汚れたお茶会②
このストーリーは本来、16歳のオープニング以降に、アイリーンが私を陥れる為に画策するお茶会だ。私の慕ってる発言の為展開が早まり、年齢も早まっている為、キングサリ様と協力していたり、アイリーンが率先して行なっていなかったり、ちょくちょく違う部分があるがきっと本筋は変わっていない。
私を毒殺する。
それがこのお茶会の目的。乙女ゲームの世界では好感度の上げたキャラクターが私がお茶を飲む前に銀のティースプーンを入れ、命は助かり、アイリーンは糾弾されるというストーリーで進んでいく。正直、急に現れて、突然スプーンを入れるという色々突っ込みどころの多いストーリーだと思ったが、きっと今回もそうなはず。
つまり、私のティーカップのお茶には毒があり、この銀のスプーンは黒く変色する。
私は入れたスプーンを皆にバレないように確認する。しかし予想外のことが起きる。
変色していない!
なぜ!?ここに毒が入ってるストーリーだったはず。お茶を異様に勧めるマルクスやクラメールからも、ここは変わっていないと確信していたのに予想が外れた。どう言うこと?!
私は動揺した。おかしい。なにか気づいていないことがあるんだわ。なんだ。なにを見逃した。
私は目の前のティーカップから少し周囲に目を向けた。みんな私がお茶を飲む瞬間を待っているかのように私をじっと見つめている。
でも、1人。1人だけ私を全く見つめていない人がいた。
アイリーン。アイリーンただ1人は私ではなく、自分のティーカップを青い顔で震えながら見つめているのだ。
今回のお茶会は人によって食器の柄が少しばかり違っていた。私は情けないことに今まで気づいていなかったが、よくよく見てみると、私の目の前にある食器は淡い紫色のラインが入っている食器。マルクスには不釣り合いな優秀な料理人が粋な計らいで私と同じドレスの色にしてくれたんだわ。
アイリーンは赤と黒。そしてアイリーンの目の前の食器は赤と黒の細いラインが入っている。ある食器をのぞいて。
アイリーンの見つめるティーカップには淡い紫のラインの入ってる。
私のティーカップは赤と黒のライン。
つまり、アイリーンと私のカップが入れ替わっている。
やられた。彼女は私を救う気だ。自分を犠牲にして、私を死から救おうとしている。
「アイリーン。お願いがあるの。」
お茶を飲もうとしていたはずの私が急にアイリーンに話しかけたことで周囲は少しどよめく。
「私とカップを交換してくれない?」
マルクスとクラメールが、大きな音をたてて立ち上がり私を睨む。
「なんって!礼儀知らずなの!?人のお茶を欲しがるなんて!前から思っていたけれど卑しい子ね!!!」
「バカにするのも大概にしろ!!」
派手に2人の座る椅子が床に倒れ大きな音を出す。アイリーンは顔を真っ青にして私をワナワナと見つめた。
「礼儀知らずはそっちでしょ?そんな大きな音を立てるなんて。さっ、アイリーン様?」
私はティーカップを差し出した。
マルクスとクラメールは入れ替わっていることなんて知らないから、娘が毒入りを飲まされると勘違いし、ありえないほどの動揺をしている。
「あ…あ、だだめです。そんな…」
アイリーンはポロポロ涙を零し、ティーカップを握りしめている。
私は立ち上がりアイリーンからティーカップを奪った。
そして飲み干そうと口にティーカップを持っていく。
すると。
「だめぇーーーーーー!!!!!」
アイリーンは私からティーカップを叩き落とし、テーブルに紅茶の水溜りが広がる。
お茶会は時が止まったように静かになった。
私はアイリーンの涙を拭い、こぼれた紅茶の水溜りに、銀製のスプーンを落とした。
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