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第六十八話:どうしようもない彼の、我関せずが意外にかっこいい



人ごみを嫌がるのっちゃん主導のもと、人の群れを避けて避けてたどり着いたのは。

最早その体をなしていない、生まれたての廃墟のようなショッピングモールでした。


そこには、いろいろな雑貨だけでなく、食料品なども残されていましたが。

その国の……この世界の人となりであるのか、多少埃はかぶっているものの、盗って持って行ったりしている感じはなさそうで。


それでも、ある意味非現実な光景に、ルプレやマインだけでなくのっちゃんも物珍しそうに辺りを見回しながら。

来るもの拒まず状態になっている、なんとはなしにピンク色の色合いの多い世界を進んでいきます。

 



どうやらマナには、ここから向かうべき場所があるようです。

主導しているつもりが、結局マナに導かれるまま進みつつ。

マナの言う目的の場所に向かうまでにと、マナは自身の今までを語ってくれました。 



やはり後々に分かる事だから、敢えてマナは口にしたのもあったのでしょう。

今現在マナは、所謂よっし~さんの夢の世界……やり直したいと後悔している、その世界の過去を繰り返しているようで。


今の今までは。

世界を滅ぼさんとする異形の怪物、その残滓……かけらのようなヘドロ山から、無関係な人々を避難させ、滞ってしまった交通を解消しようとしていた、とのこと。

 

とは言っても、紅さんとは似て非なるヘドロ山にしても。

男装というかのっちゃんそのものになってそんな奉仕活動をしていたのも、見ていたのはデバガメしていたマインしかいませんでしたので、のっちゃんどころかルプレにもいまいち伝わっていないようでした。


それは、最近気づき始めた事ではあるのですが。

マナがよくやる曖昧表現をかっこつけて多分に駆使した物言いのせいもあるのでしょう。

加えて、言いたくないのか自覚がないのか、何故かのっちゃんに成り代わっていた事を口にしていないせいで余計に訳がわからなくなっています。



マインは、そんな曖昧な自分かっこいい、なんて思っているようなしなくもないマナを。

のっちゃんの肩口から見やりつつ、デバガメしていたことを全て詳らかにするべきかどうか、悩み込んでいました。


今の今まで、言わなくちゃいけないこと、聞かなくちゃいけないことを誤魔化して後回しにしていたマイン。

いい加減、そんな自分を人のせいにせず打ち破る時が来たのかもしれません。

なにせ、のっちゃんに関わってきそうな事柄なのですから。





「……マナさん、つかぬ事をお伺いいたしますが」

「ん? なになに? マインちゃんから話しかけてくれるの初めてじゃない? いいよ、なんでも聞いて」


手始めにとばかりに定型文。

返ってきたのは、思っていた以上に明るくて軽い調子。

言われてみれば確かに、皆の会話の中でのやりとりはあったものの、マナに限らずのっちゃん以外の人の相手は大抵がルプレであったので、こうしてまともにやり取りすることはほとんどなかったかもしれません。

ある意味勇気を出したマインを脇目にというかのっちゃんの反対側の肩でにやにやしているルプレをスルーしつつ、マインは続けます。



「……実は、わたくし自身の特性をもってお互いが分かれていた間にもここでのマナさんたちの様子を伺っていたのです。いえ、正確にはよっし~さんのお姿は拝見しましたが、マナさんは見つかりませんでしたけど」

「ええっ? どうして? あのその、結構何度も繰り返していると思うんだけど……」



まるで、のっちゃんのお株を奪うように。

そう言って首をかしげつつ尻つぼみになるマナの様子を見ていると。

やはり自覚はなかったというか、その後に続くマインの言葉すら予想だにしていないようにも見えますが。

最早ここまで来たら構わず言葉を続けます。



「その代わり、ご主人さまによく似た人物を見たのです。ちょうど、先ほどお話くださった、あの事故現場を解消せんとご活躍なさっている姿を」

「え、ええと? どゆこと? わたしはいなかったけど、のっちゃんがいたってこと?」

「……わたくしは、夢の……理想の姿としてマナさんが成り代わっていたと愚考しますが」

「おお、なーるほど。マナも主さま好きだもんなぁ、自分の手柄を主さまのものにしちゃうってやつだろ?」

「はいっ? ちょ、なに言っちゃってんのよっ! いくらあたしがアレでもそこまでじゃないって!」

「そうかぁ? 自覚ねぇだけじゃねぇの?」

「……そう言われると、ちょっと自信なくなってきたけど」



かしまし三人娘の会話に加わる気などそもそも毛頭ないのか。

話題の中心が自分である事にのっちゃんは気づいていないのか。

あるいは気づいていてあえて無視をしているのか。

恐らく後者なのでしょうが。


それより何より、そんなマナの慌てっぷりというか、何だか自爆しているような気がしなくもない様子を見ていると。

マインが垣間見た、のっちゃんによく似たあの青年は。

結局マナではあったけど、マナ自身にその自覚はなく。


マナの正体や真の姿が云々はマインの早とちりというか、勢い込んで勇気を持って聞いた割には、深い意味はなかったということになるわけですが。




「……何故、ご主人さまの姿だったのでしょう? やはりルプレの言葉通りなのですか?」

「いやいや、だから違うって。っていうか、そんな事言われたってわかんないよ。だってそれを見ていたのはマインちゃんだけなんだから」

「そうか、マナの夢想ってより、マインにとって都合のいい夢だったってことか。さすが、主大好きっこだな」

「そう言われますと、なんだかその通りな気がしてきますね……」


期せずして口から出たのは、ついさっきマナが発したのと同じような言葉。

マナが自覚がないというか、違うと言うなら、それが嘘でないのならば確かにマインが見た望むべき夢幻であったとしても否定はできません。



結局のところ。

かしまし三人娘が勝手に盛り上がって勝手に恥ずかしがっているだけの、道行の時間つぶし以外の何物でもないくだりになってしまったわけですが。

 


終始何も語らず、突っ込まず。


我関せずでいてくれたのっちゃんのその立ち振る舞いが。


せめてもの救いと言えば、そうだったのかもしれません……。



 

    (第69話につづく)









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