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星に誓う【キングサリside】

第二王子キングサリ視点です。

俺が王宮に帰ると、やはり王宮が騒がしく俺を探し回っているようだった。俺を見て騒がしく使用人がバタバタする中で、俺に駆け寄って来る人が一人。


「キングサリ様〜〜〜!!!どこに行ってらしたのですかっ!私は、私は、本当に心配しておりましたっ!」


俺の母上、アリシアであった。俺にしがみつき、大声で泣き叫んでいる。今まで大きく見えた、母上が、何故か今はとても小さく見えた。


「母上、心配かけて申し訳ありませんでした。大丈夫ですので、ご安心を。」


俺が声をかけると嬉しそうに笑い俺に抱きつく。そして顔を耳元まで持っていき、他の使用人に聞かれないよう俺に囁いた。


「実は、あの、憎きカルミアが今来ているのです。キングサリ様を出せと、聞かないのです。私が刺してやろうと思ったのですが、帰ってきてくださって本当によかった。」


カルミアが?何故だ、何のようで。俺が考えを巡らせていると、母上は俺に囁く。


「憎きカルミアをどうかお裁きに。貴方はそれをする為に生まれてきたのですから。」


俺は思わず母上の顔をまじまじと見た。


この方の言葉はこんなにも軽い物だったのか。俺はこの言葉がなぜずっと真実だと、それが間違いでは無いと信じて曲げなかったのか。


『私は貴方の考えをお聞きしたいのです。』


セレナの言葉が頭で響く。俺は。


「やだわぁ!!!頬が赤くなっています!どうしたのですかこれは!!!」


俺の言葉を遮るように俺の顔を両手で包みヒステリーに叫んだ。


「これは……。」


思わず笑みが溢れる。平手打ちされた右頬がジンジンと痛む。本当に大した女だ。この俺に手をあげるとは。


「カーペットにつまずき転んでしまったのです。特に問題ありません。」


俺は、いとも簡単に、母上の手をどけて、王宮の自室へ向かった。


母上はそんな俺を()()()()()()()()()()()()





「久しいな、キングサリ。」


俺が自室の扉を開けると既にそこにカルミアが立っていた。反射的に不快顔になってしまう。セレナの仲良くして欲しいという願いは叶えてやれそうに無い。そもそもコイツから俺はセレナを奪いたいのだ。


正直、それは、そんなに難しく無いことのように思えた。今日の反応からして、セレナは最後俺の事を真っ赤な顔で見つめていたし、そこまでまだ交流はないと言っていた事からも、俺が良き王子となれば、わけないのでは無いか?


それに、コイツには4人の婚約者がいて、その中の一人であればきっとそこまでセレナを気にしてもいないだろう。


「お久しぶりです。兄上。今日は何の御用で?」


挨拶をすると、ひどく驚いたように俺を見つめた。


「お前……今日はやけに大人しいな。いつもは、敬語など使わないし、掴みかかってくるような勢いで、私を責めるだろう?」


確かに。俺は今までの自分の行動を振り返ると、顔を見た瞬間に暴言を吐いたり、無視したり、そんなだったのかもしれない。


「そう…ですね。今でも大変、嫌いではありますが、そう言う事はもうやめようと思いまして。」


セレナの言う良き王子は、そんな事はきっとしないから。


ポカンと間抜けな顔のカルミアが俺を見つめる。あーーー。不快だ。やっぱりこいつは不快だ。


「ところで、何用でこちらに?」


俺が再び尋ねると、カルミアの空気が変わった。酷く冷たい、そして俺を射抜く鋭い瞳。


「お前が、マクーガルの件に関わっていたと風の噂で聞いた。それは、本当か?」


思わず体が震える。


カルミアはいくら俺が不遜な態度を取ろうとも一切咎めず、むしろ軽く笑い飛ばすようなそんな男であった。それがさらに俺をイラつかせ、不快な気持ちにさせた。今思えば相手にされていなかった。それだけなのだが。


ただ、こんな瞳は今まで見た事がない。なぜコイツはここまで怒っている。なぜこんなにも…………。


「セレナ…か。」


俺は思わず考えがそのまま口に出た。


しかし、やはりそうとしか考えられなかった。さらに激しいカルミアの怒りが俺を鋭く刺す。


「俺をどう思っているのかは知っている。ただ、セレナには手を出すな。」


ビリビリと背中にまで伝わる鋭い殺意とも呼べる俺への感情。今まで何の感情も俺に向けてこなかったというのに、一人の女でこうも変わる物なのか。こんなにも感情をあらわにする人だったのか。


俺は思わず笑いが込み上げた。なんとバカらしい。カルミアは、もっと悪魔のような心をしたそんなやつだと思っていた。だがどうだ、たった一人の女に心を惑わされるただの人間では無いか。


「何がおかしい。」


「いや、今まさにセレナに会ってきたところでしたので。」


ドォォン!と、低く鈍い音が部屋に響く。俺は壁の端に追い詰められ、カルミアの手は壁に伸び俺を逃さない。


やば!怖!


見たことない目つきに煽り過ぎた事を反省する。前言撤回。コイツは悪魔だ。背中を冷や汗が通り過ぎる。


「会って…何をした。」


低い声が俺を逃がさない。


「会って…出かけて、デートをしただけです。」


おれは震える声を隠すように、言った。


「だって四人も婚約者いるんでしょ?一人くらい良いではありませんか。」


カルミアの瞳が大きく揺れる。


「俺は、セレナが好きです。」


カルミアの手を強く握り、突き返す。


俺だって負けていられない。震える手を隠しながら去勢を張る。


そうだ。俺はセレナが好きなんだ。


初めて俺を見つけてくれたんだ。空っぽな俺を見つけて、沢山のことを教えてくれた。力尽くで、俺を闇から引っ張り上げてくれた。


今の俺では確かにアイツには不相応かもしれない。でも、頑張る、努力する。だから、カルミアにも奪われたく無い。


カルミアはゆっくりと手を離した。

そして「そうか。」と一言言って俺の部屋を去ろうと出口へ歩く。


「兄上!貴方もセレナが好きなのでは無いのか!?」


俺が思わず去って行く背中に聞くと、カルミアは振り返り寂しそうに笑った。


「俺は……………わからない。わからないんだ。」


でも俺は、その後ろ姿を、その寂しげな目を、引き留めることは出来なかった。閉まる扉を、呆然と見つめる。


「わかるだろ。お前がここまでわざわざ出向くなんて、そんなの、わかりきってるだろ。」


カルミアの抱える深い闇を、俺は知らない。


でも、それでセレナを悲しませるのなら、俺は、アイツを許さない。


キラキラと光る星空に、俺はセレナを必ず守ると、そう誓った。

久しぶりのカルミア登場ですが色々拗れてて申し訳ないです。


感想&ブックマーク&評価ありがとうございます!

励みになります!これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] この女(アリシア)絶対何かやらかすという負の安心感がある……! カルミア拗らせてるなあ
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