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リアル 3

 街に着き、無一文のライムだったがエリスの交渉により宿に泊まる事が出来た。翌朝から仲間を探すことになる。


「問題?」


「そう、この世界のエルフは好奇心旺盛なの」


「例えばどんな?」


「まず同じエルフなら決闘を挑む、また引き受けもするわ」


「そんなの普通じゃないか?」


「普通じゃない、普通なら勝てる状況や(職種の)相性、相手を選ぶ」


「そうだ、な」


「だから街に強いエルフが所属するギルドがあると、他のギルドは新人エルフを入れたがらないの。この街だとエクセアのギルドが強いエルフのいるギルドね、ほとんどあそこが戦闘を挑んでいるわ。確かドラゴン族・エルフ・エルフ・エルフの四人で組んでいたはず」


「それ?それで他のギルドに勝てるのか?」


「三ギルド総勢十九名、それをたった四人で倒したわ」


「そ、それって」


「そうね、エルフが強い職種だといいたいんでしょ。だけどエルフ狩りをしているから、エルフを連れていると必ず襲ってくるわよ。それで命を落としたからエルフはこの街にいない。それからは、どこのギルドもエルフを仲間に入れない暗黙のルールが出来た」


「あと昨晩言わなかったけど、あなたは異世界の人、もし言ったらエクセアのギルドに狙われたり他の連中に(さら)われたりするから絶対口に出さないで」

 エリスに小さい声で耳打ちされた。


「そんな・・」


「もし、知らなくてエルフを仲間にしたらどうなるんだ?」


「もちろん、一緒に倒されるでしょうね」


「それはひどいな」


「しょうがない()()は実力世界だから」


「そうだけど」


「あぁーっ!強い仲間が欲しい」

 よりによって強いエルフを仲間に出来ないとは。


「そうだ!ドラゴン族を選ぶ奴はいないのか?」


「ドラゴン族は竜語しか話せない上、一人で孤立して倒されて終わり。だからほんの数人しか見かけたことがないかな。ただレベルが三十五以上になると人間とも話せるらしいの。今はドラゴン族は、ほとんど見かけない」


「そんな事言って他の職種も全くいないじゃないか。あ~、これからどうすればいいんだろう・・・」


「気落ちした?攻略を諦め休んでいてもいいのよ。少しだったら待ってあげられるけど」


「お」



「お?」

 エリスが疑問符顔で聞き返した。


「俺にできないことは山ほどあった・・・」


「??」

 きょとんとエリスはライムを見つめた。


「人生の岐路で壁に当たった。それは山の頂のように高く思えた。顔を上げて、見ては確認し下のチリを集めてきた、ルンペンみたいな床掃除や洗い物、ゴミ集め、そんなことばかりだった俺は、いつしか、その山はなくなっていて平地になっていた。そしたらさー、そこを歩くのも苦にならなくなっていたんだ」


「何を言いたいの、何言ってるの?」


「やってやろうじゃねーか、これまでやってきたことは全てできた。つまりその仕事で努力さえすれば全部できたから探せば見つけられるって言いたいんだ」


「そんな事言ってもすぐにはできないわ」


「今はね」


「それじゃあ、早く見つけて見返して」



「うん、さっそくだが仲間探しのことについて相談がある」


「えっ・・・・何よ」


「エリスは戦わないのか?」


「私?戦ってもいいけど」


「よし決定!もう取り消せないからな」

 うまくいった、ヘルパーが手伝ってくれるのなら百人力だ。大抵ゲームでヘルパーはかなり強い。


「で職種はヒーラーか、まさかエルフじゃないよな」


「私?私はね、魔法使いよ」


「ええっ!?ま、魔法使いなのか」

 驚きだな、魔法使いか。

「よかったエルフじゃなくて」


「まあマシな回答ね。でも私に期待しないで、あんまり戦うのは好きじゃないから」


「了解した。ところで、もしエクセアのギルドと戦闘になったらどうすればいい?」


「それは大丈夫、逃げればいいだけ」


「それで逃げ切れるのか」


「おそらく無理だけど、砂とか投げれば逃げれるかもしれない。それに私は魔法使い。逃げる事くらいならできるわ」


「よかった、ところで何でそんな事言えるんだ?もしかして戦ったのか?」


「私の仲間だったエルフが戦った。相手はエルフを倒したので去っていったわ。エルフはエルフを倒したら他はどうでもいいみたい」


「必要以上には手を出さない、情けはあるんだな」


「あるよう・・ね」


 間のある返事だったが、それ以上は聞かないでおこう。



 さあどうやって強くしたらいいか、分からないこと尽くめで行動がとれない。ゲームだったら適当に外にいってレベル上げてとワンパターンのようにやれるんだけど歩くにしても外は広い、洞窟を探そうにも途方に暮れる。


「なあエリス、教えれてくれないか?冒険の進め方」


「もしかしてライム、まだそれを私に聞く気なの?私はヘルパーじゃなく魔法使いになったの。もう、どっちかにして」


 どっちか一つなら仲間しかない、

「ああ、あああぁぁ~!冒険の進め方を誰か教えれくれないかなー!」

 頭を抱えながら酒場で叫んだ。



「ふーっ、それなら俺に言え」


「誰か!?」


 声のする方を見ると戦士のような格好をした男がいた。


「お前、俺に視線を送るとは、お目が高いな」


「えっ、いえ」

 声がしたので見ただけだが。


「俺はアルス、歴戦の修羅場を潜り抜けてきた名だたる戦士」


「おお」

 それを自分で言うか。長剣に全身鎧を身に着けたガタイのいい男は酒場のカウンター席に座る一人。


「と言えば聞こえはいいが、要は危なくなったら逃げて生きのびた戦士か」


「いやー戦闘なんて命の次ですよ。俺はライムと言います。どうぞよろしくお願いします」

 それが現実、ちゃんと常識のありそうな人だ。


「命の次、それで良い。宜しくなライム」

 少し無精髭が生えている男は、顎をかきながら照れている。


「逃げる選択肢は戦闘方法の一つで 命を繋ぐためにあるんだと思います。よく逃げるが勝ちっていいますから」


「さすがに逃げたら負けだけどな」


「そうですね。でも逃げれる素早さ、機敏・機転は敵より上じゃーないですか。それに戦力差が図れるのもすごい事です。見抜く能力もかなり高いと思います」


「そうだな、あはははは」


「そうですよ」

 俺は先日まで画面を見ながら、このゲームをやっていたからアルスさんの力量がわかった。学生時代のゲーム経験から全滅する敵の数や敵の存在も知っている。


「せっかく気が合ったんだ、よかったら俺を仲間に入れてくれないか?俺は魔法使いとナイトがいるのならぜひ一緒に冒険がしたい」


「もちろんです、こちらからお願いしたいくらいです」


「よし決まりだな。まあ俺が逃げる時は肩を叩いて合図するから覚えておいてくれ」


「はい」


「え・」


 なんかエリスが乗り気ではないようだが、俺は一人でも仲間が増えて心強くなった。


「あのー、それで聞きたいことがあるんですがアルスさん」


「なんだ?」


「冒険者はどうやって冒険を進めればいいんですか?」


「冒険者は街で仲間を探し、その仲間と共に外でモンスターや他の冒険者と戦う。外は、まだお宝が眠っているとか、未確認の生物がいるとか、街があるとか、いろんな噂があるようだ。

 あと街のギルド協会でも謎の事件や調査、鉱石の調達、物を他の街へ運ぶ依頼など受けることができる、Gold稼ぎならこれをすればモンスターと戦わなくて良い。他に攻略に役立つ話も聞けることがある。

 最後に依頼を断ると信用に関わるから注意が必要だぞ、既にいくつかのギルドは無期限追放に指定されている。まあ、そうやってアイテムや資金を調達し装備を整えていくのが冒険者だな。ただ・・」


「ただ?」


「冒険者が命を落とすのは稀ではない」


「それって、よく死ぬことがあるという意味ですか?」


「ああ、冒険者同士の戦いならまだしも、相手がモンスターとなると勝ち負けでは決着がつかない。手加減なしの生死を分けた勝負となる」


「もし、死にたくないならモンスターは確実に倒せ。中途半端だと仲間を呼ばれたり死に物狂いで襲いかかることがあるからな」


「わかりました」


「ここにいるギルド冒険者たちは自分たちの生と死が隣り合わせにあることを知っているぞ」


「気を付けます」


「あと名前なんだが、俺の事はアルスでいい」


「はい。あともう一つ、冒険の進行の依頼調査の件で気になったのですが謎の事件ってどんな事件があるんですか?わかる範囲で構いませんので教えてもらえませんか?」


「それはだなぁ~」

 口をくぐもらせアルスは渋々答えた。

「行方不明者の探索や生死確認の仕事だ。あんまり、やりたい冒険者はいないだろうな。モンスターにやられたか食べられたか事故にあったか分からない上、自分も行方不明者になることも有りえる」


「そういうのは、依頼の完了はどう判断されるんです?」


「その人の持ち物だよ、それを証拠にする。例えば服はモンスターも吐き出して食べようとしないからな。報酬もモンスターを倒して得れるものより安いことが多い」


「あんまり報酬がないのか、そっちの方が得意なのに」


「人を探すのなら、ここのマスターに聞くといい。マスターはたくさんの人を相手に仕事しているから」


「エリス、たくさんの人がくるんだって、ここで待ち伏せて仲間を探すってのはどうかな?」


「・・・」


 そう俺たちも含めてたくさんの人がいる。アルスはなぜか遠くの方をみていた。ここから眺める所はそんなにないのに。


「おい、そこの新人冒険者」


「俺ですか」


「お前ナイトなのに馬なしなのか?馬なしだったら戦士だろフツー」


「はあ、いきなし何ですか?馬って」


「ふははは、馬に逃げられたんじゃねえか?」


「ふふ馬が逃げるか、まっ、乗り手が悪ければ馬は体から振り払うかもな。盆暗のせるのはお断りって」


「・・・っ」


「お前、変な服着てモンスターに襲われ泣いて帰ってくんなよ。そんなので俺たちまでモンスターになめられっと、あいつら付け上がるから」


「ペロって舐めまわされ手に挟まれて一緒に空を飛んでいるかもな。想像しただけでオエってくるぜ」


「っのお」


「おい、気持ちはわかるけどあそこのやつらは相手にするな。まだ冒険に出たばかりで、喧嘩売っても勝てない奴らだろ」


「はい」

 喧嘩売っても勝てないのは。それに全部あたってるから認めてる。


「男はそんなの気にしてたらここにいられないからさ」


「そうですね」

 何でゲームからしてナイトって職種を選んでも馬がいないのか今までのゲームメーカーを疑いたくなる。実際は確か馬がなかったら剣士になるみたいだったはず。

 その後、さっきの嫌なやつらが、

「あいつらポカンと面食らって馬面してやがる」

と笑って言ってたけどそれはどうみてもお前らだろと俺は思った。


「この広い大地、乗り物なしでは行きつけないから乗り物を早く手に入れよう、待ってな」


「頼りにしてます」


「ああまかせろ。それにしても職種の偏りは困るな」


「はい、そうなんです」


「この酒場に来ている冒険者たち、ほとんどの職種が一貫して戦士、ナイトがほとんどだろ。俺も調べているんだけど一体どういう仕組みなのか。なんか職種で得とか損とかあるのか」


「はぁ」

 エルフ、ドラゴン族は別としてヒーラーと魔法使いは確かに少ない。まあゲームで人気がある職種を選ぶと両者は少ないのも理解できる。俺は元の世界の事なのでそれを言わなかった。


「ライム、お前はもう魔法使い見つけているから偉いぞ」


「そんな誉められても」


「謙遜するな、俺だって何回もあたってこれだからさ」


「そうですか」


「冒険に出てまだ日が浅いライムが仲間に入れてるんだ、その交渉力を買って俺も加わったわけさ」


 そんな見つからない世界でもないのにと思ったが俺のギルドにアルスが加わった理由がこれではっきりした。もし、このガタイでヒーラーや魔法使いの姿を想像したら明らかに変てこだ。酒場にいる女の冒険者が少ないのは冒険者を選ばないからかな。


「ところでアルス、あなたの腕はどの位?」


「始めまして魔法使いの方、さきほどはあんまり話せなくて失礼しました。俺はモンスターを一突きで突き刺せるくらいかな」


「よく分からない」


「それなら積み重ねれば倒せると言おうか」


「そう、突き刺さる位ってこと」

 突き刺さるって?俺は二人の会話が分からない。


「ライムは知らないわね。街の住人が剣で刺してもモンスターの体には突き刺さらない、それだけモンスターの体は固いのよ」


「へぇ~」


「いいわ合格。攻撃力のある戦士でも甲乙あるから一概に判断できないから、そこでアルスにきいたわけ」


「それでお目にかなったと・・」


「そう、それなりに」


「それは光栄です。それよりお二人さんはどうやってここまで来られました?仲間探しでお二人を見かけたことがないから外から来た人間だとわかります。もし外から来たとするとモンスターがいて戦うことを避けられないから初心者には荷が重すぎたはずなのに傷一つない、だから不思議で」


「それは私がついていたから」


「やはりそうでしたか」


「さっかり分からん、説明してもらえないかエリス?」


「いいけど周りにきかれると真似されちゃうから内緒にしておいて」


「おう」


「はい」


「私が魔法でモンスターを近づけないようにしていたの」


「それって自分のレベルより弱いモンスターを近づけない魔法?」


「そうねそれに近い。例えば高レベルのモンスターの匂いをふりまくとか気配を出すとかあるけど私の場合は風の魔法で匂いや気配をかぎ取られないようにしたの。だからモンスターは気づかない。他に通り道にいて避けられないモンスターは遠ざけるため吹き飛ばしたりしたからモンスターたちは襲ってこなかった」


「風か、見えなかった」


「もちろん風だから見えないし吹き飛ばしたと言っても遠くだからモンスターにしか音や臭いは拾えない。それでライムは気づかなかったの」


「すごいですねエリスさんは」

 戦士が感嘆するので、尊敬の念を込めていったのがわかった。


「いいえ、たいしたことじゃない」

 エリスは偉ぶらずに謙遜して答えた。


「でも安心しないで。こっちにはまだヒーラーがいない、ヒーラーを早く探さないと」


「ヒーラーですか・・」

 アルスが言った。


「それよりアルス、こっちのライムはいいの?腕試しとかしてみる?」

 エリスは話を早めてアルスに言った、謙遜していたわりに強めに押すエリス。


「それは遠慮する。俺は二人の腕を信じている。ライムはまだ初心者なのがとってわかるし、そちらの魔法使いさんのほうは明らかにレベルが違う。これで私も心強いな。はっはっはー」


「でもアルス、エリスにも弱点があるんだぞ」


「私に弱点何よそれー?」


「それが聞いてくれ。俺がこの街まで走って来たとき、後ろをついてきたエリスは瀕死状態だったんだ。嘘みたいだろー」


「あなたが走るからでしょ。街が見つかったんだから歩いていけばいいのに」


「俺は諦めたくないから走ったんだ」


「諦めても良かったのに」

 エリスはサラリと言った。


「でもありがとうエリス、ここまでくるのにそんなに魔法使ってたのなら俺も疲れていた事が理解できた。仲間は俺が探すよ」

 俺はエリスの手を握った。


 エリスは少し頬を染め、

「しっかり仲間を探しなさい」

 と言った。


 俺は、

「はい」

 と答えるとさらに頬が染まった、そのエリスの顔に嘘はないと俺は見ている。


 「それより手を離して」

 そう言って手を猫のひっかき爪のように振りほどいた。


「ライム!!」

 アルスが俺にきっぱり言った。


「何ですか?」


「誰でもモンスターでもある、ウィークポイントだ!お前はそこを先についている。俺の目に狂いはない」

 と言って、うんうんとアルスは頷いた。


 俺はあっけらかんとしながら自分の性格が気に入られたのかと思った。


「では頑張って行こう俺たちのギルド」

 みんなで張り切って宣誓をする。


「おおーっ」

 アルスが元気よく、酒場の入り口の方へ歩いて行った。


 それを見ていたエリスは呆然と立ち止まっていたのだった。

 ここら辺から難しくなってきたので困りました。

 職業と職種の違いとして、この異世界では職業は街の仕事全般から冒険者を含め多種多様とした。職種はナイトや戦士などの種類別にした。

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