Level.2 キャラメイク
夏休み初日の日曜日、昼飯を速攻で片付け、『AWO』の前でスタンバっていた。
そしてログイン可能時刻の13時半になり、
「ダイブイン!」
俺は『AWO』の世界へ入り込んだ。
目を開くとそこはだだっ広い草原が広がる。
風が吹き抜ける感覚。
草の匂い。
土を踏む感触。
そのどれもが、この世界はもう1つの「現実」なのだと、五感に訴えかける。
そんなもう1つの世界を思うまま楽しむと誓い、ふと後ろを向くと、
黒髪をボブにした、眼鏡で、ピチッとしたスーツを着こなしたThe秘書といった見た目をした女性が立っていた。
「はじめまして。私が、貴方が異邦人として『AWO』を自由に過ごしていただくためのチュートリアルを担当させていただきます。」
「はじめまして。宜しくお願いします。」
そう返すと、無表情な仮面が少し和らいだ気がした。
「まずは登録したい名前を教えてください。」
「ジーヴスで。」
「ジーヴス」とはイギリスなどで使われている、執事をイメージする名前だ。
日本で言う、「セバスチャン」だな。
執事のロールプレイとまでは言わないが、執事っぽい格好をしてみたい。
「ジーヴス。確認ーーー ジーヴスは使える名前です。」
「じゃあ、それでお願い。」
「かしこまりました。では、キャラメイクを開始します。」
そう言うと、目の前にウィンドウが表示された。
「リアル準拠、1から作成、マニュアルから作成の3つの中から選んでください。」
1からとか時間掛かり過ぎるだろうし、リアル準拠か、マニュアルからだな。
楽だしリアル準拠でいいか。後から適宜弄ろう。
「リアルでお願い。」
「かしこまりました。表示します。」
その言葉と共に、目の前のウィンドウに俺の姿が3Dのフィギュアみたいな感じで表示された。
「指で操作することで、拡大縮小と回転ができます。」
ほほう。
俺は割と細マッチョな方なんだが、少しだけ筋肉を足そう。
見た目は変わらないんだけど、脱いだら凄いみたいな?
あとは、執事だから白髪オールバックは確定かな。でも、白髪じゃない。これは重要だ。薄く紫がかった白がいいな。
瞳は紺のような藍のような紫のような、何色って言うんだろう。とにかく青系の瞳だな。
これで完璧だな。
誰がどう見ても執事だ。
「じゃあ、こんな感じで。」
「次は種族の選択です。説明は必要ですか?」
「ああ、だいじょ、いや、ベータからの変更点とランダムについてだけ頼む。」
「ベータからの変更点は、種族ごとのステータスが少し変わったのと、レア種族が増えたことです。あとは、種族進化ですが、今は関係ありません。」
「ランダムにつきましては、レア種族と、ユニーク種族に、基本種族、変わり種で魔物があります。
基本種族は最初に選べる種族と相違ありません。
レア種族は基本種族の上位互換に当たりますが、デメリットも少し大きくなります。
ユニーク種族は1人しかなれない代わりに、どれも強大な能力と大きなデメリットを抱えています。
魔物は、大抵の場合、そのままでは街には入ることができませんが、自分の種族からは基本的に襲い掛かられることはありません。また、魔物限定のスキルは種族スキルよりも数が多くなっています。などなど、一部優遇と大きなデメリットを抱えています。」
「へえ。種族進化については教えてもらえないの?」
「いずれ出来るようになるとしか答えることが出来ません。」
「分かった。じゃあ、ランダムでお願い。」
「かしこまりました。種族の抽選を開始します。
───あなたの種族は『吸血鬼』に決定しました。」
お?ユニークか?
「ステータスを表示します。」
ジーヴス Lv.1
吸血鬼 (ユニーク)
職業:
HP 30/30
MP 20/20
STR 1
VIT 1
INT 1
MIN 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1
………。
流石に酷すぎるでしょ?
何これ?
最初の村から出た所にある草原のスライムにすらワンパンされちゃうじゃん。
「次に職業です。」
「ちょっと、待って。」
「はい。」
「え?これ何?」
「吸血鬼は出る確率が相当低く、運営のお遊びとして、究極の大器晩成型として設定されています。
種族進化回数も全種族中一番多く、最終的には最強の種族の一角となる予定です。」
「最強の種族とか言われて悪い気はしないけど、これはキツイな。情けないけど、最初はあいつらに頼らせてもらおう。」
「最初からソロは無謀ですので、そうした方がよろしいかと。
では改めて、職業です。」
「剣士でお願い。」
「かしこまりました。ステータスに加算されます。
次にスキルです。スキルは10個設定できます。」
目の前のウィンドウが切り替わり、今出ているスキルを表示するものの他に、新たに取得可能スキルを表示するウィンドウが出てきた。
スキル
【吸血】【夜目】【状態異常耐性】【闇無効】【】【】【】【】【】【】【】【】【】【】
それで、こうなった。
スキル
【吸血】【鑑定】【夜目】【剣術】【闇魔術】【状態異常耐性】【闇無効】【STR強化】【VIT強化】【INT強化】【MIN強化】【DEX強化】【AGI強化】【LUK強化】
ホントは空間魔法とかでアイテムボックス作りたかったんだが、元々インベントリがあるし、そもそも一覧に無かった。
剣術は職業が剣士だし、闇魔術は吸血鬼が闇属性との相性が良かったから。反対に、光との相性が絶望的だがな。
で、ステータス強化系は……分かるだろ?
鑑定は基本だろ。まあ、こんなもんだな。
「最終ステータスを表示します。」
ジーヴス Lv.1
吸血鬼 (ユニーク)
職業:剣士Lv.1
HP 90/90
MP 40/40
STR 4(+1)
VIT 1(+1)
INT 1(+1)
MIN 1(+1)
DEX 1(+1)
AGI 3(+1)
LUK 1(+1)
スキル
【吸血Lv.1】【鑑定Lv.1】【夜目Lv.MAX】【剣術Lv.1】【闇魔術Lv.1】【状態異常耐性Lv.1】【闇無効】【STR強化Lv.1】【VIT強化Lv.1】【INT強化Lv.1】【MIN強化Lv.1】【DEX強化Lv.1】【AGI強化Lv.1】【LUK強化Lv.1】
称号
吸血鬼
夜の住人
【吸血】
触れた生物から血を吸うことでHPとMPを吸収して回復する。
【鑑定】
目で見たものの情報を読み取る。
【夜目】
夜、目が見やすくなる。
【剣術】
剣の扱いが上手くなる。
武技
スラッシュ
【闇魔術】
闇属性の魔術が使える。
呪文
ダーク
【状態異常耐性】
状態異常に耐性ができる。(スキルレベル×5+LUK%の割合で防ぐ)
【闇無効】
闇属性の攻撃を防ぐ。但し、闇属性しか無効に出来ないため、闇属性の剣で攻撃されると、剣のダメージは負う。
【STR強化】
スキルレベル分STRに追加される。
吸血鬼
闇との親和性が上がる代わりに、光との相性が絶望的になる。
そのため、光系の回復術でダメージを受ける。
ポーション類でもダメージを受けるため、闇系の回復術と吸血でのみHPとMPの回復ができる。
太陽光を浴びると体が重くなり、1分後には徐々にHPが減りだす。
スキル【吸血】【夜目】【状態異常耐性】【闇無効】を取得する。
夜の住人
夜間の場合ステータスが2倍に上昇する。
新月と満月の夜は上昇値が5倍になり、月が真上に登る23時~1時に上昇値10倍を誇る。
最終ステータスに誤りがあったので修正しました。
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