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第四十二話:どうしようもない彼はテキトーなセリフが適当になってしまう








そして。

今現在進行形で使い続けている事で密かにレベルが2になっている『念話』をおいて最後に残ったのは。

『九十九神』といった聞きなれぬスキルです。


 


(これは……もしかしてこの車、よっし~さんの能力なのか?)

(恐らくは。よっし~さんの『曲法』なる異能の力が込められたこの車の触れた事でスキルを得たのでしょうが……)



これは後々知り得た事ではありますが。

この世界の登場人物達が扱うその能力は、大まかに分けると5種類になるようで。

よっし~さんが好んで使っていたのは、前々から話題にあがっていたファミリアなる、マイン達と似て非なる使い魔的存在を召喚するものだったのですが。



ここで問題というか、『念話』を覚えてまで話したかったのは、実はこのスキルにありました。

 



(……九十九神ってあれだよな。年経た器物に取っ付く妖怪だろ?)

(ええ、その認識で間違いないかと。ここからはわたくしのあくまでも予想ではありますが……本来九十九神が顕在化するためには多くの年月を必要としますけれど、よっし~さんの能力は、他の物を代替としてそう時間がかからずとも愛着ある道具が意思を持つ……ファミリアとなる能力だと思うのです)



それなのに関わらず、愛され名までつけているこの車は、ルプレがかろうじて気づくくらいに力が弱かった。

単純に考えれば、ファミリアになったばかり……能力を発動したばかりであるから仕方ないといった結論になるわけですが。



(……ふーん。その割にはルプレやマインみたいに意思があるのかないのかわからないんだな。喋る感じもないし、ルプレに言われなかったら普通の車にしか見えないけど)

(そうですね……よっし~さんのわたくし達に対する反応を見ていますと、本来はそれこそわたくし達と同じような人型のアバター……ファミリアになれるのだと思います。だけど、現状そうはなっていません。それすなわち、先にも述べましたが、よっし~さんにその力がほとんど残されていないからなのでしょう)



この世界における物語はもう終わってしまったから。

マナの言う所の『ルーザー』であるよっし~さんには、能力を使って戦う力が残されていないのかもしれません。


だけど、よっし~さんはそれを隠し、周りに見せようとはしません。

無理をし、虚勢を張っているのです。

故にこそ、このような内緒話をしてまで、のっちゃんに気にかけてもらおうと思い立ったわけですが。


よっし~さんを救い上げる事は、のっちゃんの利になる。

そんな打算が働いている事は、包み隠さず否めませんが……それこそ野暮な事はわたくしの心内に留めておくことにしましょう。



 

(……よっし~さん、マスコット的なの好きそうだもんなぁ。それを生み出す事が出来る力があるならとっくにやってるはずだよな。でも今は、何でもないふりをして、だけどできないんだ。……もしかしたら、離れ離れの行方不明になっちゃったのかもな。おれができることはきっと、そんな『彼女』を探す事なのかもしれないな)

「……っ、それは」



今度は、思わずマインの方が驚きのあまり声を出してしまいました。

幸いにも、前の席のかしまし三人娘はこの世界の流行音楽に夢中で気にした風ではなかったようですが……




(……確かによっし~さんは、ご主人様がわたくし達を……複数従えていた事を感心していましたね。なるほどです、そう言う考え方もあるんですね。盲点でした。それなら確かに力を失い力を感じない理由も納得できます)

(あ、いや。何となくそう思っただけなんだけどな。そんな感心されるような根拠があるわけじゃないんだが……)



のっちゃんは誤魔化すようにそう言ってぺたんこの髪をかき、星屑を舞わせていましたが。


言葉通り余りにも唐突に、適当に口にしたようなそれは、真実をついているのかもしれません。


まるで未来……この物語の道行きを悟っているかのような。

あるいは、天啓とでもいうのでしょうか。


もしかして、それこそが名も分からないオーヴェのギフトなのかも。

そう思ってしまうくらい、のっちゃんの唐突な冴えに、ある意味畏れのようなものを抱いていて……。


 


(おい、急に黙るなって。なんでおれそんな事言ったんだって、自分でも不思議なんだからさ。……ああいや、よっし~さんを助けるっていうのもさ、そう言うわかりやすいのならいいなって思ったのかもだけど)

(すいません。ご主人様の冴え渡る頭脳に感じ入って声も出なかったものですから)

(……そう言うおべっかはいいっての。それこそとてもじゃないがおれの分身なのか疑わしくなってくるぞ)

(ふふ。ご自分の才にご自覚がないだけではないですか? わたくしは間違いなくご主人様の分け身ですから)



明らかに照れて、頬をかいて七色のゴキゲンな星を飛ばすのっちゃん。

そんなのっちゃんの心内の言動が余りにも突拍子もなくて何だか話題がそれてきているようにも思えましたが。


ある意味、これからの方向性がはっきりしたのはその瞬間で。





「ふふっ、ついたわよ~。どうやら学校敷地内の駐車場は無事みたい。広い校内もそうだけど、あれをみたらみんな驚くんじゃないかしら~」

「これがっこかよ、遊園地的なのじゃねーのか、いや、建物結構壊れてっけど」

「お金持ち学校みたいだねぇ。なにかな驚くのって。もったいぶられると期待しちゃうね、のっちゃん」

「……あ、おお。そうだなぁ、巨大ロボットの発射基地でもあるんじゃないのか」

「…………あらら、凄いのねぇ。ほぼ正解よ~」

 


どうやら目的地である、『信更安庭学園』についたようなのですが。

十中八九話を聞いてなくて本当の意味で適当な返事をしたはずが、またしても的を射てしまったようで。



マジかとシンクロしてあっけにとられるルプレとマナを脇目に。


ミラー越しの驚きと期待を多分に含んだよっし~さんの熱ぼったい視線が印象的で……。




          (第43話につづく)








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