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Level.12 魔女の魔法

装備ができるまで街を見て回ろうと思ったけど、始まりの街ってあんまり大したものがないんだよな。

冒険者ギルド、教会、領主の館、武器屋、防具屋、道具屋、プレイヤーの店、屋台や露店、民家

大体こんなもんか。

教会は苦手だし、領主の館は次の街に行く時のクエストで行くだけだし、屋台も露店もあまり大したものがない。その他はほとんど行ったし、どうしよう。


バンッ

「きゃあっ。」

「チッ。邪魔なんだよ。」


何か態度の悪いプレイヤーがいるな。NPCではなく住人として扱えってちゃんと説明されたのに。


「お婆さん、大丈夫ですか?」

「ああ、悪いねえ。」

「いいえ。気にしないでください。それよりも、お怪我はありませんか?」

「ええ、大丈夫よ。でも、最近はあんな感じの異邦人の方たちが増えてきてねえ。神様のお告げがあったし、仕方ないとは思うんだけど。」

「すみません。同じ異邦人として謝罪します。」

「あなたが謝ることはないのよ。ただ、気にしてる人も多いしね、このまま一部の人達のせいで関係が悪くなるのは悲しいもの。」

「他の異邦人にも出来るだけ伝えておきます。」

「そうしてもらえると助かるわ。じゃあ私は帰るわね。さようなら。うっ」

「大丈夫ですか?」

「足をひねってしまったみたいでね。ポーションか何か持ってないかしら?」


ポーションは使えないから1本も持ってないんだよなあ。


「持ってないですね。お家はどこですか?おぶって行きますよ。」

「いいの?悪いわねえ。」

「気にしないでください。」


それで彼女をおぶって来たのはいいんだけど、どんどん人通りの少ない細い道を入っていくのだ。

思わず不安になって聞き返したが、「大丈夫、あっているわよ。」としか返してくれない。こんな所でNPCを発揮しなくてもいいのに。


「着いたわ。」

「ここは……」


着いたのは1軒の洋館。

それなのに、何故街から見えていなかったのか。

そう考えていると、考えを見透かしたように彼女が答えた。


「ここは普通の人には見つからない様に()()をかけているんだよ。」


魔法。

彼女がそう言ったことにも気が付かず、招かれるまま洋館に入っていった。



「こんな物しかなくて悪いけど、ここにはお客さんがなかなか来ないからねえ。まあ、私が魔法をかけているからなんだけどね。」

「魔法?」


そう。彼女は魔法と言った。

魔法は魔物か特殊な種族しか使えないはず。ということは、彼女も見かけによらず、ヒューマンでは無いのだろうか。


「おばあさんは人間では無いのですか?」

「何故そう思ったんだい?」

「異邦人の友人に、魔法が使えるのは魔物か特別な種族だけだと教わったので。」

「ああ、そういうことかい。私は人間だよ。」

「え?じゃあ何故魔法を?」

「そもそも、魔術が使えるのなら頑張れば誰だって魔法が使えるんだよ。今は失われてしまったけどね。」

「一体何故?」


「かつて魔法が栄えた時代、魔法は人々に密着していた。だが、魔法は強すぎたのさ。

魔法は便利であると同時に危険であったから様々な理由から廃れていった。戦争、魔法使いを狙った襲撃とかね。

魔物だって使えたが、人は理論を知っている。だから強かった。魔物は本能的に使っている。だから引き出せなかった。でもそこに差が出た。

人間は魔法が使えなくなり、かつての魔法を取り戻すために魔術が生まれた。

魔物は本能で魔法を使うことができるから、伝えるものがいなくとも使うことが出来た。

そうして魔法と魔術は別れたんだ。今じゃ魔法のことを知るものは少ないがね。」


「そんなことが…。」

「魔法に興味があるかい?」

「まあ、はい。無いと言えば嘘になります。」

「教えてやってもいいよ。だが、条件がある。」

「条件?」

「魔法を覚えたら、人にも教えられるようになるだろう。だが、信用できる人にしか教えてはいけない。その存在もね。

そして、それ以外の人に魔法の存在を知られてはいけない。自分が教えた相手から伝わるのも駄目だ。

この条件を守れるかい?」

「はい。」

「じゃあ、教えてあげよう。」


そう言うと、出会った時よりキリッとした顔が、また先程の顔に戻った。




──シークレットクエスト 魔女から魔法を学ぼう

街に住む魔女から魔法について聞き、魔法を覚えよう。



報酬

【魔力察知】

【魔力操作】




「じゃあ、手を取りな。」

「はい。」


恐る恐る手を握る。


手が段々と温まってきた。

彼女の手が温かいのではない。

俺の手が熱を発しているのだ。


そう考えてこの温かさを追う。

どうやら彼女の手から流れてきて体を巡り、心臓を通って、彼女の手へと戻っているようだ。


「何か温かいものを感じるだろ?それが魔力だよ。」


「次は自分で流れに逆らわず魔力を流してみるといい。」


そう言われて魔力を流す。もう少し行けそうな気がしたので、スピードを上げてみる。まだ行けそうだ。魔力が細胞一つ一つを満たすように想像をして身体に行き渡らせる。

何だか体が軽くなった気がする。


「こりゃ驚いた。【魔力察知】と【魔力制御】どころか【無属性魔法】の身体強化まで。」

「何か違いましたか?」


少々不安になって聞くと、


「いや、本来は手が温かくなるのを感じて、それが魔力なんだと教えて【魔力察知】を取得させ、ちょっと動いているのを更に揺らして動かそうとして【魔力操作】を取得させる予定だったんだが、想像以上だねえ。まさか1段どころか平気で2段以上も平気で飛ばした上に魔法まで自力習得されるとはね……。

今日のことで分かっただろうけど、魔法に大切なのはイメージだよ。魔力を動かすのだって、狙った効果を発動させるのだって、全てはイメ-ジによって決まる。

魔法についてもっと理解を深めて自分の力でここに来れるようになったらまた来なさい。そうしたらまた新しいことを教えてあげよう。」

「ありがとうございました。」

「達者で過ごすんだよ。」


そんな言葉と共に彼女も屋敷も消えていった。


「図書館利用の推薦書を書いた。これを使って知識を蓄えなさい。」


夢か現か。

あとには何も残っていない。

ただ、紅茶の匂いが漂い、新たな2つのスキルを入手した。そしてインベントリには「図書館利用の推薦書」なる物が入っている。




──シークレットクエスト 魔女から魔法を学ぼう

クエストをクリアしました。


特別報酬

スキル

【無属性魔法】

【魔力感知】

【魔力制御】

称号

〈魔女の弟子〉

アイテム

図書館利用の推薦書


を取得しました。




「ニャア。」


屋敷があったであろう所から黒猫が出てきた。


「あ、あの時の。」


そして目の前でゆらりゆらりと尻尾を2度振ると、目の前を先導するように歩いていく。

恐らく、先程のは「付いて来い」という意思表示だったのだろう。

黒猫に付いていくと、細い路地の向こうから明かりが差し込むのが見えた。

慌てて追いかけたが、もう黒猫はいなかった。

そしてここは、初めてこの街にやってきて日差しを防ぎ、あの黒猫と出会った場所だった。


「結構時間が経ってるな。」


時間を確認するともうそろそろ17時だ。

普通の図書館は17時までだから今から行っても遅いだろう。

おばあさんに言われた異邦人の態度、そしてそれに対する住人の反応、起こるかもしれない住人からの反発。忘れないうちにタクに伝えておこう。

あいつはベータでも有名だったと聞くから、発言力があるだろう。

我々異邦人は住人の世界にお邪魔しているに過ぎないのだ。

節度を持った態度でプレイしなければな。


そんなことを考えているうちに照衣さんからチャットが届いた。どうやら装備が完成したようだ。

早く行って着よう。

これで今日から執事デビューだ。


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