植物園視察②
中に入るとそこには巨大な植物園が広がっていた。左右に植物が分かれ、二階建てになって畑が広がっている。間には水路が流れ、水が循環し草花がしっかり育つようになっている。温度は一定で、どう管理されているのかは分からないが、部屋によって少し寒かったり暖かったりとその植物に応じて調節されているようだった。前面がガラス張りの為ポカポカの日光が直に入り、しっかりお日様を浴びている。
植物の知識はとても詳しいとは言い切れないけれど、でも、この環境がとても良いと言うことは私でもわかる。
「とても気持ちが良い所ですね。心がスッとします。」
私は自然と笑顔が溢れた。色とりどりの草花が並び、コレが誰かを直す薬になるんだ。すごくすごく素敵なことだなぁとしみじみと感じる。
あっ。この草知ってる。実は知識がないないとはいえ、少しばかりは知っているものもある。たしか、バレリアン…だったっけ?睡眠効果があるんだよね。白くて綺麗な花。
自分の知ってるお花があって、なんだか少しだけ嬉しくなってその花を見ていると、刈り取られている跡があった。だれか使ったのかな。
『王宮にある大きい植物園にはセザール各地の薬草が全てあり、医療の最先端である。』
いつかの本に書いてあった。きっと王宮内の誰かが眠れなくて、飲んだのかな。そんなことをポヤァっと考えているとある場所が目についた。
ガラス張りで日光が入りとても明るい所に反して、すごく暗いくらい部屋が一つある。
「日光がいらないとか、ダメな植物なんてあったっけ?光合成しなくても良いものとかあるのかな。キノコ?キノコとかかな。」
なんだろう。すんごく気になる。自由に見て良いとは言われてるし少しみてみようかな。
「こう、こうごうせい?とはなんですか?セレナ様。」
ロイに突然聞かれ、ピクリとなる。あー、口に出ちゃってたか。
「あっ。あーーー。えーと。植物の栄養補給の仕組みの名前?です。」
「そうなんですね。私でも知りませんでした。セレナ様はこの一年で本当に物知りになられましたね。すごいです。」
ニコニコ私の成長を喜んでくれるのは嬉しいけど、ごめんね。ロイ。私一年前から知ってたな。
「それより、ロイ。あの奥の部屋見ても良いですか?自由に回っても良いといわれていたし。」
「かしこまりました。暗いので足元お気をつけて。」
ロイに手を借り、なんだか洞窟みたいな場所を通る。割と床は舗装されているから全然大丈夫だけど、周りは粘土っぽい壁で植物園のデザインとは全く異なっている。本当になにここ。
道を途中まで進み、木の扉が見えた所で、モヤモヤと嫌な予感がしてくる。私何か見逃してない?
あんなに警備がすごかったのに、なんで中は1人もいないの?
『何か貴重な物が隠されていたりするのかしら?』
さっき自分が護衛の男に嫌味で言ったあの言葉が頭の中で響く。
物?物なら中まで私なら警備させる。危険な物?触れちゃいけない物?
いや、物?なの?
………人?
だれか重要な人がここにいるの?
なんでお父様は私を植物園に連れて来たの?無意味な無駄なことをする人じゃない。
なぜ?何故私はここに?
私が考えを巡らせているとドアの向こうで、バタンッと大きな音がした。
ノックし、呼び掛けた。
「誰かそこにいらっしゃるのですか?」
返答はない。でも、今の音、明らかに何かが、誰かが倒れた音だった。
「ロイ。ここを突き破って。」
「へ?」
ロイは今まで見たこともない顔をした。




