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第三十四話:どうしようもない彼の、『中の人』たちの座談会



「うおおおぃっ! 何してくれてんだてめぇっ。マジかよ! みつかっちゃったのが恥ずかしいからって死に戻りしちゃうんかーい! ありえないだろおぉぉっ」

「……」



かくなる上はこの身をもって、などと思っていると。

先程セーブした時点に戻るよりも早く、時の狭間……いわゆる私達の待合室のような場所で。

開口一番勢いのある、七色の髪を後ろ手にシニヨンに纏めた小悪魔風妖精、ルプレのツッコミが炸裂します。



はっとなって辺りを見回すと、しっかりとベッドまで用意してあって。

寝こけている菫色のロングウェーヴの髪の、天使の羽根つき美少女、オーヴェの姿も見えます。



ルプレの大声に、僅かにうるさそうに眉を寄せたような気がしましたが。

それより何よりルプレの言いようは聞き捨てなりませんでした。




「べ、別に恥ずかしかったからじゃありませんよ! あのイレギュラーが危険と判断し、緊急避難しただけですっ」

「ああん? 本当だろうなぁ。……いや、確かにあのにゃんこ、どこか危険な感じしたけどよう」



勢いの割にはちょろい……ではなく、ルプレも危険さは感じ取っていたのか、納得してくれたようです。



「でもおめーの存在、さすがの主サマも気づいちまったぞ。どうすんだ? 先に出ちまったあたしの言う事じゃねーけどさぁ」

「……仕方ないですね。ここの管理は寝ているオーヴェでもできるでしょうし、わたくしも出ます」

「まぁ、それしかねえよなぁ。いきなり理不尽にもヤっちまったんだ。それ相応の責任取らなくちゃな」



文字通り蚊帳の外……いや内ですかね。

我関せず寝ているオーヴェの頬に指をめり込ませつつ、随分と調子に乗った言葉を投げかけてくるルプレ。


「仕方なかったんですってば。まぁ、直接謝らなくてはいけないですしね。誰かさんが早まったおかげで、出ていくハードルが下がっているのは幸いですが」

「はいはい。あたしだって反省してるよ。でも仕方ない、だろ?」



生まれながらにして主のために、あるい自分のために。

同じ言葉がついて出て、思わず顔を見合わせ笑ってしまいます。




「ただ一つ、問題があるんですよね」

「あん? なんだよそれは」

「わたくしが出てしまうと三人称だった地の文が、主役でもヒロインでもないものの一人称になってしまいます」

「……すまん。言っている意味がわかんねえ」

「こちらこそすみません。分かってて訳の分からない事を口にしました」


あなたはそうしてピュアなままでいてください、というのは少し表現がずれているでしょうか。



「……ん? そろそろセーブ場面に戻るみたいだな」



そう言う可愛らしき七色だけど黒っぽい妖精さんが、明滅を始めます。

自身を省みると、同じく現世へ向かうためなのか、外出用に作られた、箱入りお嬢様風金髪ドリルな見目をした、まさに動く人形リビングドールと呼ぶにふさわしい自身のアバターが明滅しているのが分かりました。



どうやら今回の死に戻りの下手人が、誰だか分かっているようで。

やはりもう逃げ隠れする事は叶わないようです。

『ご主人様』が『わたくし』を欲し、呼びかけているのならば、それに答えねばなりません。




「仕方ないですね。オーヴェ。私達の終の棲家、その留守番は頼みましたよ」

「…………くぅ」


一足先にルプレは戻り、声をかけた菫色ウェーブの天使な眠り姫は。

それに応えるかのように、一つ寝返りしてみせました。



これから時が過ぎゆく中で、彼女が求められ外に顕現する事はあるのでしょうか。


―――【リアル・プレイヤー】と、【スターダスターマイン】。

そして、未だその名を口にできない三つ目。


ステータスで存在の確認はされたでしょうが、恐らくのっちゃん……ご主人様が彼女に気づく事は難しいと思われます。



ランダムで適当に決められたように見える私達ですが。

実の所三人三様でご主人様そのものであり、あるいは願いの形であると言えます。




魂が震えるほどの冒険を。


マイナスばかりであった自身をプラスに変える。


……そして、自身以上に大切なものを手に入れる事。



求めこいねがっていながら、色々なしがらみの中。

のっちゃんが『どうせ』で拒否し続けた願いたち。



オーヴェが担当するギフト。

その願いは、何度死しても求めたいのに、その実天邪鬼で拒絶し続けるものである一方で。

異世界を旅する事となったご主人様……のっちゃんの宿命でもあって。




「いつか……必ず。貴女を欲するようにしてみせますから」


それが、自分勝手に死に戻りさせてしまった事への償い。

最も、のっちゃんからしてみれば、大きなお世話で償いにはならないかもしれませんけど。



とにかく、わたくしの出番……顕現する瞬間です。


地の文は……まぁこのままでもよろしいでしょうか。

顕現するのは分身……と言うわけでもないのですが、人型のアバターですしね。


二人称風だったものが第三者視点、モブの一人称に変わったのだと判断してくれればよろしいでしょうか。




とにもかくにも。

まずはのっちゃん……ご主人様への挨拶と、いいわけをかんがえなくちゃなりませんね。




          (第35話につづく)








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