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新たな幕開け

時が飛んでます。

新章よろしくお願いします!

「セレナ様〜。」


「どうしたの?何かあった?」


 男の子が私の元にかけてくる。2年経ちあんなに可愛かった、セルテカの村で出会った少年フェルは少しばかり身長が伸びて私の頬に伸ばせば手が届くほどに成長を遂げていた。敬語もしっかり使えるようになり、今ではナースとして働くための勉強に励んでいる。


「何かあったのはセレナ様の方です。また、寝てませんね?」


 ジトリと目を見つめられて、私は思わず目を逸らした。


「もうすぐ婚約式だというのに!どうするんですか!その前に倒れたら!」


「ご、ごめん。フェル。わかってはいるんだけど。」


 ―――――――――――――――――――――


 この2年、一瞬だった。特にルルージュがこちらについてくれてからは本当に。彼女の影響力というのは本当に素晴らしく、話がとんとん拍子に進み、すぐに審議まで進んだ。


 貴族の中でも、アデライン家は信頼をされており、忠義を感じている者も多い。蹴落とし合いのような貴族の関係の中で私は奇跡を見た。過半数というかなり難しい数字を、いとも容易く彼女はとってきたのだ。


 容易く、というのは良くないかもしれない。彼女が裏でどのようなことをしたのか、私は知らないのだから。だが、彼女はコロコロと笑っていた。


「こんなもの、私の目指す所に比べれば容易いですわ。」


 彼女の目指すモノ。それは、いわゆる私のお父様の地位。宰相…らしい。全く恐ろしい。国の政治を担うトップになりたいと彼女は事もなさげに語るのだ。


「宰相に王妃が一番近いんではないのですか?」


 私が何気なく質問した言葉に彼女は冷ややかな目を送る。


「全然違いますわ。王妃は政治に介入することはほとんどありません。女にとっての一番であることは代わりないですけれどね。」


 長い髪を一つに束ね、重いドレスではなく軽々とした美しいワンピースを着る彼女は楽しげに笑った。


「女である私が男でも容易く取れないような場所を勝ち取るからこそいいんでしょう?」


 勝気に笑う彼女は本当に美しかった。ドレスは捨てていても、決して女性らしさは失わず、あくまでも女性として。私はその姿にいつも見惚れてしまう。


「私が王妃で、貴方が宰相。約束ですよ?」


 私の言葉に彼女は大きく肯く。


「でも、王子であるカルミア様の婚約をよく蹴れましたね。結婚もされないおつもりなんですか?」


 この国では、独身はとても珍しい。一世一代の大きな婚約を蹴った彼女は他の縁談も難しくなるだろう。だが、彼女なら結婚という選択肢を考えていないのもおかしくはないなと思う。


「するわよ?絶対に。女性として生まれたんだもの。できる経験はしてみたい。子供もほしいわ。というか、単純に、カルミア殿下がタイプじゃないのよ。」


「えっ。」


 タイプじゃないぃ!?!?あの素敵なカルミア様が!?タイプじゃなかったとしてもかなり魅力的だとおもうんだけど!?


 結婚はしたいというルルージュ様に、私はそれはそれでらしいなと思った。強欲というかなんというか、人生でやってないことがないように、後悔がないように、というか。


 日本にいたら絶対海外に飛んでスカイダイビングとかしちゃうタイプだと思う。人生一度きりなんだよ!?みたいな。


「カルミア殿下はとても素敵だと思うけど、足りないのよね…。」


「な、何が……?」


 ゴクリと息を飲む私をニヤリと笑った後、彼女は官能的に呟いた。


「筋肉。」


 悩ましげにため息をつく彼女に私は更に大きなため息をかぶせた。


「そんなこと!?」


「な!!重要ですわよ!」


 カルミア様だってあるよ!筋肉!

 私は背中の傷を見せてもらった時を反芻してしまい顔を赤く染めた。


「あらー、やだ。やらしいですわね。」


「ルルージュ様っ!」


 彼女がこんなにも社交界ではなく政界で生きていこうと気持ちを変えたのには、理由があったらしい。一つは、私が思わぬ研究していたこと。ライバルとして、戦うべき敵は私ではないのではと気付いたかららしい。


 そして、もう一つは、ハクの存在だ。


 彼女にとってシュパールとの同盟は地を揺るがすほどの大きな衝撃だったという。歴史を動かす瞬間に立ち会えたと思ったと、以前話してくれた。長い長い歴史を動かすような、そんな人物になりたいと彼女は望んだのだろう。


 あとは……ハクの筋肉、見たのだろうな。今でも忘れない。彼女とハクのはじめての会合を。あれはいつかハクも渋々折れることになりそうだ。いや、渋々ではないかな。意外と乗り気だったりして。


 元々、能力はとても高く、頭がいい彼女にとって、政界で活躍することは大変じゃない。しかし、何が足を引っ張るかというと、それは性別だ。彼女のような仕事に就く女性はこの国にはおらず、彼女への偏見の目は強い。


 でも、今は私とバンで生み出したナースがいる。教育機関を卒業した後、華々しく活躍する彼女達は、今では大きな成果を上げてくれている。病床環境の改善が彼女らによって行われ、清潔な空間で治療できることは患者にとってとても良いことだった。


 なによりも、患者の心を癒すのだ。手を握り、不安を傾聴し、何かあればそばにいる。そんな存在がいてくれるだけで、患者は心を癒す。


 その効果は少しでも、ゆっくりでも確実に伝わっていた。


 ―――――――――――――――――――


「セレナ様!そろそろ帰った方がいいのではないですか!?」


「あぁ!フェル!そうね…。いよいよ、明日だものね。」


「楽しみにしてますよ。僕!」


 優しく笑うフェルを見つめて思う。私がルルージュの持ってきた案で一番気に入ったのは教育の低額化だ。今までは家庭教師をつけてしか行えなかった教育を、集団教室を設けることで、貧しいフェルでも教育が受けることができる。


 今ナースになろうと勉学に励むフェルは紛れもなくこの国の希望だ。本当に貴方にみんな期待しているのよ。


 私はフェルの頭を優しく撫でた後、ゆっくりとその場を後にする。自分の事を認めてくれる人が確実に増えた。ルルージュはもちろん、バンもカイトもロイもアイリーンも、そしてカルミア様も沢山協力してもらって、私は今ここにいる。


 16歳になった今、いよいよ明日は婚約式。


 それは、ゲームのオープニングで、いよいよ始まるということ。


 変容した今の未来では、きっと同じような未来にはならないと思う。そう思う。


 でも、気合を入れないと。これからは何も間違えられない。私は何一つ、踏み外せない。


 密かに握る拳を私は隠す。幸せな未来のために。

 私はなんでもするわ。


 8年間、今積み上げてきた物が花開くとき。

 これから新たな歴史が幕を開く。

これから新章に入ります。

おそらく…最終章になるかと…。

ゲーム展開に入ってからのセレナ達の未来を見届けて欲しいです!


これからもよろしくお願いします!

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