第四十話:どうしようもない彼は忘れかけていたステータスを楽しむ
(って言うか、それならお……マインやルプレはどうなんだ? その力、魔力とかか。あるいは生命力か? おれ、それの渡し方以前に使い方も分からないんだけど)
(はい。わたくしたちの存在の維持に関しては、特に気にかけていただく事はございませんわ。本来、ギフトやスキルを使役する際にはいわゆるMP的なもの……精神力を消費するのが普通ですけど、常時発動型のわたくしたちは、勝手ながら必要な分だけご主人様から自動的に頂いているのです。幸いわたくしとルプレは燃費がいいので、ご主人様に大きな負担がかかるほどではありませんわ。実は、睡眠中などはアバターを解除してますしね)
(ほ、ほう。そうなのか。ATMみたいで楽でいいな)
恐らく、話しているうちに長すぎてしまって、きっと半分位スルーされてますね。
そんならしいのっちゃんに苦笑を浮かべつつ。
ならばと本当はオフレコにするつもりだった事をマインは口にしました。
(とはいえ、本当の所ご主人様の場合は、精神力よりも多大なる死に戻りの繰り返しで、HP……生命力の方を余るくらい頂いている、というのもあるんですけどね)
(……ああ、なるほど。そうなのか。なんつーか、そういう意味でも無駄死ににならなくてよかったのかもな)
その辺りの細かい徴収方法には興味がないのか、その代わりにそう言えばそうだったなと、しみじみのっちゃんは呟きます。
それが存外疲れきった感じで。
気にしなくていいと言うつもりで口にした言葉でしたのに、かえって気負われてしまった様子です。
そう言う意味ではなかったのですがと、マインは慌ててフォローしました。
(無駄にになどなってませんよ、その繰り返しは経験となりご主人様の実となっているはずです)
(そうかぁ? 正直実感はないけれども)
(そうですって。ほら、ステータスご確認なさってみてください。目に見えて実感できると思いますよ)
(あー、そう言えばそんなのあったな。すっかり忘れてたわ。ちょっと見てみるか。……えっと、『ステータス閲覧』?)
そうだろうとは思っていましたが。
やっぱりのっちゃんはステータスの事を失念していたようです。
それでも、心内でそらんじてもステータス閲覧は発動するようで。
相変わらずの自信なさそうな疑問符の中、のっちゃんの頭上目上すぐ近くに、青く透けるお馴染みのウィンドウが現れました。
《 名前:『のっちゃん』
職業:異界の旅人(異世界人)
状態:平常、微興奮
生命力:178/178(+100)
精神力:1630/1808(+1200)
攻撃力:16/16(+3)
守備力:11/11(+3)
敏捷力:230/230(+100)
知力:30/30(+10)
運力:30/30(+10)
取得スキル
完全言語把握能力(レベル∞)
身体能力向上(レベル3)up!
ステータス鑑定(レベル2)
逃げ足(レベル5)up!
挑発(レベル∞)up! off
身代わり(レベル3)up! off
空間転移(レベル1)new!
精霊化『火』(レベル1)new!
飛翔(レベル1)new!
部分獣化(レベル1)new!
氷魔法初級(レベル1)new!
自爆(レベル1)new!
九十九神(レベル1)new!
念話(レベル1)new!
取得ギフト
『星を撒くもの(スターダスター・マイン)』
『現に戯れしもの(リアル・プレイヤー)』
『#$$レ+*‘レ&#|¥ラ¥(~*#グ・%%ル&’#“ダ&=+*ー)』 》
「おいおい、なんかめっちゃ増えてるんだけど」
(……本当に忘れていたみたいですね。新しいスキルが増えている割に、ステータス鑑定レベルは上がっていませんし)
こう言うゲーム的要素に興味がないように見せかけて興味津々なのっちゃんは、心なしか嬉しそうに青いウィンドウを見ていました。
構い構われたがりなマナやルプレが、心内ではなくつい声に出してしまったのっちゃんに反応するかと思いきや、恐らくかつてのこの世界のよっし~さんが好きだった音楽なのでしょう。
それに対して何とも珍しくもうきうきで解説しているよっし~さんに耳を傾けているらしくリアクションはありませんでした。
とはいえ、のっちゃんがウィンドウを出して確認しているのは分かっているようなので、気を使ってくれたのもあるのでしょうが。
(職業つきましたね。この辺りの仕様はわたくしもよく分からないんですけど……攻守以外の値は、まぁ順調に上がってるといえますか)
(精神力だけ高いな。これがようはMPなんだろ? これだけあれば二人にくれても余裕があるわけだ)
死に戻り……というか、セーブポイントから再開してそれほどたっていないので、マインやルプレの維持のために多少精神力が減ってはいますが、当然のごとくのっちゃんは元気いっぱいのようでした。
多少興奮しているのは、久しぶりのステータス開示のおかげでしょうか。
確かに、基本値の上昇はもちろん、いくつも新しいスキルを覚えていて。
のっちゃんの特性というか、類まれな才能が手に取るように分かるようでした。
(特に鍛えていない方の平均値が二桁だそうですから、流石はご主人様、ですね。能力値だけでみると、素早さを生かした後衛特化型でしょうか。それこそ、魔法的なものが使えれば今後の戦術の幅が増えそうですけど……お気づきですか、ご主人様。新しく得たスキルに、ご主人様の特性が反映されている事を)
(おれの特性? いや、確かに知らないうちに知らないの増えてるけど。これって勝手に増えるもんなのか? あ、それがもしかして特性ってやつか。……一見規則性はないように思えるけど)
しばらく見ないうちに、新しく増えたスキル。
その理由を述べよ。
のっちゃんにしてみれば、大好きな物語のような展開だったのかもしれません。
のめり込むように、心うちにまで呟いて答えを出そうとしていました。
マインとしては、前置きみたいなものですぐに解説するつもりだったのですが。
折角ですのでのっちゃんの答えを待つことにしましょう。
(第41話につづく)