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植物園視察③

「ロイ!()()よ!」


私が叫ぶと、さっきまでびっくりしていたのにすぐに扉に体当たりする。


3回ほど扉は耐えて、4回目で扉は派手な音を立てて、壊れて中が見える。


すると中は、外の外装に似合わぬとてもとても豪華な作りの寝室だった。白の塗装に大きなベット。そして、異様な数の本と薬、薬草を擦る臼のようなものもある。水道や、タオルなどもあり、かなり広々としている。私の部屋よりも広いかもしれない。


そして、机には先程摘み取られていたバレリアンが数本無造作に置かれていた。


部屋を見渡す。


その中に1人倒れている方がいた。


その姿を見た時、私は考えるよりも前に体が動いた。


「カルミア様!!!!!!」


ぐったりと倒れる姿は明らかに病か、中毒か、とりあえず健康とは言い難く、呼び掛けても意識がない。とりあえず脈と呼吸はしっかりある。


よかった生きている。


でも、コレはなに?病なの?と考えていると手足に発疹があり、何かしらの発作に思えた。アレルギー?


私はグッと、唇を噛んだ。


どうしよう。わからない。わからない。今、カルミア様がなにで苦しんでいるのかわからない。看護の知識も豆粒程度で、医学なんてさっぱり。どうすればいいの。何のために努力してきたの。私にできることは、手を握る事だけなの!?


泣きそうになるのを必死に堪えて、医者を呼ぼうと顔を上げると、ロイが床に落ちている本を拾い上げた。いや、本ではなく、日記?


そしてそれを見て、眉間に一度シワを寄せた後、私に渡した。


私はそれを見た時に全てを理解した。


その本は私の思った通り日記だった。しかし、カルミア様が書いたものではなく、お医者様が書いたもの。中身は、投薬と副作用、解毒、回復の記録。


これは、毒の慣らしだ。


よくフィクションで見たことはあるけど、この世界で本当に行われていたなんて。


私は堪えきれずに、涙がこぼれた。事務的な毒の投与記録が、私の涙で濡れていく。勝手にカルミア様を握る手に力が入る。


「泣くな。泣くな。」


私は自分に言い聞かせながら再びカルミア様の事を見た。


彼は今必死に戦っているのだ。


この国の王になると言うこと。私はわかっていたのだろうか。王妃になると軽々しく言っていた自分が恥ずかしい。何も、何もわかっていなかった。この国の礎となり、上に立つということ。そして、この人を支えると言うことが。


「すみません。ロイ。私の力じゃ、ベットまで運べなくて……。ベットまで運ぶのを手伝っていただいてもいいでしょうか。」


ロイは何も言わず、優しい微笑みを浮かべて、カルミア様をベットまで運んでくれた。


私は周囲を見て温かい水と冷たい水と、清潔なタオルを用意して、ベットの横に座った。


カルミア様は、ヴゥ、と苦しそうにうめきながら汗をかいている。汗を拭き、冷たいタオルで顔を拭く。手を握り、睡眠の妨げにならないように、心の中で、頑張れ、頑張れと声をかける。


どうして倒れたんだろう。お水が飲みたかったのかな。きっと1人で苦しかったろうに。


でも、何故1人なんだろう。苦しい所を見られたくなくて人払いしたのなら、私はすごく邪魔だけれども。見つけてしまって帰るわけにもいかず私は手をさすりながら、汗を拭き続けた。


向き合いたい。この人のこの国を思う気持ちに。こんな大変な事をしてまで国を支えようとなさっている。なんて、なんて尊い人なのだろう。


私は正直ゲーム感覚だったのかもしれない。彼が好き!そんな単純な理由でここまで来たけれども、本当の意味を全く理解していなかった。いくらゲーム世界と同じとはいえ、コレは現実で、この世界で生きている。みんな生きているんだ。


力になりたい。この人の力になりたい。


心の底からそう、思った。

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