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護衛騎士

食事を終え、誕生日会の会場へ向かおうと、席を立つ。ふぅ。これからが勝負だ。ゲームが始まる前だからこの会の細かい流れはわからないけれど、たしか、ここで第一王子とお話をしてその時に私は第一王子に心無い事を言われて、それで苦手になってしまう。って言うあらすじだった気がする。うーん。でも、どんな事を言われたんだろう?そんなこと言いそうにないと、、私は思うのだけれど。これは、私の偏見なのか?私の推しへの愛が作り出す愚像なのかな!?


「セレナ。」


ビクッと、肩を震わす。考え事してたからびっくりした。えっと、、


「はい。お父様。なんでしょう。」


くるりと振り返ってお父様を見ると、横には背の高い男性が立っていた。栗色の短い髪、鋭い目つき、そして、この服は隊服!!お、思い出したこの方は……


「お前に誕生日プレゼントだ。今日からお前は王子の婚約者で、危険がないとも限らないからな。護衛としてこれから連れてくように。優秀だぞ。こいつは。」


この、このタイミングなのね!?


「お初にお目にかかります。姫様。私、ロイ・ウェンデルと申します。今日から私はあなたの騎士でございます。なんでもお申し付けくださいませ。」


バサっと長い外套を避け床に跪き、私の手にキスをした。なんだろう。すごい絵になるな。でも、間違いない。このイケメン、このオーラ。まさしくゲームの攻略対象!ロイ・ウェンデル!!このキャラクターは真面目真面目の堅物でセレナを大切に守ってくれる人気キャラクター。でも、真面目であるが故に好感度が上がってもなかなか主従関係から一歩踏み出せない切ないストーリーも多かった。主に恋をしてしまった身分違いな切ない思いにみんなメロメロで、当時私も揺らぎそうになった事もあったことにはあった。でも、なんだろう。本当にこの人ゲームのキャラクター?なんだか、真面目に見えないんだけど。


「お父様、ありがとうございます。えーと、ロイ様。これからよろしくお願いします。」


にこりと微笑んでロイを見ると、


「ロイ、でよろしいですよ。姫。」


グアっ。やっぱりイケメンは強すぎる。目に毒だ。やっぱり気のせいかな?少し違う気がするのも、ゲームのスチル絵と動く現実じゃ違うもんね。


「じゃあ、ロイ。私のこともセレナでいいですよ。姫なんてなんだか恥ずかしいし。」


「かしこまりました。セレナ様。」


「では、いきましょう。会場へ。お父様、お母様、行ってまいります。」


「ああ、いってらっしゃい。」


お父様は楽しそうに手を振り、お母様は笑顔で私を見つめていた。


ふう。お食事はとりあえず終わった。二人とも優しく見えてなんっか、冷たい雰囲気は抜けないんだよなぁ。いつ何時であっても気がおけない感じ。家族って言えるのか。これは。それに、誕生日プレゼントに護衛って。もっと他にあっただろーに。別に欲しいものも特にないけど、でも、よりによって攻略対象をプレゼントで送ってくるなんて。


攻略対象のことは正直ぼんやりとしか覚えていない。でも、今あった瞬間に雷に打たれたように記憶に流れ込んできた。会うと思い出すってシステムなのだろうか。ゲームでのロイは、真面目だけど、なんだか今隣にいるロイは真面目に見えてなんだか違う一面がありそうな気がしなくもないんだよなぁ。なんだろう。気のせいなのかもしれないけれど、一応気をつけないと。万が一、なにかのはずみで攻略してしまって、結婚式場で連れ出されたらたまったものじゃない。主従関係は適切な距離が大切!


「セレナ様はとても美人になりそうですよね。」


「……は?」

突然、なに????


「いや、だから、美人になりそうだなって。」


はぁぁぁぁ?????予想外の攻め攻めに私は恐れ慄く。

こいつ本当にロイ・ウェンデルか!?真面目は?堅物は?どこにいったの??


「えーと…ありがとう?ございます?で良いのかしら。」


「はい。いいと思いますよ。美人になりそうで、さらに、中身もかなり大人に見える。」


ニコっと白い歯を見せて笑った。最後に年齢の割にってカッコ書きがつきそうな嫌味に聞こえる。


こわい!前世の記憶があるってバレることはないだろうけど、怖すぎる。なんなの?初対面なのに、なんだか心を見透かされている気分。


私は目に見えて顔を青くしてしまう。なに、なにを考えているのこの人は。


「えっ。」

と私の蒼白の顔を見てロイが驚く。


「えっ。」

驚いているのこっちなんだけど。


「いや。あー。あ、すみません。なんか、思った反応と違くて……。おかしいな。」


ちょっと。なにがおかしいんだ。からかったってことか?どーゆーことなんだ。無表情で静かに私は告げた。


「ロイ。からかっているのならばやめてください。私はあなたとお友達なわけでもありません。そして、8歳とはいえ、お父様からあなたを預かった以上、あなたは私の部下で、あなたの主は私です。お分かりですか。」


別に堅苦しい関係が好きなわけではないけれど、揶揄われてるのだとしたらそれはお門違いだ。私はスカルスガルド家の令嬢で貴族。そこにはプライドを持たねばならない。つまり、なめられちゃダメってことだ。

ま、最初だけね、脅かしておかないと…


「大変失礼致しました。」


バッと目の前で跪かれる。あっ、そこまでしなくてもいいんだけど。びっくりした。まだ、18歳だもんね。もしかしたらこの人は出世株だったのかな?ゲームだとかなり優秀なキャラクターだったし。なのにこんな小さな娘を護衛になって嫌だったのかもしれない。まぁ、これは妄想だけれど。


「いいえ、キツく言ってごめんなさい。これから気をつけてくれればいいんです。」


私は顔を上げるように促すと、なんとも悔しそうな顔をしたロイがいた。なにこの子可愛い。ふふっと笑って頭を撫でた。思わず。すると、みるみる顔が赤くなる。あー。これは、あれだ。屈辱的なのね。こんなチビに怒られて。ほうほう。いいでしょう。負けないわよ。なんだって中身は20ごえなのだから。


ごほんっ。と咳払いをして進むと、しばらくその場に蹲っていたロイは早歩きで追いついてきた。ロイとはしっかり話しておいた方がいいかもな。


そうこうしているうちに会場の前の扉に到着する。

私はゆっくりその扉を開ける。

ここから先は戦場だ。私は気合を入れ直すように、スーッと深呼吸して、扉の先へまっすぐ進んだ。




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