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第二十一話:どうしようもない彼は、いっちょまえに企みを思いつく



「……それじゃあ、左に行くよ」

「よっしゃ。決めたなら根拠もなにもねえな。先行してやっから後ろにとっつかまらないようについてこいよ」


左手の法則うんぬんかんぬん。

のっちゃんにしては珍しく自ら語ろうとする気配があったのですが、分身にも等しいルプレには、そんな自己満足でもある御託を聞く気にはなれないようです。

さっくりそう言い残したかと思うと、さっさと七色の鱗粉撒いて、左の道へ飛んでいってしまいました。





「何なんだよ……一体」


思わず、不満げにそうぼやくのっちゃんでしたが。



「ギオオオオオォォォッ!」

「やべっ」


見つけた、と言わんばかりのマグマな人型の咆哮。

のっちゃんは飛び上がる勢いで、決めた左の道へと入っていきました……。




                   ※




僅かばかり狭くなった道。

マグマの人型は周りを避けず轟音上げながら、そんなのっちゃんを追いかけていきます。


その背中、あるいは足元には、冷えて黒くなった溶岩がへばりついています。

よくよく見ると、そこにあるはずのない氷片までくっついていました。



「うわ、分かれ道? 意外と思ってたより続いてるじゃん道!」


どうやら、マナが後ろから追いかけてきているようです。

瞬間移動に加え、また新たなヒロインに成り代わりマグマをも凍らす術の行使したようで。



「左、かな? 行き止まりじゃありませんよーに」


此度の代償は、『氷の姫の想い出』。

その代償を誰にも語らず。

むしろ楽しげに。

のっちゃんの道行きへと続いていって……。




                         ※




所戻って、先行していたのっちゃんとルプレは。

どこにそんなスペースがあったのか、最初に降り立った場所と同じようなただっ広い洞窟の湖、そのほとりにいました。

それも、様子を見に行っていたルプレが行き止まりじゃねぇけど通るのは大変かも、なんて不安になる言葉を受けた結果です。



「どうする? 泳いででも行くかい? 結構深そうだし、水の中を行くという手もあるがな。その場合、【挑発】スキルはOFFにしとけよ。ぶり女がとばっちりを受けるだろうが、それくらいは承知してんだろ」


のっちゃんは、そこで初めて隠れる場所さえあれば、時間稼ぎできる事に気づかされました。


さっきから言っているブリだのかまだのは、まさかマナの事なのでしょうか。

何だか二人ウマが合わなそうだし、そう言う事もあるかとまとめつつ。

どうせ後退などもうできないので、のっちゃんは恐る恐る水の中に入る事にしたようです。



上手く水の中に隠れて、スキルをオフにすればマナがなんとかしてくれる。

そんな思いもなくなはなかったのですが、進むしかないと追い込まれているのが大きかったのでしょう。




「しかし、マグマが近くにあるせいかあっつそうだな。ゆげがバンバン出てるし。熱いのは平気か? 主」

「……え? あ、うん。あっついは熱いんだけど、なんて言えばいいんだろう。痛くない?」


熱さや冷たさ、水に入った感触はあるのに。

ダメージだけをカットされている。

今ののっちゃんはギフトの恩恵により、言葉通りの状況にありました。

相変わらずのっちゃんのおでこ上をせわしなく飛んでいたルプレは、理解したとばかりに小さな手のひらをぽんと叩きます。


「おお、あたしの同志にして相棒の一人、マイン……【スターダスター・マイン】のギフトの副次効果だな。そりゃいいこと聞いたぜ主! するってーと、あたしがヒットポイントの管理をしてれば、息継ぎなしでも水の中に潜り続けられるってことだな」


そう、それが単独ではマイナスにしかならないと思えた【スターダスター・マイン】の力でした。

このギフトを持つことで、所謂守備力と呼ばれるものが上がらなくななり、状態異常も受けやすくなるのですが、それらのダメージや痛みは、のっちゃんに届かないのです。


それは詰まるところ火の中だろうと水の中だろうと宇宙空間だろうと、ヒットポイントさえ残っていれば、健在でいられると言う事で。



「まぁ後は主が我慢できるか、だけどなぁ。選択肢も出てねえし。好きにやればいい。上にいって向こう岸まで辿り着く可能性に賭けるか。水中に潜って偶然にも横穴的なやつを見つける可能性に賭けるかをよ」


のっちゃんにしてみれば、違いがあまり良く分かりませんでしたが。

今度提示された選択肢は、デッドオアアライブの制限がかかっていないようで。

のっちゃんは悩むかと思いきや、さらに足を一歩沈め、ルプレに問いかけます。




「なぁ、ルプレ。おれが持ってる? このスキルって使えないか?」

「おっ? お、おう。主にしてはいいスキル持ってんじゃねぇかい。結構有用だと思うぜ」


のっちゃんとしては、単純に使用できるかできないかを聞いたのですが、生まれて初めてのっちゃんに名前を呼ばれてテンパっていたルプレはそれに気づけません。

ただ、のっちゃん自身よくやっていたダンジョン攻略系ゲームでも、『それ』が有用なのはよく分かっていて。

ある意味、初めてのっちゃんの意思で使いたいと思った能力とも言えました。



実際、【挑発】スキルとのコンボでそれを扱えば、まさに時間稼ぎ、逃走のためには最高のスキルと言えるでしょう。



最も、使った所を見た事がないのっちゃんにしてみれば。

それにより与える周りへの影響など、当然分かりようもないわけですが……。




           (第22話につづく)







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