープニングの登場の時と変わらないそんな尊さ。


私が思わずポーッと顔を見ていると、カルミア様は、頬をポリポリとかいた。むり。可愛い。どうしよう。


「私の顔に、何かついているか?」


はっ。見つめ過ぎた。


「あっ、いえ。お久しぶりでしたのでつい。」


カァッと、顔に熱が集まるのがわかる。私、この人の前にいると自分が自分でわからなくなる。心臓の音がやけにうるさい。手汗大丈夫かな。今日のドレスやメイク平気かな。


「そうだな。本当に久しぶりだ。セレナは……見ないうちに、その、とても綺麗になった。」


びっくりして、思わずカルミア様の顔を見る。カルミア様は私と目が合うと、すぐに目を逸らしてしまった。でも、耳まで顔が赤く染まっていた。


うそ。ほんとに?私、大丈夫?こんなに幸せで大丈夫?顔に熱が、目に涙が溜まり、ギリギリ、堪える。


カルミア様の隣にいると私はどうも上手く自分をコントロールできない。


歩き方さえ忘れてしまったのかと思うほどフワフワして落ち着かなかった。必死にカルミア様について行き、王宮の会場に着く。扉を開ける時カルミア様は私に囁いた。


「私のわがままで注目を浴びるかもしれない。寂しい思いをさせてしまうかもしれない。ただ、今日だけ、今日だけは私に付き合ってくれないだろうか。」


私はわからないながら必死にうなずいた。嫌なわけがない。そんなお願い嫌なわけ無いじゃないか。


不吉な言葉に耳を塞いで。


ギギーっと目の前の扉が開く。眩しいシャンデリアの光が私を照らし、私はカルミア様と赤いカーペットに一歩踏み出した。


今日は二本ギリギリ間に合いました!


沢山のブックマーク&評価ありがとうございます!

日々の励みになります……泣

とっても嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
[一言] カルミアが何か抱え込んでるのだけは分かる…… 一筋縄じゃいかない雰囲気ですね。
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