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第六十七話:どうしようもない彼は、当然のように人ごみが苦手




「……というわけで、巨人の体の中のダンジョンを紆余曲折あって、かくかくしかじかで仲間になった赤い人達の多大なる犠牲を払ってようやくここにきたってわけだ。結構な時間がかかったと思うけど……よく考えたら結局あたしの出番はなかったな。あいや、死に戻った事はいまのあたしにはわからないんだから、そうなって当然なんだけど」



お互いのすり合わせだ、などと言ってものっちゃん自身色々急展開すぎてうまく説明できなかったらしく。

結局死に戻り担当時々、べしゃり担当専門のルプレが簡単にこちらの今までの経緯を説明していました。



確かに、死に戻りを看過できない者達から考えると。

のっちゃんのここまでに道行きは、一度も失敗をせず正解ばかりを引き当てる超人のように見えた事でしょう。


鷹の目視点……第三者視点から見るマインにとってみれば、実のところ何度も何度も失敗した結果が今……というわけでは全然なく。


ここに入る前から危機的状況は何度かあったような気がしますが。

今度は、まるでグダグダ繰り返しているのが面倒くさくなったかのように、正しく超人的な運の良さやらもろもろがあって、死に戻りを回避していました。


実際問題100回近くやり直しているうちに、慣れてしまった部分もあったのでしょう。

逆に、『横隔膜の間』のランダム転移で、ハズレを全部引いてしまうという、今までの分を取り返しているところはありましたが。


当然、ルプレのかくかくしかじかの中には、そんなある意味のっちゃんのあるべき姿は語られていません。

別に今更というか、マナ相手に恥ずかしいもなにもないとは思うのですが、自身の力によって繰り返していたわけではなかったため、のっちゃんというよりもルプレ的に語りたくないというか、不満があったのかもしれませんが。



一方で、そんなルプレにとって都合のいいものばかりの今までの経過説明は。

そこそこの時間があった中で、それじゃあお前は何をやっていたんだ、という催促でもありました。


ルプレたちやマナにとってみれば特に時間制限などはないのですが、のっちゃんにとってみればできることなら早く帰りたいというのが常でしょうし、よっし~さんたち……この世界にとってみれば、いつ世界の崩壊が始まってもおかしくないというタイムリミットがあります。


よっし~さんの様子を見ていると、もうどうでもいいというよりまだ時間がないこともなさそうではありますが。


あまりもたもたしていると、セーブして戻っても取り返しのつかないタイミングになってしまう可能性もあります。

もしかしなくても、のっちゃんがわざわざ提示した『冒険の書』その2は、そのためだったのでしょうか。


そこまでの先見の明があったのかと、賞賛したいところではありますが。

なんだかんだいってのっちゃんのかけらであるマインにしてみれば。

そこまでは考えていなかったがどうやら別の意図があるらしい、と言う事はわかるので。


その別の意図とやらをおおいに期待して待っているとして、第三者のデバガメである程度はわかってはいるのですが、マナの今までの経過と弁明を聞くことにしました。 

 



「シャーさんにヴィロデさんねぇ。なんでかな、どちらもどこかで聞いたような気がしなくもないんだけど」

「ああ、シャーさんは何でも三倍で動く赤いのだからこの名前だって言ってたな。有名なんじゃねぇの。ヴィロデさんは知らんけど」

「なにそれ、あからさまに偽名じゃない。っていうか、紅の見た目のロボットや足なんだよね。やっぱりどこかで会ったり見たりしてるような気がしなくもないんだけど……あ、そか。足じゃなくて手なんじゃないの、何だか名前的に」


かと思ったら、誤魔化しているつもりなのか、こちらの話題に乗っかっていきたい様子。

それに対し、ルプレは律儀に相手をしていましたが、どうやら周りの状況がそれを許さなかったようで。

 


それまで、意外とというか結構似合う青い制服姿で倒れていたマナが目を覚ましたからなのか。

どう見ても小悪魔妖精と、おすましドールに、称号はついていなかったけど最近の流れで紅の王と呼ばれてもおかしくない出で立ちののっちゃんがそんなマナに近づいていたから目立ってしょうがなかったのかもしれません。


自分本位で、いろいろな声をあげたりしながら右往左往していた夢の世界のエキストラ……有象無象な人々が、こちらに注目しだしているのがわかります。

 




「……おい、そんな事より別のところに移動しよう。ここはなんだか面倒そうで叶わん」

「あ、うん。そうだよね。人も多いし、一旦ここを離れよっか」

「おお、何だ何だ、いつの間にやらずいぶん人気者だな、何やらかしたんだよマナ」

「やらかしたってなによ。そこは、事故現場で誘導とかの指揮を取って活躍したけど疲れて休んでたんだね、くらいのプラスのイメージでいてくれなきゃ」


マナの本意を引き出すため、というわけではないのでしょうが。

からかうようなルプレの言葉は、結果的にうまいことボヤかせることに成功したようです。


それは確かに、デバガメしてみた、よっし~さんの見ていただろう夢で垣間見た、まさにこの場で奮闘していた警官姿の男性の行動そのもので。



―――やっぱり、あの人はマナが成り代わっていたのですか?


それとも、もしかしてこちらは知らないのにそっちは一方的に知っていた……マナの本当の姿なのでしょうか。


 

マインは思わずそう問いかけようと思いましたが。

ルプレとわいわいやりながら、のっちゃんの人の多さに焦り出している様子を見た事ですぐさま移動を開始した事でままなりませんでした。

 


それは、引っ込み思案であまり話すのがうまくないマインの。

人に突っ込んだ事を伺う事がうまくできない、

のっちゃん由来の(人のせい)悪い癖が出てしまった結果でもあって……。



 

     (第68話につづく)









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