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第九十六話:どうしようもない彼の、気絶するほど刺激的な終幕、その1




それから。

タイムリミットがあるようでない中で、シャーさんのさいごになるかもしれない、本当に長々と災厄、『パーフェクト・クライム』についての対処について講義を受けたわけですが。


案の定恥ずかしいというか、やってられるかとばかりにのっちゃんが逃げ出すこと数十回もあってぐだぐだになってしまったため、僭越ながら何故かそれから英雄の卵たちとともに学園生活と言う名の青春送る羽目になってしまったのっちゃんたちのその後を、この私、マインめが語らせていただきます。

 



まず、災厄を飲み込んだ状態の黒い輪ですが。

最終的には、マナのコストを元に、結構何でもできるギフトを使って、異次元ポケット、あるいは冒険につきものの『ふくろ』的なものにしまっておくことになりました。


何でも、あの黒い太陽が落ちるレベルのダメージにすら耐えられる、とのことで。

ならば、時間が許す限りそこに置いておけばいいんじゃないかと。

長々説明を受けても、できれば災厄の昇華を回避したいのっちゃんがぼやくところまでがセットではありましたが。


それでも、いつまでもふくろのこやしではいられないわけで。

そもそも転ばぬ先の杖でしまっちゃうことになったのは。


その黒い輪を白い輪に変える方法を知っているはずの天使さん……もともと災厄をその身に秘めていた天使さんの娘さんが、この異世界での学園生活において、その素性正体を隠しているらしく、『天使ってなにですか、全然知らないですよ』と、どう見ても嘘がつけなさそうな、見てるこっちがかわいそうになってくる狼狽ぶりで天使さんであることそのものを否定されてしまったので、使い方を聞くことすらもままならなくなったことにありました。 

 


一応のっちゃんとしては、天使母の顔は覚えていて、髪や瞳の色とか時々見え隠れする背中の翼とかそっくりだからと、頑張ってその旨を伝えたりもしたのですが。

その時に限ってマナやよっし~さんを連れず、生来のコミュ症もろもろによって盛大な勘違いをされてしまい、天使の娘さんを狙う悪役的ポジジョンに収まりそうになってしまうという、今でもできれば天使娘さんには近づきたくないというトラウマに襲われてしまったため、現在黒い輪については保留と言う事になって。



どうにか、マスコット的ポジションと可愛さを武器に私達をだしにしてまずは天使さんが身の上を語ってくれる位に仲良くなろうという展開にシフトしたわけですが。

のっちゃんとしては、どうにかして避けたい『愛を以て制すうんぬんかんぬん』が、結果的に後回しになったため、まぁよしといったところなのでしょう。



実際問題、ふくろの中に入れておいて忘れかけていたせいで、更に黒い輪の中の災厄が暴走する事となり、天使娘さんは、その災厄をどうにかするために先行してこの世界にきていた事もあって。


紆余曲折、なんやかやあってまさにのっちゃんが、悪の大魔王的ポジションに(マナあたりがちゃっかりそんな勘違い被害から逃れているのがミソ)収まってしまう事になるわけですが……。


その辺りの物語は、語るも涙、語るも長すぎて一大巨編であるからして。

その語りはまた別の機会にしたいと思います。





それはさておき、続いてはよっし~さんの事でしょうか。

 

よくよく考えてというか、当初のっちゃんが異世界に来る羽目になったのは、巻き込まれてとばっちりを受けたのに由来しているわけですが。


その巻き込まれ異世界転移には、巻き込んだ張本人のある願いがこめられていました。



―――自分の大好きな、だけど『もうらしく』も敗者となってしまう運命にある子達を救いたい。



そのこと思えば、巻き込まれた私達も、そんな願いに沿って力を、意志を、自我を与えられたようにも思えますが。

のっちゃんとしては、そんな『ルーザー』を救い上げなければ故郷に帰れないといった目標というか、縛りを与えられたわけで。


もう既にご存知の通り、何だか失礼な気がしなくもないレッテルを貼られた一人が、よっし~さんでした。

 


結果的に離れ離れになっていたトゥェルさんとの再会に導いた事ではたして救った事になるのでしょうか。

しかも、当のトゥェルさんはオーヴェが化けているのです。

まぁ、その事はのっちゃん自身も知らないし、オーヴェのギフト、『愛に揺蕩いしもの(ラブシック・メイズ)』のことを考えると、トゥェルさんの意志や能力を引き継ぎ、トゥェルさんそのものだといってもいいのですが……。



問題というかなんというか、明らかにオーヴェのギフトの影響で、よっし~さんののっちゃんに対する好感度が高そうな所でした。


災厄のことや、帰ることを考えれば大歓迎ではあるはずなのに。

そこは、変なところで融通が効かないというか、生真面目なのっちゃん。


よっし~さんを救うというのはそもそも訳が分からないだけでなく、それでも悪くは思われていないだろうことは、自分によるものではなく、オーヴェというかトゥェルさんのおかげだと頑なに思い込んでいて。


だけど、トゥェルさんが今は既にマスターをのっちゃんしている事もあり、ことあるごとに積極的にアタックをかけてくる? よっし~さんがいる始末。


中でものっちゃんの心を打って揺さぶったのは、悪の大魔王になりそうになってしまったのっちゃんを、

その右腕ポジションに収まるがごとく支え、フォローしてくれたことでしょう。




既に、とっくにのっちゃんによって救われているとお互いが知ることとなるのはいつの日か。


きっと、それをお互いに知るよりも早く。

のっちゃんは、そんなダイナマイトも甚だしい彼女の猛攻にやられてしまうことでしょう。



―――それは。


どうしようもないのっちゃんの、めでたしめでたしな未来の可能性の一つ、で……。




      (第97話につづく)







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