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地獄の朝のお食事

「まぁ!とってもすてきですわぁ!セレナ様!」


淡いピンク色のドレス、金の糸で刺繍が施され背後には大きなリボンがあしらわれている。髪は緩く巻かれ腰上くらいまで伸び、編み込まれている。鏡を覗くと不思議な気分になる。昨日の夜の夢では全く違う人として暮らしていたのに。白い肌、淡いブロンドの髪、青い瞳、そして何より………8歳の幼い身体!こんな貧相なぺたんこな身体じゃ第一王子に振り向いてもらえないよー!


でも、リリスが悪い訳じゃないわね。


「ありがとう。リリス。とっても気に入ったわ。」


リリスはふわっと笑った。リリス・マクベル、彼女はお世話をしてくれている侍女。20歳だから、前世で言うと大学2年くらいかしら。お年頃なはずなのに、私のお世話を一生懸命してくれて、とっても素敵な人。少し、はしゃいじゃうところがたまにキズだけれどね。


そして、私は前世の記憶が蘇る前は、彼女の事を母のように慕っていた。母は、私の事を良くは思っていなかったし、父親も仕事が忙しく親子の交流っていうものはほとんどなかったから。リリスは16歳の時から私についてくれていたからもう4年になる。4歳の時からずっと一緒にいたんだよ?それは母のように感じちゃうよね。そして何より彼女はとても優秀。貴族の、まぁ、いわゆるスカルスガルド家は名家であり今日王族の方と婚姻しちゃうくらいには有名なわけで、そんなの名家の娘の侍女に16歳で抜擢されるのは異例中の異例。頭も良く、仕事もでき、言われた仕事以上のところまで気が使える本当にすごい人。前世の記憶が蘇る前は全然意識してなかったけど、本当に凄い人なんだ。


さ!そんな事を考えているうちに準備が終わって、これから誕生日パーティーって行きたい所だけど…これから朝ごはんを食べなきゃいけないんだよなぁ。ご飯の何がいやって、ご飯は全くいやじゃない。だって美味しいし。でも、お母様とお父様と顔を合わせなきゃいけないのが本当にいやなのだ。うう。お腹痛くなってきた。


お父様、スヴェン・ディ・スカルスガルド、37歳。淡いブロンド、青い瞳、私に似ている。背はとっても高くてスラッとしてる。正直すごくイケメン。年齢よりも10くらい若く見えるのにもかかわらず、仕事はかなり出来るらしい。私はよく知らないけど。とっても優しいけど、いつもヘラヘラとしていて、何を考えているのかがわからないなぁ、というのが私の目に映っているお父様。王族の方と婚姻を結んで来ちゃうんだから出世欲とかはしっかりありそうかな。優しい、優しいけど、私は正直苦手に感じている。


お母様、イレーナ・ディ・スカルスガルド、29歳。お父様とは、8歳差。茶色の綺麗な髪にゆるいカールがかかりとっても素敵で、白い肌に茶色の瞳。ホワッとした印象のあるとてもとても綺麗な人だけれど、自分の気持ちに正直すぎるところがある。お母様は私しか産めなかったこと、つまり女しか産めなかったことに凄い責任を感じていて、私に対しても上手に親子として付き合っていけない部分がある。実際6歳の時に、お母様の部屋に訪室した時には、ボソッと


「お前が男なら………」


って聞こえてびっくりしたものだ。私も貴族に生まれ、なんならかなり高度な教育を義務付けられてきたから、貴族が男を欲する意味もお母様が責任を感じている意味も、なんとなく、なんとなーく6歳にしてわかってはいたけれど。その時は衝撃が強くて、お部屋でシクシク泣いた記憶がある。今となってはそんなことはもう気にはしていないけど、お母様と何も考えずに笑って仲良く過ごせるかと言われれば、そんな気にもなれないわけで、なんというか、この朝のお食事の時間がとっても憂鬱ってわけなのだ。


「お父様、お母様、おはようございます。」


ドレスを持ち上げフアッと挨拶をする。すでにお母様とお父様は席におり、私にニッコリと微笑んだ。


「おはよう、セレナ。8歳になった気分はどうだい?幾分かお姉さんになった気がするなぁ。」


それは、お父様が家に全然いないから、会ってないからでしょうが!!


「いい夢は見れたかしら?」


うんにゃ、前世の記憶が止めどなく流れてくるそれはそれは過酷なゆめでしたけども!?


「ええ、とっても素敵な気分です。これからもスカルスガルド家として、お勉強や色々な事頑張っていきます。」


「素敵な娘をもてて嬉しいよ。なぁ、イレーナ。」


「そうね。スヴェン様。」


うう。怖い。なんか怖い。やだよぉ。お作法などを注意して食事を口に運ぶ。お父様もお母様も目は笑っていない気がする。そう思うと緊張して食事どころじゃないんだよね。


でも、こんな食事ごときでびびっている場合じゃない。私には折らなきゃ行けないフラグが沢山待っているんだから。


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