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第二十六話:どうしようもない彼はヒロインの威光で門を突破する



気を取り直し、のっちゃん自身もどこか先に話が進んだという事を自覚しながら……。

二人と一妖精? は再び喜望ビルとかつて呼ばれていた、この世界における数少ない最後の砦へと舞い戻りました。



「ちょっと待った。そこのお二人さん。その飛んでるやつはもしかしてファミリアじゃないのか?」



今回のルートでは、喜望ビルの敷地に入るのは初めてです。

門番的な役割をしている鶴林一太の事を知っているのは、のっちゃんだけのはずでしたが。


今までと対応が違うなぁと思うくらいで、当たり前のごとく対応はマナに任せる事にしたようです。

マナは視線を向けられ、肩をすくめつつ笑顔を見せると、そのまま対応にあたります。



「ええ。そうですけど、ファミリアを連れていると何か問題ありますかね? ……今までわたしたち、家の地下シェルターで過ごしてたんですけど、ちょっと食料補給兼情勢が知りたくて、表に出てきたんです」

「おめもががっ……」


お約束でおめえのファミリアじゃねぇぞ、なんてツッコミをしたかったのでしょう。

気づけば毒を吐こうとするルプレを、マナは先するように片手で握り込むように捕まえ黙らせます。


しばらくもがもがと抵抗していましたが、何故かだんだん強くなる力に怖くなったのか、ぐったりして大人しくなるルプレがそこにいて。




「い、いや。しっかり管理できていればいいんだ。能力者は少なくなってきてるし、いつでも歓迎してるよ。何かあれば手伝って貰う事にはなるかもしれないけど」


そんな二人の様子に、顔をヒクつかせつつも入口を開けるように一歩下がる一太。

どうやら、外から来る人が珍しいからと声をかけたところもあったようです。


ルプレがもし喜望ビルを占拠するために派遣された尖兵であったら、どうするのかといった軽い調子でしたが。

恐らく人に敵対しているのならば、ファミリアが人間とつるむはずがないと思っているのでしょう。


お互い、ファミリアで人間かと聞かれるとちょっと答えづらい部分もあるわけで。

これはこれで良かったのでしょうが。




「何かあれば? ここ、避難所って聞いてたんですけど、何かあるんですか?」

「ん? ああ。大きい声じゃ言えないけどね。地上で見える所に人が集まってると、はぐれファミリアっていうか、【災厄】がやってくる可能性もあるからね。いざって言う時は助力を願いたいんだ。能力者は貴重だからね」


それは、何だか災厄をおびき寄せる囮だと言っているようにも聞こえて。

マナやルプレが眉を顰める中、何かを思いついたかのように唐突にのっちゃんが声を上げます。



「災厄? ああ、それなら大丈夫。マナが倒したからな」


別に黙っている理由も積りもなかったわけですが、ある意味空気を読まずそんな事を言うものだから、マナもルプレもうわってなってのっちゃんを見上げます。



「はっはっは。マジか? そりゃ頼もしい。期待してるよ。まぁゆっくりしていってくれ」


多分それは、もう諦めきった叶わぬ願いで。

彼もいずれここが狙われると言う事を覚悟していたのかもしれません。



「……お、おお。ありがとう」


性質の良い冗談。

一太はきっとそんな風に捉えた事でしょう。

別に隠す事でもないのですが、下手に祭り上げられて時間と自由を奪われるのは面倒だったので。

マナとルプレはそろって安堵の息を吐いていましたが……当ののっちゃんは言葉そのままに受け取ったようです。


言葉の行間に気づかず、自分の事でもないのに照れている様は、マナやルプレでなくとも『やられて』ダメージを受けていたかもしれません。

結果的に見れば、今回も無事、何事もなく喜望ビルに入ることができたわけなのですが。

 



「外にいても中にいてもなんだか疲れるなぁ」

「ふふっ」



そんなルプレのぼやきと、何故だか嬉しそうに苦笑するマナが印象的で……。




 

         (第27話につづく)







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