第二王子の華麗なる登場
キングサリ・デ・フォシュベリ、彼の顔を見た瞬間に色々な情報が頭の中を駆け巡る。
彼は女にだらしなく誰にでも優しく接するまぁ、よくあるタイプの攻略対象である。そして、定番の如くヒロインに恋に落ち、ヒロインだけを愛するようになるというベターな展開。別に嫌いじゃないけれど、あの時は、兄弟で取り合うとか複雑すぎて、苦しいわーとか、弟に取られてしまうカルミア様が可哀想とかそっちでしか考えていなかったためそんなに印象がないのだ。
というか、この世界にセレナとして生きるようになってから、コイツのいい噂聞いたことがないぞ。大丈夫か?私は女好きの設定などよりもそっちの方が気になっていたのだ。
「お前、名を名乗れ。」
すごい横柄でムカつくんですけど…。と、内心イライラしながらも、王族様ですものね、そしてまだ同い年だから9歳ですものね。大人の対応よ。セレナ。おこっちゃダメ!
「お初にお目にかかります。セレナ・ディ・スカルスガルドでございますわ。」
大丈夫、沢山練習してきたのだから。相手に不快に思わせない第一印象の作り方とか、美しい挨拶の仕方とかね!だよね!先生!
家庭教師の先生を思い浮かべて、あの厳しい日々を思い出す。うう。よかった。あの練習はこの日のためにあったのね。
すると、キングサリは見る見るうちに顔を歪め明らかに不快!!!という顔をした。
えっ。なぜ?????
「お前、カルミアの女だろう。汚らわしい。」
吐きつけられるように言われ、頭が真っ白になる。どういうこと?
「あんな少しばかり早く生まれただけで威張り散らしているような、あんな奴の事が好きだとほざいたんだろう?」
「俺の方がよっぽど優秀なのに。お前も私にするなら、待遇を変えてやろう。お前は身分も顔もそこまで悪くないからな。」
炙ってやろうかしら?
いいえ、それでは足りないわ。
三枚に捌いてから焦げるまで炙ってふりかけにして海に撒いてやろうかしら。
でも待って。危ない。私よりも後ろのロイの殺気がまじでやばい。ちょ。逆に冷静になってきた。
ローイ。大丈夫よ。抑えて。と手をかざすとスッと殺気が抑えられる。いやまだ漏れてるけど。
私は笑顔をやめた。この人はこの国にとってもあまり価値のない人だと思ったし、私がこの人にどうこうされることはないと思ったからだ。
この国は前世での日本よりかなり遅れているように見えて、優秀な王のお陰か、才能のある人が上にいけるシステムはしっかり整っているのだ。
可哀想に。この人は私が三枚に下ろす前に誰かがしっかり叩き落としてくれる。そんな国であることを知っている。
そして、この方は知らない。
この国の王族でありながら、この国がどんな国なのか。全然知らずに生きているのだ。
ある意味可哀想な人なのかもしれない。
笑顔をやめたのに、違う笑みが溢れる。
やだ、私やっぱりあの父親の血、流れてる。
「キングサリ様。光栄なお誘いありがとうございます。しかし、私には身に余るお誘いですので、お断りさせていただきますわ。」
「私は良いと言っている。お前が欲しい。」
なぜだよ。本当に何故だよ。
考察するにカルミア様を慕ってる私を奪う俺的な?
はっ。下らない。
「私は、カルミア様のお側で充分です。」
そう伝えると、目に見えて顔が歪む。
「そうか。やっぱりいらぬ。下らない女だな。」
そうしてコツコツ私の前を通り過ぎて行った。
ここからどうなったら乙女ゲームの世界の女好きだけど優しい!的な性格になるのか。甚だ疑問だがとりあえずは出会いイベントを終えたということでホッとする。
そして、絶対キングサリのフラグは立ちそうも無い事にも安心する。
ふう。もう、災難おわりだよね?早く、早く帰りたい!と、ロイを連れて足早に王宮を後にした。
そして、後々、キングサリ王子とは絶対フラグなんて立たないと思ったこの考えが間違いだった事に気づくのだが、それはもう少し先の話………。
やべぇやつ。




