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第八十五話:どうしようもない彼は、ベッドの下の秘密を暴き出す



「あーっと、それで、さっきも言ったんだが申し訳ない。色々遠出の準備をしてもらって悪いんだが、ここの地下に用があるんだ。ほら、よっし~さんが寝泊りしていた部屋があるだろう? できれば、一緒についてきてもらいたいんだが……」

「え? わ、私の部屋? あ、ええと。確かに元々は私の部屋じゃないけども」



一体乙女の部屋に何の用があるというのか。

そんな状況でもないし、そもそものっちゃんはそう言うのに消極的なタイプであるからして、マナが一瞬期待して色めきたつような展開があるわけないのですが。

思わず顔を赤くするよっし~さんに、のっちゃんは慌てて言い訳めいたものを述べ出します。


「あ、ああ。それだよ、それっ。よっし~さんの前の部屋主! 実はちょっと会う機会があってさ。その部屋主に秘密の隠し部屋の事をみ、いや聞いていたんだ」

「前の部屋主……『ノリ』さんのこと? 確かに、彼ならそんな隠し部屋があってもおかしくなさそうだけど」

「ひみつの隠し部屋って、それってまさか、主さまが罠にかかったやつじゃねぇの?」

「えっ? 何それ、いつの話? 聞いてないんだけど!」

「ここに、『ノーマット・レクイエム』が来て、二手に分かれた時ですかね。でもそれは……」



マナを置いて故郷へと帰ろうとしたのっちゃんが痛い目を見る事となった、死に戻りの一片。

それにより、自分しか見えていなかったのっちゃんが変わるきっかけとなったと言う意味では価値のあるものだったのでしょうが。

つまるところ、のっちゃんはそのために『冒険の書その2』をこの場所、このタイミングで据えたと言う事でもあって。


その意味を考えていると、未だに焦りのようなものが消えないままにのっちゃんは言葉を続けます。




「いや、思えばそれは罠なんかじゃなかったんだ。おれが判断を誤っただけだ。……まぁ、それを確認する意味でも向かいたい。そのためには、現家主に何も言わずお邪魔するわけにはいかないだろう?」

「なるほど、あの部屋にそんな秘密があったとは気付かなかったわ。……そう言う事なら付き合うわ~」



そして、のっちゃんの自分の言い聞かせるような呟きに。

よっし~さんもそう言う事ならばと、いつもの余裕さを取り戻して頷いて見せて。

そう言いつつも自然な感じでオーヴェ……もといトゥェルさんを、そのダイナマイトな胸元に抱き上げると。


出発仕掛けたと思ったらすぐでみんなして戻ってきた事に不思議がっている門番の一太さんを横目に。

一同は、のっちゃんの言う秘密の地下11階に向かうのでした……。




              ※      ※      ※




のっちゃんが『冒険書その2』を使って戻った時と場所が、今までより結構前であったこともあり。

加えて、来襲するはずの『ノーマッド・レクイエム』が来ていない事もあって。

何問題起こる事もなく、のっちゃんたちは地下10階、よっし~さんがその日暮らしで寝泊りしていたという部屋の前までやってきました。


 

「ごめんなさい、ちょっと待ってて。片付けてたかな~」


おほほ、なんて誤魔化し笑いを浮かべつつ、そそくさとオーヴェを抱えたまま部屋の中へ入っていこうとするよっし~さんでしたが。

 

「あ、隠し部屋はベッドの下だから」

「え? そんな所にっ? そ、そっかぁ、分かんないわけだ~」


不意にのっちゃんがぎこちなくもそんな事を言うものだから。

それがよっし~さんにもうつってしまって、何だか微妙な空気になってしまって。

それに対していじったり突っ込んだりするよりも早く、超特急で戻ってくるよっし~さん。


 

「ど、どうぞ……」


だけど妙に恥ずかしがってすぐに引っ込んでしまったから。


「……何だか初めての彼氏が部屋にあがるみたいね」

「そう言う事いうなよぉ、みとめん、まだ認めないからな~」

 

そんな賑やかしがマナとルプレから降ってきたわけですが。

当然、とでも言わんばかりに、のっちゃんは二人をスルーしてよっし~さんの後に続いて……。



慌ててその後を追いかけると。

のっちゃんとよっし~さんは既に、ギターやら古いアイドルの写真集やら雑多なプリントやらある執務室のような場所のその先、扉の形に空いているスペースはあるけれど、扉のないその向こうで何やらしゃがみこんで作業していました。

 


すぐに駆けつけてよくよく見ると。

ソファにオーヴェをとりあえず寝かせた状態で、それほど重くはなさそうなパイプベッドを動かしているのが分かります。

 

 

「わわ、ほんとだ。よく見ると地面の所に四角い切れ目があるっ」

「収納……じゃなかったんだね。これ、持ち上げると……」

「……うおっ、すげっ」


のっちゃんが一度目に来た時は、執務室のような部屋からマイナスドライバー的なもので持ち上げたようでしたが。

切れ目に気づいたよっし~さんが、少し長めの爪を使って、そんな力が入っていた風でもないのにあっさり持ち上げた事で思わずルプレが驚きの声を上げたわけですが。

その流れで覗きこむと、確かにコンクリートできた、少し急な階段が続いているのが分かります。

 


「おれが先に行く。この先はちょっと狭いからな。気をつけてくれ」

 

事実、この先を知っているのはのっちゃんなわけで。

危険がある事は確かだ、とばかりにそう言い残して一番に降りていってしまいます。

 


「わわっ、ちょっと! あたしが一番槍だっていっただろうにっ」


そうして、またしても慌ててのっちゃんを追いかける形になったわけですが。


 


「おおーっ、何だかすげぇピカピカしてんなー、あ、それに青色のシャーさんがいっぱいいる!」

「これは……ノリさんのファミリア達ね」

「確かに狭いっ、コックピットかな?」

「……ぐぅっ」

 


のっちゃんの言う通り、三人とマスコット三体で降り立つと、ほとんど身動きがとれないくらいの地下11階は。

どこかで見たような七色でとりどりな光が明滅していて。

正面にあるやはり見た事のあるコンピューターとスクリーンを除けば、ぐるっと回るように棚があって。

そこにはずらっと、青色にきらめくシャーさんの亜種のごときロボットさんたちがいて。

のっちゃんは、そんな青ざめたシャーさんたちに囲まれた舞台……陣のようなものの上に立っていたわけですが。



「ここはシャーさんの家なのか……ってぇぇっ!?」

 

何げにルプレが近づこうとしたその瞬間。


陣に沿って、立ちはだかるかのように、七色の靄のようなものが湧き上がっていって……。




     (第86話につづく)








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