2話「遅刻からのご挨拶」
「まぁ。数秒遅刻だけどな。その頑張りを評価して成績は下げないでおいてあげる。」
「はぁ。ありがと姉貴」
「学校では林原先生と呼べ」
俺と佐倉さんは始業式に出た後、姉貴の元に向かい報告をしていた。
「那月。私はもう帰っていいか?まだ途中なのだが。」
「今日はホームルームだけなんだから、教室で寝てていいから終わるまで学校にいなさい。」
なんだよそれ普通の時間割だったら帰ってもいいのかよ。羨ましいな。
「ん。分かった。で、私の教室はどこだ?」
「そういう事だ。クロ案内してやってくれ。クラスはお前と同じだ。」
「えー。めんどくさい。姉貴がやればいいじゃん。」
「だから学校では林原先生だろうが!」
「った!」
なぐられた。これは体罰になるのではないのだろうか。早速PTA様にお助けを――
「これは体罰じゃないぞ姉から弟への愛の形だ」
「何で姉―。林原先生も俺の考えていることが分かるんだ!」
俺が姉貴と言わずに何とか留まったおかげで、姉貴の構えられている拳は俺の頭に飛んでくることはなかった。
「とりあえず教室への案内を任せたぞ。クロ。ちなみに案内しなかった場合分かってるよな?」
笑顔なのになぜか怖い。逆らってはいけないと脳が命令している。
「わ、分かったよ。」
キーンコーンカーンコーン
「お前ら・・・遅刻だ。」
「ここが俺たちのクラスだよ。」
「案内ありがとう。」
ガラガラガラ。
ドアを開けると先生へと向いているクラス中の視線が俺たちに向いた。ホームルーム中だった事もあるが理由はそれだけじゃないだろう。クラス・・・いや、学校一番を争う様な美少女が教室に入ってきたのだ。ついでに凡人も。
「なんだあの美少女!」
「きゃー!すごい可愛い!」
「俺の美少女メモには載ってないぞ!」
美少女メモってなんだよおい。
「お、やっと来たわね遅刻組のお2人さん。」
担任の先生がこちらを見てニコッと笑った。
「もうクラスの皆は自己紹介したから2人は今からしてちょうだい」
俺が「えー!」と口に出しながら文句を言っていると教卓前に佐倉さんが立った。
「えーと、今年からこのクラスの仲間になる佐倉白です。去年はほとんど学校に来ていなかったので私の事を知らない人ばっかりだと思いますが今年もほとんど学校に来るつもりないんで仲良くしてくれなくても結構です。ご清聴ありがとうございました。」
クラス中が固まっている中、軽くお辞儀をして黒板に貼ってある席表を確認し、自分の席に座ってすぐ伏せた。
「えーと・・・はい!気を取り直して黒君お願いします」
「あ、はい。」
俺は緊張しながら教卓前に立つとクラス中のひそひそ呟く声が聞こえて来た。
「あいつ佐倉さんと一緒に入ってきたけど何なのあれ。」
「佐倉さんと釣り合ってなさすぎw」
「何様なのあれ」
クラス中が俺の陰口を言っている中、真ん中の列の一番後ろの席に座っている奴が応援してきた。あいつの名前は確か、かすみ何チャラだっけ?去年やたらと俺に関わって来てたやつだ。
「がんばれー緊張することなんてひとつもないんだからなー!」
わかってるよ。それが分かってても緊張するだろ普通。
「えーと初めましての人は初めまして、林原黒っていいます。佐倉さんと一緒に入ってきたのはお互い遅刻をして偶然職員室で一緒になったからです。気軽にクロって呼んでくれたら幸いです。去年から同じ人は引き続きお願いします。」
「なんだ付き合ってるとかじゃなかったんだ。」
「まぁ天と地の差だもんね」
「月とすっぽん」
佐倉さんとの関係を適当にはぐらかしたが、結局俺の陰口が多いな。それに一緒の建物に住んでいることは言わない方が良さそうだな。バレない様にしないと。
「はい。ありがとークロくん。席に座っていいよー。」
席はかすみ何チャラとは離れたなよしよし。だけど隣は佐倉さんか・・・悪目立ちしたら目をつけられてしまうから目立たない様に、佐倉さんみたいに伏せておこう。
その後ホームルームは終わったが佐倉さんへの質問攻めが始まった。隣が騒がしい帰ろうにも佐倉さん連れて帰らなきゃいけないんだよな・・・。
1時間くらいして佐倉さんと俺以外は教室からいなくなった。
「じゃあ佐倉さん帰りましょうか」
あれ・・・返事がない。
俺は何故だろうかと思い顔を覗き込んでみると、そこには予想にもしていなかった光景が広がっていた。
前話から今回まで長い間の時間が掛かりましたことお詫び申し上げます。また次話の投稿も長い時間が空きそうです。