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第四十四話:どうしようもない彼は天使を求めて巨大ロボについていく



次にセーブする機会があれば、今までとは別のところにセーブする。

ゲームとしては裏技でもなんでもありませんが、さっきも言ったようにそれらはルプレの領分であるので、マインは度重なる使用で実は既にレベル3まであがっている『念話』を、当のルプレに使ってみることにしました。


それは、熟し経験を積む事で、念話の範囲や伝えたい相手を指定できるようになるのではと予想したうえでの行動で。




(―――えーと、こちらマイン。新しく覚えたスキル、『念話』のテストも兼ねてご主人様からのご希望をお伝えします)

「……っ(うおっ、びっくりしたっ。いつのまにこんなの使えるようになったんだよ。けっ。自分だけうまくやりやがってぇ。……ま、まぁ、それは後だ。主さまからのお願いだと? おめぇからの又聞きなのはしゃくだが、聞いてやろう)」



のっちゃんが率先して女性の会話に入りたがらない事を理解し出しているのか。

特に話を振るでもなく後ろに従えたまま自然がはびこり陽光がいくつも差し込む校舎内へとお邪魔していた時分。

これから向かうのは、サプライズの前に天使が住んでいたお屋敷跡だそうですが。


変わらずマナに抱きしめられたままでよっし~さんの案内とこぼれ話に耳を傾けていたルプレは。

びくりと飛び上がるもなんとか声を出す事なく、高い順応性をもって、だけどたいへん偉そうにそう返してきました。




(では、僭越ながら。貴女が管理しているセーブについてのことです。今までは特に指定がなかったので上書きしていましたが、今回ご主人様は思うところがあるらしく、新しく冒険の書を作りたいとのことです。お願いできますか?)

(おお。冒険の書その2だな。お安い御用だ。んじゃここで新たにセーブしちゃうけど)

(ええ、よろしくお願いします)

(っていうかよお、オメエと会話できるんだから、主さまともできるんだろ? 冒険の書その2にセーブするぞ、いいんだな主さま)

「……」



当然というか、大変申し訳ない感じなのですが。

そんなルプレの懇願めいた言葉はのっちゃんには届いていません。


念話のレベルは確実に上がってはいるのですが、マインですらこうして触れ合っているからこその成せる業なのです。

何だかんだ言って一番手のルプレでも、まだまだのっちゃんとの親密度が足りないと言う事なのでしょう。



(おーい! 聞いてんのかぁ! それっぽく空なんか見上げつつ黄昏てんじゃねぇぞっ!)

(……残念ですが、貴女にはまだ親密度が足りていないようですね)

(かっ、悲しそうに言うなぁ! ちょっと自覚しだしてるんだから……泣くぞおい)



ですので、正直ありのままの現実を突きつけるのは大変忍びないのですが。

だからといってマインの方は足りているのかというと必ずしもそうでないということは、なけなしのプライドもあって口にはしませんでしたが……。


 



(とにもかくにも、新しい冒険の書にセーブが完了しましたよ、ご主人様)

「……っ(あ、ああ。そうか。これで少しは大胆に動けるな)」



確認のためにルプレの手柄をかっさらう悪い自分を自覚する中、返ってきたのはなんていうか正にのっちゃんらしくない代表のような言葉で。

 

一体これからどのような大胆な行動をしてくれるのか。

もう少しだけ、この状況でいられる時間が長くなる事を、ルプレには悪いと思いつつ内心で望むのでした……。




                        ※




「はーい、ここがサプライズ……天使が暮らすお屋敷があった場所よ~」

「ほぇ~。こんなでっかい学園の中に住んでたんだ。家族ぐるみの経営だったのかな……っていうかものすっごい広い均されたグラウンドにしか見えないんですけど」

「ええ。『あった』、場所だからね~」

「その言い方だと、あのぱーふぇくとなんちゃらで更地になったってわけじゃないってことか?」



流石に年月が経っているからなのか、先ほどの駐車場とは違い根足が強そうな雑草がいくつも連なってはいますが。

ぼろぼろながらも周りを背の高い建物に囲まれており、地面の部分がなんとなくすり鉢状にへっこんでせいもあって、グランドと言うよりは古のコロシアムのような体をなしています。


ルプレが言うように、ここに来るまでの町並みで時折見かけたような、黒い太陽の被害がここだけピンポイントで襲うというのはなさそうに思えました。

 



「そうよ。ここは……ここにあったお屋敷は、『パーフェクト・クライム』の被害から逃れるように、その影響がないところまで歩いて移動したと言われているわ。さっきのっちゃんが言ったように、それこそ巨大なロボになってね」

「いや、そんな馬鹿な話が……」



ついさっき、なんでそんな言葉が自分の口からついてでたのかわからないくらい。

至極真面目にそう言うよっし~さんの言葉は、あまりに荒唐無稽で簡単には信じられないものでした。


おかげで、初めてよっし~さんがさりげなくものっちゃんの名前を呼んでくれたのに深く突っ込む事もできません。




「あったのよ。私も直接見たわけじゃないけどね~。そしてその巨大ロボは、果たしてどこに行ったのでしょうか~?」


正しく、それこそがサプライズだと言わんばかりに。

よっし~さんは誘導するみたいに視線を彷徨わせます。


 


「……なるほど。あちらに見える二つの吹き抜けは、巨大な足跡って事ですか」

「おお! 言われてみればっ。何であっちの方空いてるのかなって思ってたんだよな。もうあれが巨人の足跡にしか見えないぜ」



案の定しっかり誘導されて、マインとルプレは天然自然満載なコロシアムと化したお屋敷跡、奥手のところに、明らかに造られたのではない、何かが無理やり壊しながら通ったかのような穴と言うか、出口があるのを発見します。


普段ならきっと、二人してふらふらと近づいていくだろう興味深いロケーションです。

現在は、二人して結果的にしっかりホールドされているので、そうはなりませんでしたが。


 


「あっちの方向っていうと……もしかして海かな。この学校って随分と海が近いみたいだし」

「正解よ~。海の深い深い底に潜り込めば、黒い太陽の被害も防げるかもしれないって思ったんじゃないかしら。……そこに、この世界の危機を救うために、この世界を脱出したっていう天使がいたはずなの。何か足跡が残っていればいいけれど~」 



そうして。

そこでようやく、のっちゃんがここへ来た理由、帰るための手がかりをよっし~さんは口にしました。



はたして、言われてみれば微かに潮の香りがしなくもないその向こうに何があるのか。

のっちゃんの願う帰り道を示す何かがあるのか。

 

 


「……それじゃあ、うん。早速向かおうじゃないか」

 

 

様々な興味をかきたてるワードがあったからなのか。


自ら進んでそう言うくらい、のっちゃんのやる気は満ち満ちていて……。





           (第45話につづく)







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