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第百二十九話、少し早い朝の、色々と大きい猫耳天使との攻防、一幕



日々授業を繰り返して、しばらく経ったのならば。

のっちゃんですら見聞きしたいかもしれない、女の子ばかりの授業の醍醐味的なお話やイベントもあったのでしょうが。

今回は話題に上げると言ってもよっし~さんやマナさんが、その力余りすぎて少しばかり失敗してしまったことくらいで。


マナさんはまあ当然のこと、よっし~さんまでもが恥ずかしいからのっちゃんには言わないでほしいとのことでしたので、のっちゃんには女の子ばかりの授業、今のところはのっちゃんの期待しているような楽しい情報はありませんよ、と伝えておきます。

するとのっちゃんは、何とも言えないお顔をした後、首をかしげてみせて。



「……挨拶はしておく。だが基本、こちらからそちらに踏み込むことはないから、せめてマインたちが積極的に触れ合ってほしい」

「わかりました。与えられし命、ことごとく遂行いたします」

「いや、別に命令したわけじゃないんだが……まあ、いいか」



 どうやらのっちゃんのふところへ入り込むには、マナさんたちのように積極的にぐいぐい近づいていくか、あるいはよっし~さんのように、のっちゃんのそんな自分ルールを破ってしまうくらいの何らかの理由(助けたい、助けなければと思えるような)が必要なようで。


やはりなんだかんだで一番手なマナさんのアドバンテージは揺るがないのか。

などと言いつつもストレートに大きいお胸はすべてを凌駕するのか。

またはのっちゃんの謎を解かんとする気持ちを揺さぶるような誰かが現れるのか。



地の文なわたくしとしては、ジャンルが偏るのはいかがなものかと考えてしまいますが。

自身の力が頻繁に、しかもほとんど気づかないままに使われるようなお話、展開は是非とも避けたいところだったので。


そのように祈り願いつつも。

それでは改めてとばかりに短いようで長い『友人』からそれ以上のものへと変貌していく、ラブでコメディな剣と魔法の学園における、のっちゃんのエピソードを語り始めることにいたしましょう。





                        ※




のっちゃんの朝は。

いつも比較的早めではあります。

それは、寝ぼけて間違えてのっちゃんのベッドの潜り込もうとしてくるすぅさんが。

目を覚ましてびっくりして恥ずかしい思いをしないように、といった配慮と。


すぅさんのトラウマを刺激するというのっちゃんの背中にある黒い翼を隠すためと。

そんなすぅさんを邪魔しないようにと作った寝袋兼着ぐるみな『ソーダ』さん改め『ソーカ』さんの姿を取りながら、すぅさんと一緒に朝食を取るのは忍びない……ぶっちゃけると恥ずかしいといった理由もありまして。


今現在、のっちゃんはそんなわけで『魔法料理部』かつ購買部に所属しているらしいサマルェさんにお願いして、朝食を作っていただき、前日から受け取っていました。



今日は結構日持ちする干し果物入りのパンのようです。

サマルェさんが得意にしているという料理魔法はかかっていません。


それもこれものっちゃんの、朝飯くらいは普通のものが食べたい……

魔法料理の方は他にいくらでも時間をつくるから(実は、のっちゃんは攻撃魔法に限らず、それも文字通りくらうことでコピー、ラーニングができるので、むしろこちらから頼みたかった、とのこと)魔法料理を振る舞いたい時はできるだけおれのところに持ってきて欲しい(理由は違えど、同じ言葉を正に主人公なギンヤさんも口にしている)と、少々言葉足らずでありながらも訴えたことで、勘違いがあったといいますか、特にマナさんが何故だかとってもお冠で。

私もお弁当つくるだなんて言い出したりして。

(もちろん、意外と健啖家なのっちゃんが断ることはありませんが)



「……そう言えばマナって料理できるのか? 食べるの専門だったイメージがあるが」


のっちゃんとしては、いつも美味しい食べ物屋さんを探し出し見つけ出し、教え誘ってくれて感心していると言ったつもりだったわけですが。

やはり言葉足らずで、何故だかマナさんとよっし~さんにまで火がついてしまって。


これからお昼にかなりの量のごはんが待っているわけですが。

そんな一幕もあって、みんなでお昼ご飯を作っていただくのならば朝くらいは顔を合わせることもないだろうと。

のっちゃんは少しばかり解放された気分を味わいつつ。

大分広い朝の校内を散歩がてら朝ごはんを食べる場所を探していました。



ちなみに、それなりに早い時間帯なので。

ルプレも、いつも寝ているトゥェルも未だ夢の中で。

のっちゃんを独り占めできる、素敵な時間を過ごさせていただいて。

みなさんありがとうございますと言いたいところなのですが。


そこは主人公なのっちゃん。

歩けばトラブルと言いますか、『死に戻り』しか寝ない問題……人物を引き寄せてしまうようで。




「……ふむ。今日はここでいいか」


草葉が多く、奥が見えないほどに茂る枝や幹もしっかりとした大木。

その下にいくつかある、木陰揺れるベンチ。

確かにそのベンチには、朝早めであることもあって、どなたもいらっしゃいませんが……



「せっかくだしマインも一緒に食べよう」

「……えっ? あ、よろしいのですか? もちろんいただきますっ」


元よりギフトですから、ものは食べられません……なんてことはなく。

むしろはじめからそのつもりだったといいますか、場合によってはあ~んを所望するつもりだったわけですが。

わたくしは、そんなのっちゃんの『念話』も使わずの、敢えてのセリフにはっとなりました。


きっと、ここからが『死に戻る』かそうでないかの分岐点なのでしょう。

故に、寮を出る時に、ルプレが寝ている状態でも可能であったセーブをしたのだと気付かされます。


そんなあえて声に出した言葉は。

茂る木々の上にいらっしゃる、少なくとも普段から木々の上で暮らしているような小さな生き物といえない、大きな存在に伝えたかったのでしょう。


想像するに、主人……マスターと使い魔の間柄であるわたくしたちの仲の良さというか、サマルェさんが心配していたように、わたくしたちがのっちゃんに大切にされているかどうかをお知りになりたかったのかもしれません。


自身で言っていて恥ずかしくなってきますが。

それは、大きく外れてはいなかったようで。




「念のため先に食べるぞ。……うん。おいしい。特に魔法もかかってないな。それじゃあ反対側、ぶどうのところをどうぞ」

「あ、ありがとうございます。ご主人さま。それではいただきますね」


とはいえ、分かりやすく口にしているだけで、いつものっちゃんはこのような感じではあります。

わたくしは、食べやすいようにちぎってもらったパンをいただきつつ、こっそりそんなパンのかけらより小さいわたくしの分身を、木々の茂みの方へと飛ばしました。



今現在、念話を行うのはあまりよろしくないのか、これといった指示はありませんでしたが。

偵察してはいけない、と言い渡されたわけでもないので、そっと誰かのいらっしゃる木の枝の上を伺います。



そこには、大きな猫さんがいました。

……いえ、正確にはあずささんのような、猫さんの獣人さんと言えばいいのでしょうが。

わたくしが思わず息をのんだのは、わたくしたちにとってみれば深い谷と山めいた、よっし~さんのお胸にも勝るとも劣らないたわわ……じゃなかった、これまた白でも黒でもない、様々な色が混ざっているようにも見える天使の翼でしょう。


すぅさんたち姉妹や、のっちゃんがお借りしているものとはえ全然違いますが。

所謂これが属性の盛りすぎ、というものなのでしょうか。

と言いますか、もしかしなくともその翼にはわたくしが知りうる限り、12属性全ての魔力めいたものが込められているようにも見えて。



そんな彼女は、猫さんのように木の上にいながらも、しっかり目を覚まして眼下を覗き込んでいました。

さらに、念には念をで、生まれたての魔精霊ほどに分身体を小さくしつつ伺い見守っていると。

下にいるのっちゃんに聞こえてしまうのではないかと、こっちが心配になってしまうくらいの声で独り言を呟き出します。


「うわ、どうしよ。降りようと思ったのに、真下にこられちゃったよ。どうしようかな、このまま待っていればどっかいくかな。……でも、あんまり見たことない男の人ね。噂の新入生かしら。意外と女の子にやさしそうだけれど」


つまるところ、その見た目がブラフであったのならば。

ふとした隙に落っこちてしまったりして、ヒロインが空から降ってくる系のとらぶるが起きるかもしれない、という可能性もあって。

どちらかと言えば女の子が苦手と言いますか、そう言ったとらぶるは出来うる限り避けたいはずののっちゃんが、あえてそこにい続けているということは、その選択こそが最善で。

起こるかもしれないとらぶるを望んでいる、ということなのでしょう。



今の今までとは違う方向性に。

一体全体どういった風の吹き回しなのでしょうかと思ってしまいます。

大きなお胸が好ましいと言うのならば、よっし~さんも負けてはいませんし、天使の翼……いえ、三毛らしき猫耳がポイントなのでしょうか。

猫さんがもふもふとじゃれてくるのを、今か今かとお待ちになっているのでしょうか。


……などと、のっちゃんにとってみればありえなさそうな事を考えていましたが。


どうやら彼女は。

ピンポイントで真下に陣取っているのっちゃんよりも。

その膝上に陣取っているわたくしの方が気にかかっているようで……。



     (第130話につづく)







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