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招待状

時が飛びます。

新章の前に寄り道します。

でも、とっても重要なので数話お付き合いください。

あのキングサリ様の突然の訪問から、約二年が経ち、彼はよく私の屋敷に来る様になった。はじめはいきなりくる物だから、最初と全く同じ説教をした物だが、最近はしっかりアポを取ってくることを覚え、まぁ、なんとか、関係は良好である。


って!!良好じゃダメなんだって!私は彼とのフラグを折らなければならないし、更に、カルミア様に誤解される訳にもいかない。


私は、来る回数を減らせ!と要求するが、気まぐれな王子がそんな頼みを聞いてくれるはずもなく、割と頻繁なスパンで私の屋敷に来ていた。しかし、私の事が好きとか、そう言う感じでもない私への態度。なんなのよ、もー。むかつく!あの日『君を奪う』とかなんとか言っていたこともやっぱり気まぐれだったのだと、勝手に結論付けて、私は考えることをやめた。


そして、それも悩みではあるが、何より一大事なのが、あのキングサリとのお出かけ以降、パッタリとカルミア様のお手紙が止まってしまったのだ。正直、どのくらいの頻度で出そうとか決めていたわけでもないし、お互い自分の面白かった出来事などを日記の様に送るという色気もクソもないお手紙の内容だったから、忙しくなったら無くなってしまうこともあるのかもしれないとは思っていた。しかし、三年間!三年間も続けたお手紙のやり取りがこうもパッタリと、あっさりと終わりを告げることが、私は寂しくて、とても辛かった。


正直、キングサリが絡んでいるのだと見て問い詰めたが、キングサリはそんな事をする筈がないと逆に私を責める始末。あの植物園での一件以来お会いしてもいないし、そんな、嫌われる様な原因もないと思うのだけれど、唯一のつながりだったものも消えてしまい、どうすれば良いのか分からず、困惑している、という次第である。こんなにも会えないなんて……。


本当にコイツは関わって無いわけ!?


キングサリは、私の前で、商店街で買ってきたらしい肉まんの様なものをムシャムシャ目の前で食べていた。


「なぜ、王宮で食べないのですか?私の屋敷に来て食べる意味は?」


私はコイツが来ることによって、カルミア様へ誤解を与えているのではないか、と言うことがとても気がかりだった。婚約者としてコイツを拒みたいが、王族であるコイツを実際拒むわけにもいかないわけで。本当に悩ましい限りである。


「そんなの、特にないが。何か問題があるのか?」


あるわ!!問題ありありだわ!!


キングサリは、あれからかなり心を入れ替えた様に思う。正直まだ横柄な態度は尺に触るが、王族だし、このくらいは普通だ。今では一切付けなかった家庭教師を母親を押し切り無理矢理つけて、どうやら武術や剣術も習っているらしい。やはり、良い血を受け継いでいるだけあって、飲み込みが早く、先生を驚かせているのだとか。こいつの噂は私の所を超えて様々な場所まで広がっており、バカ王子が急に改心して優秀になっているらしいと、注目を集めている。


わかってんのか?本当に。この男は。


相変わらず肉まんをむしゃむしゃ食べる様子に気が抜ける。商店街の人たちとも仲良くやってるそうで、本当成長したものだ。


「ねぇ、キングサリ様。本当にカルミア様に誤解されていませんか?私、たーぶーん、貴方が頻繁に来られるので、お手紙の返事が来ないのですが。」


私はもう、ぶっちゃけて聞いてみた。


「アイツの事は知らん。別に俺がここに来てるからってお前は婚約者だろ?」


回答になってない。婚約者なのにアンタが来てることが問題なのよ!?それに、それに!


「婚約者四人もいますから!私だけじゃないですからー!」


私が思わず叫ぶと、キングサリは思い出した!と言わんばかりに、私の耳に顔を近づけた。


「ここだけの話、近いうちに婚約者を()()にするって噂が飛び交ってるぞ。お前のところには届いていないか?」


私は思わず立ち上がり頭を抱えた。


「聞いてない。聞いてないよ……。じゃあ、やっぱり手紙を切られたのって、婚約者の立場を切られたんじゃ。」


「まあ…落ち込むなって。あれだ。その。もしいざとなったら、俺がちゃんともらって……」


「あーーーー!!!!」


なぜかニマニマしているキングサリの後ろに、信じられないものを見た、あれはっ。あの美しい、あの青い羽は!


「キシュワール!」


大きな羽を青い空に広げて窓から華麗に入ってくる。待ってたよ!待ってた!この時を待ってたの!


「本当に貴方って綺麗!大好き!」


思わず優しく抱きしめる。そして急いで革のポシェットから手紙を取り出した。なに!?なんなの!?約二年ぶりのお手紙に涙が出そうになる。手紙も二年ぶりだし、私、五年くらいカルミア様にあっていない。普通こんなヒロインいるの?もっとイベントを作って欲しいと思ったが、そうだった。カルミア様は悪役だった。


手紙の封を切ると、それはカルミア様の筆跡ではなかった。え……。うそ。カルミア様じゃない?中身を読むと、内容は舞踏会への案内。


「舞踏会……」


私がぶつぶつ手紙を読んでいると、肉饅を食べ終えたキングサリが私の招待状をヒョイっと奪い中身を勝手に読み始める。コイツは……無礼はちっとも変わっていない。


「これ、俺も参加するぞ。あー…多分……兄上も。」


「うそ!本当ですか!?」


私、もしかしたら、これが最後のチャンスかもしれない。なかなか会えないカルミア様と会える機会。多分ここで会わなきゃ、オープニングである二年後までは会えなさそう、このままいくと、オープニングの時点で違う人のフラグが立ってしまうことになる。そして今の状況からして、キングサリが一番可能性が高い!


それに、まずそもそも、ストーリーから逸れている私が婚約者を一人に絞るという話に生き残っているのかも甚だ疑問だ。


じゃあ、やっぱりこの舞踏会、何がなんでもカルミア様に合わないと。


これは戦争よ………。女の戦い。私が今までカルミア様への愛でどれだけ努力してきていると言うの!?


「え?あ、ちょ、おい!」


私はキングサリがいる事をすっかり忘れ、アイリーンと勝負ドレスを選ぶべく、部屋を後にするのであった。

キングサリ……

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