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第四十五話:どうしようもない彼は、勘違いで初死に戻りしたのを思い知らされる



そのまま勢いこんで、それじゃあと巨大な足跡を追ってその先へ向かおうとした時です。

 


まるで、こちらが海の向こうへ向かう事を悟ったかのように。

その進行を妨げようとするものたちが現れました。




「……ん? 何だ、何か来るぞ? あのマグマの人型がおっかけてきたのか?」



外の世界の具現化して、正しく小悪魔妖精のごとく自由奔放を地で行っているルプレではありますが。

ルプレ自身……【リアル・プレイヤー】と言うギフトの特性上、のっちゃんは未だ使った試しはありませんが、地図機能のようなものがついているため、索敵にはもってこいなのです。


故に一番にそんな声を上げたわけですが、当然というかマインも含めてマナやよっし~さんもそれに気づいていました。

 

よっし~さんあたりは、ある程度予測していた部分もあったのでしょうが。

ボロボロの虫食いのような建物の向こうから、明らかにロケーションにあっていない、ルプレに言うような派手派手しい真っ赤な人型が顔を覗かせたからです。

 



「う、嘘だろ? なんてしつこいんだっ。し、しかもいっぱいいるじゃないかっ」


故に、さっきまでの心内のかっこいい宣言はどこへやら。

ルプレの言葉にしっかり反応してくれたのは、のっちゃんばかりでした。

 

のっちゃんにおいて、この世界での初めての戦闘らしきもの。

自らの身に秘めしスキル、【挑発】のえぐさが身に沁みていたからこそ、しっかり印象に残っていたのかもしれません。

 



「……いや、脅かすなよっ。どうみてもあれ、赤いけど燃えてないじゃないか。動きも鈍いし」

「ああ、さすがに災厄と比べちゃうとねぇ。でもでも、おんなじくくりなんじゃないの。はぐれファミリアってやつだって? 結構似てるし」

 


のっちゃんが言うように、緩慢な動きで囲むように集まってくるそれは、あの時のマグマの人型と比べるといささか迫力にかけるようでした。

言われてみれば全然違うなとルプレが舌を出していると、マナがフォローを入れるようにそんな事をいいます。

 

明らかな敵性にすっかり囲まれているというのに、のっちゃんも含めて大分余裕そうなのは、やはりその例のマグマなガーディアンを目の当たりにしていたからでしょうか。


何気に災厄とあいまみえた事があるという事実に、よっし~さんは大層驚いていたようですが。

マナの言葉に正解よ~とばかりに頷きます。


 


「たぶん、命令系統を失ってもこの先にあるものを守るように言いつけられていた子達の、成れの果てなんだと思うわ~。見た目の通り、『紅』と呼ばれるタイプのはぐれファミリアね~。その中でも細かい種類があって、結構厄介な子もいるのだけど、今のところはノーマルの『紅』ばかりのようね。……忠実にお仕事をこなしている所悪いけれど、いい加減解放してあげましょうか」



この先を守るように。

そんな命令を与えられ、その命じた主を失って一体どれほどの時間が経っているのか。




(……下手すればあたしたちのいくすえのひとつか。ぞっとしねぇな)

(実際は、ご主人様と一緒に戻っているのだから、机上の空論ですけどね)

 


ルプレの呟きは、のっちゃんが死に戻りして残された世界線の自分たちと、主を失いながらも命に従い彷徨い続ける彼らを重ね合わせたが故なのでしょう。


実際はわたくしたちごと戻されているので、ありえないというか、自覚できようがないのですが。

恐らくは、だまくらかして残された時のマナのリアクションを思い出したのでしょう。


ルプレとマインによる心うちの話……『念話』でのやりとりなのでマナには届いてはいませんが。

聞いていたら黒歴史を指摘されて真っ赤になっている人のような、それこそリアクションをしてくれたに違いありません。




「そうか、だからあの時……」

 

一方、ルプレとマインの会話が筒抜けであろうのっちゃんは。

何とも言えぬ生暖かい視線の中、久しぶりの戦闘ね! とばかりに張り切って前に出ようとするマナを見て何かを思い出したらしく、しみじみと呟いていました。

 

恐らくは、この世界に来た始まりの時、『挑発』スキルを止められずに狙撃されて死に戻りした時の自分を思い出したのでしょう。


―――あの時、自分は彼らと勘違いされていたのだと。

 


そう考えると、のっちゃんが死に戻りする様が、赤い宝石のように砕け散る彼らと重なってなりません。


いろんな意味で動けないのっちゃんと私達を脇目に。

張り切るマナと並ぶように、よっし~さんが言葉通り介錯するがごとく、『紅』達を屠っていきます。

 

驚く事に、ふたりして何か魔法的なものを使うのではなく、徒手空拳です。

力を失っているから気にかけようなんて考えていたのが烏滸がましいくらいの活躍っぷりで。

 

粘土よりも柔らかいのか、見た目にそぐわず力持ちなのか、あっさりと散っていく彼ら。

そのさまは正に、命から解放されるためにぞろぞろと並び立っているようでした。


何だか自分と重なるから、なんて戸惑ってる場合じゃなさそうで。

 


「ご主人様、わたくしたちも参戦しましょう! 覚えたスキルを試す機会ですよっ」

「なんだか身につまされるけどなぁ。せめてあたしらの糧になってもらうか」

「……わ、分かった。とりあえずやってみる」



のっちゃんと私達は。

置いていかれるわけにはいかないと、既に先行してしまっているマナとよっし~さんに続くのでした。


……まぁ、実際問題、ルプレもマインも息込んではいますが、まったくもって戦う術がないんですけどね。



 

         (第46話につづく)








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