突然の出会いイベント
「はぁ。」
私は明らかにトボトボと歩く。
今日の私、なんだか散々すぎない?もちろん!もちろん!カルミア様に会えた事、そしてその時の記憶は脳内染みつくほど覚えているし、最後文を出すなんて言ってくださって本当にもう泣きそうなくらい嬉しいのだけれども。でもでも、お父様にはボコボコにされるし、扉は蹴破ってすごい怒られるし(扉の前にいた怖い護衛のおじさんに)なんだかすごく散々ではある。なんか、災難って続くものよね。もう今日は災難は出尽くしたはず。お願いだから家に平和に帰らせてね。優しいリリスに早く会いたい。
「セレナ様は、あのような技術はどこで学ばれたのですか?」
急にロイが質問してきて少しびっくりする。会話はいつも割と私がベラベラ話すことが多かったし、めちゃくちゃ真面目な性格だから私から仕事以上の私語など……みたいな感じで考えてるのだとずっと思っていた。
「あのようなってなんですか?」
「説明しろと言われると難しいですが…殿下が苦しんでいる時にセレナ様が手を握ったり背中を丸めたり?みたいな事で少しずつ回復しているような気がしまして、それがどこで習われたのかと。」
うーん。説明が難しくてどうしようかと悩む。前世の記憶が多いし別に医療技術ではないんだよな。というか、この国に看護師のような役割の職業っているのだろうか。どこの医学書にも出てこなかったけど。
「あれは医学とかじゃないんですよ。おまじないみたいな、そんな感じです。」
とりあえず適当に流しておく。でも、ああいうのは結構患者さんの心を豊かにしたり癒したりするんだよなぁ。この国にないなら作ればいいのになぁ。
ロイは私の言葉にあまり納得していない様子でうーんと顎に手を当てて何か考えているようだった。
そんなことを話しながら歩いていると、王宮の出口にもう着きそうだった。
なんだったんだこの王宮の旅は。お父様に脅かされて、植物園に行ってカルミア様に会って…。
というか、やっぱり、植物園に行けって言ったのはお父様の仕組んだことだったのね。きっと何かしらの理由で毒ならしをするときはあの部屋を使っており、その護衛の指示をお父様が出していたとして、中の守りを無くして、私に気づかせる。ここ一年なかった接点を作り、私とカルミア様を引き合わせる。
実際、文通の約束をしてつながりを持つことができた。
つまり、私はお父様に、大きな大きな借りを作ってしまったということだ。
ああああ!!!もう!!!今日だけでお父様に何回やられたことか!
いつかきっとこの借りも回収されるわね。
絶対見返してやる!!
そうプリプリ早歩きで王宮の門を抜けようとすると、大きな馬車の音がした。
え、何この馬車。大きくない?え?大きくない!?
普通の馬車とは明らかに違う、これは、誰か偉い人が乗っている。だれ???
私とロイはすぐさま察して道を開ける。そして顔を一応下げておく。下げながら辺りを見るとかなり護衛の数も多かった。しくった。もっと周りを見ておくべきだった。めんどくさい人じゃないといいけど。
『災難って続くものよね。』
さっき自分で思ってしまったあの最悪な言葉を反芻してしまう。大丈夫。普通なら何事もなく通り過ぎるだけよ。
コツコツと革のブーツがレンガの道を叩く音がする。その音は何故か、私の目の前で止まった。
嘘でしょ〜。なんでよ〜。
めっちゃめんどくさい〜。
「お前、顔をあげよ。」
ゆっくり、恐る恐る顔をあげると、そこには。
癖のある金の髪、カルミア様の同じ瞳。この顔!幼いけど忘れてないぞ!
まさしく攻略対象である
キングサリ・デ・フォシュベリの顔であった。
きたぁぁぁぁ。




