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第二話:どうしようもない彼のステータス閲覧


 

 のっちゃんの飛ばされた異世界。

 通称『青空世界』は、所謂地球によく似た、しかし全く異なる進化を遂げた世界です。

 

 簡単に言うと、音楽が世界を支配していて。

 人の想像できるものは全てであるとも言われる多種多様な能力を駆使し、人間同士争っていました。



 とは言え、そう言った世界の仕組みは、今ののっちゃんにはあまり関係ないかもしれません。

 何せその争いが大きくなりすぎて、人の文明が滅びいこうとしている世界、なのですから。



 当然、のっちゃんにとっては見覚えのある、ふるさとによく似た廃墟が広がっているわけでして。 

 何だか訳の分からない、質の悪い夢が続いている、などと思っていた事でしょう。




 「……あぁ。こう言う画像、あったわ」


 そこで、初めてのっちゃんは我を取り戻したようです。

 余裕のある高みからの発言、と見せかけての自分を誤魔化すためのセリフ。

 もしかしたら、その時ののっちゃんは状況を理解していないようで、ちゃんと分かっていたのかもしれません。

 

 

 のっちゃんの友人が好きそうな、馬鹿みたいな状況。

 現実を認めたくなかっただけで、気持ちよく光の通らないどんよりとした空。

 半ばで折れ、崩れたビル。

 大穴の空いた道路。

 窓が割れガラスが散乱し、人気のない店の並び。



 描かれた絵画のように、ありえないものとしてしばらく観察していたのっちゃんは。

 あてもなくふらふらと歩き出します。

 

 移動するかしないか。

 その時、のっちゃんには比喩ではなく二つの選択肢が出ていました。

 

 しかし、与えられた加護ギフト能力スキルの説明も聞かず、助けてくれるはずの友人の姿もなく。

 そう言うの本当は好きなくせに信じていない所のあるのっちゃんには、『それ』が見えません。

 


 実の所、今のこの状況ははのっちゃんに自分の加護ギフト能力スキルを知ってもらうための、チュートリアルのようなもので。

 どちらを選んでものっちゃんにとってみれば悲惨で無残な事にしかならないのですが。

 折角なので、のっちゃんに与えられた転生特典について解説しておきましょう。

 



 まず、転生者の誰にでも贈られる能力スキルが三つあります。

 

 一つ目が、言語把握能力。

 異世界の人と話ができると一言表現すれば話は簡単ですが、やってきた時代より古い言語はどうなのか、魔法を扱う時の文言はどうなのか、意思疎通のできる人間以外の生き物、存在に対してはどうなのかと、突き詰めれば複雑な制約のあるスキルなわけですが。

 それらが使えるかどうかは、言語把握能力のレベルで区別するようです。

 

 普通ならばレベル1に設定され、異世界の人と話ができるくらいに統一されるのですが。

 いい加減にこちらに連れてこられたのっちゃんには、その制限がありません。

 最も、のっちゃんはコミュ障なので、人でないものに話そうだなんて、微塵も思わないでしょうが。



 二つ目は、身体能力の向上スキルです。

 のっちゃんの逃げ足が凄かったのはそのおかげですが、音楽の才能により超人化した方たちと比べたら、大人と赤子のごとしなため、あまり役には立たないでしょう。

 まぁ、スキルを鍛えようと言う概念がのっちゃんにあれば別なのでしょうが。


 そして、勿体ぶって最後にした三つ目ですが。

 実際にのっちゃんに使ってみましょう。

 恐らく、のっちゃんが自分の意思で使おうなんて展開はきっと、ないでしょうから。




 障害物もなんのその。

 冒険する少年のように残骸をかき分けて進むのっちゃんを、いつもよりじっくり見ます。


 後頭部をズームアップするみたいにじぃーっと見ていると、突如現れた赤いターゲットがのっちゃんの輪郭に重なり、ぴろんと効果音。

 途端、のっちゃんを隠す形で青い透けたウィンドウが浮かび上がりました。



 《  名前:『のっちゃん』

    職業:なし(異世界人)

    状態:混乱

    生命力:28/30(+15)

    精神力:12/16(+8)

    攻撃力:13/13(+6)

    守備力:4/4(+2)

    敏捷力:28/28(+14)

    知力:15/15(+7)

    運力:20/20(+10)


    取得スキル

    完全言語把握能力(レベル∞)

    身体能力向上(レベル1)

    ステータス閲覧(レベル1)

    逃げ足(レベル2)

    挑発(レベル9)

   

    取得ギフト


    『星を撒くもの(スターダスター・マイン)』

    『現に戯れしもの(リアル・プレイヤー)』

    『#$$レ+*‘レ&#|¥ラ¥(~*#グ・%%ル&’#“ダ&=+*ー)』    》

 

    

 

 

 そう、のっちゃんの所得スキル欄にもあるように、ステータス一覧です。 

 まぁ、他人と視線を合わせる事を不得手とするのっちゃんにしてみれば、正しく宝の持ち腐れでしょうが。

 

 はてさて、ステータスを詳しく見ていくと、一部文字化けしていて気にはなりますが、注目すべきはそれ以外の加護ギフトの部分でしょうか。

 

 

 先程のっちゃんがスルーした、二つの選択肢を示すウィンドウ。

 あれこそがのっちゃんのギフト、『現に戯れしもの(リアル・プレイヤー)』の一端です。

 

 選択肢が出る以外にもいろいろあるのですが、本人が使う気が……気づいていないので後回しにして、先にもう一つの分かっているギフト、『星を撒くもの(スターダスター・マイン)』の解説をしましょう。

 

 

 まさに、名は体を表す。

 激しく動く度にキラキラと星を振り撒くのっちゃんそのままの能力に見えますが、『リアル・プレイヤー』との組み合わせも相まって、驚異の能力を発揮します。

 

 その様は、正にちーと。

 本人に自覚があってもなくても発動する優れものなのです。




 ……おや。早速敵方が現れたようですね。

 瓦礫の影に隠れ、弓矢が、銃口が、炎生まれし手のひらがのっちゃんを狙っていました。


 これはチュートリアルであるからして、本来ならありえないことでした。

 神様が間違えて、いきなり敵地に放り込まれたわけでもありません。

 

 この世界に送る際には適当にも見えましたが、しっかりこの世界へ降り立ったハズの転生の先行者……つまりはのっちゃんの友人ですね……の元に送ったはずなのです。



 その友人に、のっちゃんの現状……転生、この世界の事、与えられた能力について説明してもらう。

 のっちゃんを守るためには、そんな基本的な理由以外に、一つ大きな意味がありました。

 それは、のっちゃんに与えられたものでない、初めから持っていた基本スキル、『挑発』を抑える役目です。

 


 仲間がいる時は、勝手には発動しないのか。

 かの友人に挑発スキルを抑える力があったのかは分かりませんが。


 のっちゃんの挑発スキルは一人でいる場合、そのレベルの高さもあって、抜群の効果を発揮するのです。



この世界を徘徊する、人間にとっての敵性のように。


出会ったら即撃退、といった態度を取られるくらいには。





(第3話につづく)


          




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