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第三十一話:どうしようもない彼は、暴力系ヒロインお断り



「あっ」

「準備でき……って、えっ?」

「ごわぁっ!?」


言葉通り準備ができたのか、音を立てずにやってきたよっし~さんとのっちゃんは正面衝突する羽目になってしまいました。


これが噂の主人公補正ラッキースケベと言うものですか。

本来なら、あらゆる面で力に勝るよっし~さんに弾かれて吹っ飛ぶなり、カウンターをくらってノックアウト=死に戻りしてもおかしくなかったのですが。


よっし~自身のっちゃんの事をルプレと同じくマナのお付きのもの……ファミリア的存在として、あまり意識していなかったせいもあるのでしょう。 

ある意味人間らしい突然の(星を飛ばしながらの)行動に、対応できなかったのです。



よって、二人はなんの奇跡か、折り重なるように倒れる羽目になりました。

幸か不幸か、旅用の大きめなリュックを背負っていたよっし~さんに、それほど衝撃はなかったのですが。

押し倒すような形となり、至近距離で二人の目が合ってしまいました。




「……っ。どうして、そんな悲しいんだ?」

「っ!?」


ほとんど咄嗟に近い、そしてそれがよっし~さんに対して口にした、はじめてののっちゃんの言葉。

それは、よっし~の清濁合わせ飲んだ、壮絶な彼女の人生を映し潜む瞳の事を言っていたのでしょう。



辛い事をそこに全て押し込めて、繕って生きている。

それを指摘されたようで、よっし~さんは動けません。


すぐに跳ね除ければいいものの、正直そこで初めてちゃんとのっちゃんを一人の人間として認識した、という申し訳なさもあったのかもしれません。




「どうすれば……」


その悲しみを無くす事ができるのか。

果たして、続く言葉はそんなのっちゃんらしくない殊勝なものだったのでしょうか。


答え合わせをしようにも、それは傍から見ていて絵面に耐えられなくなってしまったマナによって止められてしまったので、それもままなりません。




「ちょっ、ちょっと! 何してんの、のっちゃんってばっ。はなれーなさーい! ごめんねよっし~さん。大丈夫だった?」

「まったく、ぼーっとしていたと思ったらこれだよ。ま、今のはぶり……マナのやつも悪いけどなあ」



まるで猫持ちポイント(首の後ろの部分)をつまむようにして、見た目に反し軽々とのっちゃんの首根っこを引っつかみ立ち上がらせるマナ。




「……す、すまない」


そこでようやく状況を把握したのっちゃんは、流石に素直に頭を下げます。


なるほど、これではマナのお付きのファミリアだと思われても仕方ないかもしれません。

ルプレの呟きも一理あるなと思っていますと。

同じく我に返ったのか、笑顔の仮面を付け直し、大丈夫よ~と誤魔化しつつよっし~さんも立ち上がります。




「でもびっくりした~。まさかわたしがかわせないとはね~」

「ほ、ほんとすいません。……周りが見えてなかったもので」

「のっちゃん、だっけ? てっきりマナさんのファミリアだと思ってたけど」

「いや、違います。成り行きで一緒に行動してるだけっていうか」

「ちょいちょいっ。なりゆきって! つっけんどんすぎでしょっ。可愛い美少女案内人捕まえてーっ」


 


一見、よっし~さんは廃れてきている暴力系ヒロインのようでしたが、ラッキーに対するお約束の報復などはなく。

さっきまでどう会話しようかと悩んでいたのが嘘のように会話が弾んでいます。

これもある意味、のっちゃん的主人公補正なのかもしれません。




「えっと、じゃあ昔からの知り合いってわけじゃないんだ?」

「はい。なんかいきなり現れたというか、知らない人ですね」

「うー。のっちゃん、ひどいぃっ」


しかも、のっちゃんったらわざと(わざとですよね?)マナをからかうような余裕を見せているではないですか。


吹っ切れたのか、未だ接触のショックでパニクってるだけなのか。

半泣きのマナには悪いですが、取り敢えずいい方向には進んでいるようで。




「えっと……すると、そのちっちゃなファミリアさんはー」

「同じです。いつの間にかそこにいた」

「そりゃそう言うモードにしたからだろ。あたしは最初からいたっての」


おれのファミリアだと認めてもらいたいのに、のっちゃんは意地悪にも素っ気ないままで。

新たなのっちゃんの出現に、目を見張るしかない二人。


そんなのっちゃんを引き出せるなんて、思っている以上によっし~さんとのっちゃんの相性はいいのかもしれません。




「あー、もう。とにかくみんな集まったんだから出発よ!」

「取り敢えず天使の居た場所、信更安庭学園でいいのよね?」

「天使? この世界には天使もいるのか? なんでもありだな……」

「今更そこをツッコムのかよ主サマ。さっき、ぜんぜんハナシ聞いてなかったろ」


話題を変えようと勢い込むマナに、ため息をつくルプレ。

改めて、そうでないように見えて、のっちゃん中心に動いているのだとよっし~さんも気づいたようで。



「そうね。それじゃあ、歩きがてらその辺りのことについてお話しましょうか~」


この一瞬で気を許した……わけではないのでしょうが。

ある意味予想というか、期待? していた暴力系ヒロインにおける、お約束な死に戻りが起こる事もなく。


よっし~さんを新たに加えた一行は、それぞれの思惑は違えどこの世界の現状を知るためにと、『喜望』ビルとかつて呼ばれた場所を、後にしたのでした。



ちなみに、繰り返しのリピートのごとく。

あんまり理解している様子のないのっちゃんも交えてセーブするしないの話題になって。


結局ここでもセーブをする事になりました。

よっし~さんが仲間に加わって出発する、この瞬間です。


セーブの事をイマイチ理解できないというよりは、マナの言う慎重なゲーマーあるあるについてよく分からなかったようですが。




そんな前回からあまり時間が立っていない今回のセーブ……備えあれば憂いなしである事に気づかされたのは。


それからすぐの、ことだったのです……。




         (第32話につづく)







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