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第七話:どうしようもない彼は相手を慮っても気づかれない



 のっちゃんの好きな方に行って。

 わたしはそれに従うだけだから。

 

 マナとしては、そう進言したい所でしたが。

 動かずしてのっちゃんの意思に任せた結果を考えると、さっさとイニシアチブを……主導権を握りたくなるのも仕方のない事なのでしょう。



 「はってさて、いきなりシビアと言うか、どうしようもない二択が提示されたわけですが。学校のテストとかでさ、こういう選択肢問題が出た時、まずしなきゃいけない事って何だと思う?」

 

 「うーん。……テストだったなら、問題文をよく読む、とか?」

 「あっさり正解されると、それはそれでびっくりするわ」


 

 状況が普通でないからなのか、はたまた会話の相手が知り合って間もないマナであったからなのか。

 返す刀でそんなん知るか……なんて展開になると思っていたので、マナも思わず素が出てしまったようです。

 

 何もかも受動的で、一見すると何もできないどうしようもなさを装っているのに。

 特に期待してない時に限って鋭くまともな答えが返ってくるのだから、思わず変な笑みも出ようというものでしょう。




 「……それで、その二つに一体なんの関係が?」

 「あ、うん。この場合のっちゃんの言う問題文ってのを、ギフトそのものとして考えるの」



 ―――【現に戯れしもの(リアル・プレイヤー)】。


 ギフトの中では実のところ下から数えた方がいい、ハズレギフトです。


 それを持つ転生者の、目指すべきゴールを設定する事でその先の運命を選択肢の数だけに絞る事ができる。

 ゲームのようにウィンドウサポートがあって、音声付きで、持ち主以外にも影響を与える。

 字面で判断すると凄まじく有用なギフトに見えますが、そのギフトには全てを台無しにする欠点がありました。

 

 それが、正解の選択肢以外のルートは全てバッドエンド、ゲームオーバーにつながっていると言う事です。

 

 嫌がらせか、適当に決めたか、あるいはのっちゃんの持つもう一つのギフトとの組み合わせを鑑みてなければ、あるだけで問題なマイナスギフトとも言えるでしょう。

 

 

 しかし、その『問題文』……ギフトの能力解説をよく見ればもう一つの可能性が見えてくるのです。

 



 「まぁ、これもある意味ウィンドウサポートのあるこのギフトだからこそ、なんだけど。選択肢を間違えるとどうなるのか、身に染みたでしょ?」

 「ああ。うん。……できればもう二度とあんなのはごめんだ」

 「そう、だったら選ばなきゃいいのよ。どっちかがゲームオーバーなら正解もひっくるめて両方選ばなきゃいい。そうすれば少なくとも、のっちゃんにバッドなエンドが降りかかる事はないでしょう?」

 「おぉ、すげえ。言われてみればそうだよな」



 最も、正解のルートも選ばない以上、いつまでたっても目標達成とはならないわけですが。

 これは通常ではない行動を取った場合、どんな結果になるのかを知る意味も含まれているのでしょう。

 もしかしたら選択肢を横から見る事で、どちらが正解なのか分かるかもしれません。



 プレイヤーと名がつき、のっちゃんの転生をゲームと化するギフト。

 それが真実であるのなら、バグっていない限り、いつかゲームクリアの道のりが掴めるはずだと、マナは確信しているようです。 

 



 「……選択制限時間まで、アト十五秒、デス」


 と、そこで。

 さっきまではなかった、親切にも選択を迫る、そんな声が聞こえてきます。

 


 「あ、えっと。この場合は……」

 「スルーね。見た感じここはがっこでも浜辺でもなさそうだし」


 のっちゃんは少々急かされて慌てていましたが、マナにそう言われ、そのまま時間の経過を待ちます。



 そして……。


 「選択時間が終了しまシタ。……これにヨリ次の選択肢へと移行しマス。次の選択肢、提示には少々お時間を頂くか、ポイントの移動が推奨されマス」


 聞こえてきたのは、マナにとっては思惑通りの、そんな言葉でした。



 「ポイント……なるほどね。きっとこの世界中に選択肢の出る地点が設定されているのかも」

 「ふぅん。何だかすごいとしか言いようがないな」

 「んもう。相変わらず他人事みたいなんだから」

 

 マナは頬を膨らませていますが、のっちゃんがそう言うのも仕方の無い事なのかもしれません。

 ゲーム脳のない普通? なのっちゃんからすれば、そんな不思議とんでも能力が自分のものだなんて思えるはずがないのですから。



 「ま。これが分かっただけでも一歩前進ね。となれば早速二歩目と行きましょう。まずはこの世界の住人に会う事、ね。たしかこの近くに、人の集まるところがあったはずだから」

「お、おう……」



 反対する気も意味もなく、頷くのっちゃんでしたが、それでも不安な気持ちがあるのは確かでした。

 もし、人に会ってまた攻撃されるような事があったら……と言う不安が。



 「大丈夫だってば。そんな泣きそうな顔しなくても平気よ。わたしがいるんだから」

 「……」


 

 『挑発』スキルはオフにしてあるし、そもそもそれを打ち消すスキルを持つ者がパーティにいれば発動しない。

 

 自分の事よりマナが危険に見舞われるんじゃないか。

 

 

 お互い考える事は、致命的にズレていましたが。

 今はそれに気づく事もないまま、停滞していた物語を進めるためにと、二人は微妙な距離感を持って歩き出します。



 その先に何が待っているのか。

 多分きっと、のっちゃんだけがどこでもいつまでも分からないままで……。



            (第8話につづく)








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