リアル? 2
ゲームと同じ世界で出会った女は神秘で綺麗な姿を持つ、しかし悪魔のような内面を見せた。その女とライム(庄)は走り、街に無事着くことができた。
エリスは、ご主人を引っ張って奥の方へいった。
「これでどう?」
「これは!!」
ご主人は俺を背にしている、話しながら俺が来ないかこちらを睨んだ。
「なんだ?」
よく見えなかったが長い布のようなものを渡していた。
ご主人がのこのこ歩いて戻ってきた。話がついたみたいだ。
「どうぞ一晩お泊り下さい、部屋はそこを直進し右に曲がって一番奥右の部屋です」
と部屋のある方を案内する。
「はいこれ、ショートソード」
なんとまあ!!おまけに剣付きだ。
「お主も頑張ってな」
「え!?」
ご主人は、ほくほく顔でカウンターの後ろの部屋に入っていった。
「なんだったんだ?」
「いいのよ、知らなくて」
頑張れって寝るだけだけど・・と思いながら俺とエリスは部屋にいった。
・
・
・
「なんで同じ部屋なのよ」
「仕方ないだろう、お金がないんだから。交渉したのはお前なのに、なんで愚痴るんだよ。それならこのショートソードだっけ、これもナイフとかにして別々になる様にすればよかったんじゃないか」
「それができなかったの。宿屋で敵に襲われたらやられてしまうでしょ、用心に越したことはないから」
「そうだけど」
こういうゲームって、男女四人が同じ部屋に泊まるからゲームと同じだろと言い返したかった。だが現実ゲームになると話は別、男女は一緒に寝ないから黙って聞いておこう。
しかもベッドは一つしかない。
「俺は床でいいから」
「そうね」
枕だけは貸してくれた。この世界の枕はやけに跳ねる。ん?何か良い匂いがする、これは植物か草が敷き詰めてあるんだな。
俺とエリスは部屋のそれぞれ両端に座った。俺はあぐらで向こうはベッドの上、奴隷と商人のような光景である。
「なあ、ご主人と何の話をしていたんだ?」
「言えない」
「なあ、この世界はゲームの中なのか?」
「分からない」
「なあ」
「知らない」
何も知らないとか分からないというだけなので黙ることにした、質問は受け付けてくれないのかよ。俺は、いじけたまま胡坐をかいて壁に寄り掛かっていた。
それから、しばらくしてエリスは沈黙を破った。
「私はこの世界であなたのヘルパーなの」
「お」
「それであなたと共に行動するの」
「うん」
「この世界を冒険する上で知りたいことがあったら、言える・わかる範囲で答えるから何でも聞いて」
「はい、じゃーさっきのショートソードなんだけど名称はどこに書いてあるんだ?」
「それはメニューの装備よ、手の甲を三回タッチすれば開くからやってみて」
俺は手の甲を三回タッチした。
「うわぁ、すごい」
Nameライム Job knight EXP 0 Gold 0
States
Lavel 1
Hit Point 13
Magic power -
Attack 12
Guard 15
Magic -
Magic Guard 3
Agility 4
Luck 4
【Equipment】【Item】【Skill】【Totalskill】【History】【Mail】【Help】
手の甲のから30cm上の何もない空中に、黒い光の背景画面に白い光の文字でステータスとメニューバーが表示された。ステータスは画面左に表示され、メニューバーは画面下にズラリと表示されている。
その中の装備の文字を指で押すとステータスの横に装備品一式が表示された。
Equipment
Head ???
Hand ショートソード
Body ???
Led ???
accessory ???
例えば装備の光文字を触ると装備品の一式が表示され確認できるというシステム。指で画面を貫いても手の上に文字が写るだけ、メニューバーは壊れないし消えない、本当にゲームの世界のようだと思った。
???、ふむ~っ?
「???と表示されているのは俺の服?」
「おそらくね」
ちなみにもう一度、手の甲を三回タッチすれば消える。それは、まるで拡大したスマホ画面を横にして空中に貼り付けているみたいだった。
「他に質問はないの?」
「ない」
いざ、こうなっても答えてもらえそうな質問が思い付かない。
それからまた沈黙になり一時間ほどしてエリスはベッドに横たわった。
俺はトイレに行きたくなったので声を掛け部屋を出る。この世界にもトイレくらいあるはず、
「ちょっとトイレに行ってくる。出ていったら鍵をかけてほしい」
「トイレね」
あった!よかったトイレの単語も通じるようだ。どうやら鍵までかけるから物騒なのは嘘でないらしい。
「戻る時ノックを四回するから」
「ええ」
「バタン」
俺は部屋を出た。
廊下を歩き、ご主人のいたカウンターの前を通ると別人が立っていた。交替の時間で入れ替わったのだ、外から来た客と話している。
俺はトイレがどこか尋ねた。
「あのトイレはどこに?」
「トイレならそこを進んで右に回ったところだ」
「ありがとうございます」
――
トイレに向かって少し行った所で、気になる話が聞こえた。
「どうしたんだよ今日のご主人、随分と機嫌がいいじゃないか」
「何やら神聖なローブの下に身に着ける長い靴下が手に入ったらしい」
「へぇ、それってどの位の価値があるんだ?」
「まあ普通に売ると売値200Goldはするだろうな」
「ショートソードが買値190Goldで宿屋一泊8Gold、足し引き2Goldの得でそんなに喜んでいるのか?」
「違うんだ、喜んでいたのは美女の身につけていた靴下だからなんだ。そういったものは普通は手に入らないレア物として扱われる。アイテムショップや武器屋などの商人が買い取ると、生涯手放さないって話だぞ、わかるか」
「へえ~それはかなりのお宝だな。俺も宿屋で働きたいなあ」
「悪いがこのカウンター席は、譲れねえな」
「ははは、そりゃー違いない」
そういうことだったのか・・・。立ち聞きするつもりはなかったのだが。
「ああ、ここだ」
「長い靴下か、尋ねても答えてくれそうにないな」
それよりだ、この世界の言葉はほとんど同じなのに魔法が使えてモンスターがいて俺がいた世界とは明らかに違う。ここが一体どこなのか、はっきりさせないといけない。
俺がトイレから戻ると客は帰り、カウンターは一人になっていた。そこに座る男は壁に掛けたランプに油のようなものを注ぎ足している。俺は素知らぬ顔でその前を通り抜けた。
部屋の前に着くと、四回ノックをした。
「コンコンコンコン!」
「バン!!」
「うわあ」
エリスは、俺の胸倉を掴むと強引に部屋に引いて急いでドアを閉めた。
「バタッ」
「おい、他には誰もいないぞ」
「こういうのは早い方がいいのよ」
「そうか・・」
エリスの目を見て俺は納得した。エリスはすぐにベッドに戻ったので俺も床に寝転んだ。
エリスは、すぐにスヤスヤと寝息をたてて寝ていたので、交渉してまで泊まった理由がわかった。走って疲れたからなあ。さすがに床で寝るのは背中が痛いや。これも戻るまでの辛抱。
寝て目覚めて明日になったら元の世界に戻れたらいいなぁ・・。
翌日、
「コンコン!!」
ああ朝が来たのか。
鍵は閉まっている。ドアの前には侵入者用バリケードのための机が置かれている。
「おい、朝だぞ。俺はエリスに声をかけた」
眠っているのか・・。
軽くトントン!と布団を叩いてエリスを起こす。何かしたと思われたら嫌なのですぐにエリスから離れた。
パチッ、と大きな目を開けエリスが目を覚ました。
エリスは首を傾け俺の方を見ると、自分の体を見た。
大丈夫だ、俺は何もしていない。
エリスは部屋、入り口をみる。
「行きましょうか?」
寝起きに一言、
「はやっ、もういいのか」
「ええ」
「よかった疑われなくて」
机をよかし俺たちは部屋を出た。
それにしても目覚めてすぐ動くエリスは体がだるくないのか。まあ寝起きだしな、もう疲れてたら話にならないし。
宿屋のご主人は朝日よりも眩しい顔をしていた、俺たちは宿屋を出る。
俺に構わずエリスはすたすた歩いていく。俺はそれについて行き、街の奥へ少し歩いたところで、
「おっ」
子供たちが俺の前に飛び出してきた。
「ぎゃーははは」
うしろで子供が俺の腰を掴み隠れている。
「わあぁ、ははは」
それを見つけた子供が俺の前で、後ろの子供を捕まえるため左右にフェイントをかけた。
「あはははは」
「へへへ」
「うわーおーっ」
「わーぁー」
「おおっおおおー」
とかわしながら追っかけっこするように、あっちに走って行った。
「元気がいいな」
「子供はいつ見ても可愛いわね」
「そうだな」
鬼ごっこをしているのか。歩を少し進めたところで建物の変化に気づく。
「へぇーえええ」
街の中の家は、ほとんど赤と白のレンガが敷き詰められて作られた壁の家である。よくこれだけ積み重ねて作ったものだと感心した、内側に一工夫ありそうだ。天井はレンガと違うようだ。天井は木なのかコンクリートのようなものか?コンクリートは時代的にまだないのかな、あれこれと気になった。
「街の家々、すごいぞエリス」
異国情緒が感じられる建物。
「感想はわかったけど、こんなのぜーんぜん。教会とかギルド協会は、もっとすごいわよ」
「そうなんだ」
「つまらなさそうな答え方、ほらあれが教会よ」
「はははははは、すぐそこにあったんだ。何見てたんだ俺は」
「見えてなかったわね」
今度は俺が先に見つけて驚いてやろうと考えたが、街の地形とゲームの地形は宿屋以外違っていたから自信がない。
「ところで、どこへ行くんだ?」
「酒場よ。ただし朝は誰もいないから少し街を見てから」
「街の中を探検したりはどう?」
「いや」
「そうだった、疲れるな」
「ところで、どうすれば元の世界に戻れんるんだ?」
「それは話していなかったわね、このゲームをクリアすると現実に戻れるわ」
とエリスは小声で答えた。
やっと答えてくれた。
「本当かそれ」
「ええ、でも難しいから気を付けて。命は一つだからなくしたら戻れない」
「さあ、適当に見てて」
エリスは広場に腰かけ、俺はそこから街を見ていた。そして酒場に向かう。
「あれか」
正面から進んで右の階段を昇った先、街の中間に酒場はあった。街外れにあっても良さそうだが一番稼ぎがあるのは案外、酒場だったりする、だからこんな良い位置で営業しているのではとアルバイト経験を活かして推測した。
酒場の入り口は開きドア、普通に押して中に入る。少しいった位置で一度中を見渡した。酒場は初めてだけどゲームみたいに隅々まで歩き回ると変な奴だと思われるから気を付けなきゃな。飲食店や職業安定所でも動き回ると、すごい目立つのを以前知った。
街の酒場にはナイトに戦士、魔法使い、ヒーラーがいてテーブルを囲んでいた。酒場のカウンターで一人で飲んでいるナイトもいる。
「エリス、ここって酒を飲む所なのか?」
「いーえ。主に食事と仲間を探しに来る場所よ。テーブル席の人たちは一緒に旅をする冒険者よ、カウンターや一人でテーブル席にいる人はメンバーを探している人もいるかな。
ここは各ギルドに加えてもらえたり、冒険の話を聞けたりいい場所よ、何か聞きたいことがあったら話しかけてみたら」
「わかった、だけど何か緊張するな。エリスに頼んでもいい?」
「いーや。私は悪いけど横で見てるだけ」
「そうか」
「しっかりしなさい、あなたは男で冒険者なのよ!」
「冒険者だ」
厳しいエリス、俺は勇気をもって話しかけることにした。まずはカウンター席のヒーラーに話しかけた。回復は命を繋ぐ要だ、一番必要だと思う。
俺はカウンター席に移動して、そのヒーラーの右隣に座った。
近くで横顔をみる。艶のある黒髪と相対する白肌、後ろ髪は下の方がカールしていて睫毛が長くその目が茶色く光彩が生き物のように栄えていた。その目の繊細さから見とれてしまう。
ただとても悲しそうな眼をしており、まっすぐ前を見ていた、隣にいる俺に気づくこともなく。話しかけようと思ったが美人で引いてしまった。これでは俺がナンパしているみたいじゃないか。
いやっ、待て!ナンパはこの世界ではどうなんだ?意識してしまって酒飲みのように火照ってしまう。火照ってってホテルか。かあぁっ、ダメだ完全に意識してしまった。
これはまずい。
するとエリスが俺の右横に座っていて横からコツンと足を蹴ってきたので我に返った。
俺の顔は赤いままだろうけど話しかけた、
「すみません」
「・・・」
いきなりこんなに美人を狙ったから悪かったのか?反応がない。
「すみませーん」
「・・・」
こちらに気づいているのか無視された。他の人の視線で分かった。他の人にまで声が聞こえているのだ、本人が気づいてないわけはない。みんなも話しかけて俺と同じように無視されてたりしたのかもな?
ほっとけよ、そんな声が聞こえたような気がした。
「次に行きましょう」
エリスが俺に声をかけた。
仕方がない。むこうの魔法使いにしよう。
「なんですか?」
「俺のギルドに入ってほしいんだけど仲間になってくれないか?」
「私は先日、誘いを受け他のギルドに加入するため今日ここで待っているんです」
「ごめん、声をかけたのは周りに誰もいなかったから」
「それが聞いてください。そのギルドの人は一日前から待っていたというんです」
「しらっと何を言うかと思えばおかしなことを言う魔法使い。前もって来ないと会えるわけないじゃーないですか」
というと、
「はい、だから私は一日前から待っているんです。そして明日には仲間がいるんです。新米の私は、これがお似合いだと思うんです」
「はぁ、そうですね」
純粋というか天然というか。
「よかったわね、またどこかでお会いしましょう」
というとエリスは俺の服を引っ張ってあっちの方へいった。
「な、なーにするんだよ、エリス」
ああいう子は真面目馬鹿だからほっときなさい。あなたには時間がないの。
「えっ?時間とかあるの」
「私がいるのは一か月だけだから。それと早い方が仲間を見つけやすいから急いでね」
「そうですね、はいはい」
せかされ坊主みたいになってしまった。
「ところで、どの職種を仲間にした方がいいんだ?」
「仲間選びは、それぞれナイト、戦士、ヒーラー、魔法使いでいいと思うわ。肝心なことは誰にするかってこと」
「ああ慎重に探すよ。俺も自分はそんな誇れるやつじゃないが、いい加減な奴はいれないつもりだ」
「そうね」
「さあ、わかったところで仲間を探すか」
「テーブルを囲んでいるギルドはエリスの説明のように戦士・ナイト・魔法使い・ヒーラーというメンバー四人体制をつくっている。それに一人、二人加わっているのは戦士かナイトか魔法使い。まずはそれで組もう!元の世界の俺たちはそれにもう一人エルフがいたんだけど皆エルフは入れていないみたいだ、あとドラゴン族も」
「エルフ?エルフは強いけど、選べないっていうか問題があるのよ」
会話文にカッコをつけました。すごく見やすくなって感動です。それぞれ、話し方が似てしまうのが悔しい。