プロローグ
最初の最初、終わりの始まり。
昔々、遠い昔のお話です。
ある山の奥、誰もその名を知らぬ小さな国がありました。
外と隔絶されたその国にはとても立派なお城とお社が二つ。
それ以外は一面の田畑と一国とは思えぬ粗末な家が建ち並ぶそれはそれは貧しい国でありました。
そんな決して豊かとは言えぬその国には一つの神様がおりました。
ヒトから生まれ落ちたその神様は、その特異な見た目により人間から大層敬われ畏怖されておりました。
何時から。何故。誰が神様と呼んだのでしょう。
幼子のまま年を経ても成長しないまま人々の信仰を一身に受けてなお、
ただその様を虚に眺めるばかりで、まるで人形のようでございました。
そんな神様は国が病と飢饉で滅びゆく様すらもその紅い眼でただ、見つめておりました。
皆が救いを乞いましたー。
「病を祓いたまえ」神様は初めて口を開きますーーもう手遅れだと。
「雨を降らしたまえ」神様は首を横にふりますーーもう間に合わぬと。
「贄を喰らいたまえ」神様はじっと皆を見つめますーー
ー後ろをみよ、誰ももう生きてはおらぬ、と。
国が滅び、連なる朽ちた廃屋と暗闇と、そして腐敗した死肉に群がる魑魅。
その様を見て神様は気付いたのです。
己の中で沸き立つ仄暗い闇を。
自分は神様でもなんでもない、彼らは同胞なのだと。
ヒトによって「神」という名で封じられていた得体の知れぬナニカは
仄暗い微笑みを浮かべ、初めて自らの意思で外へ出たのです。
これが、後に魑魅魍魎の主人と呼ばれるに至る「白鬼」の始まりのお話ー。
初めまして。八霧といいます。
初めての投稿で色々不慣れでご迷惑をお掛けすると思いますが、何卒よろしくお願いします。
不定期ではありますが、頑張って投稿していけたらと思います。