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第百二十五話、異世界の自分自身かもしれない存在のことはとりあえず置いておいて




「……それでは、授業を始めるとしよう。新入生三人は、一塊で良いと言いたいところだが、教室は広く空いている。交流を深めるためにも、各々が好きな席につくが良い」



ちょうど、その時でした。

アルガ先生が、はかったかのようにそう口にしたのは。

ひょっとすると、どこの席につくかで今後の展開が変わっていくのでしょうか。


そんな中、のっちゃんの最優の一手はと背中越しに見つめておりますと。

ほんの僅かだけ考える仕草をして見せて、マナさんとよっし~さんに向き直ります。



「……どうやら二人ともこのクラスに知り合いが居る様子。初回だし、再会を喜び仲を深めるのはどうだろうか」

「あら。やっぱりのっちゃん気づいていたのね。それならお言葉に甘えようかしら~」

「まぁ、大学の教室みたいだし、席決まってるわけじゃないもんね。それじゃぁちょっと失礼して」



二人は、のっちゃん自ら率先して動く、喋る時には何かがあるともう分かっていて。

特に反論もなにもなく、よっし~さんは蜂蜜色の髪をポニーテールにした、何故かふわとげの竹箒を机に立てかけているお姉さんに。

マナさんは、今わたくしたちが一番注目せざるを得ない、チョコレート色のくるんとカールした髪の、

お菓子作りなどが得意そうな衣装をまとった少女の方へと近づいていきます。



自分のことよりも、周りの大切な人たちのことを気にするのっちゃんですから、

今のところはマナさんが彼女に近づくのは問題ないということなのでしょう。


そんな二人を見送ったのっちゃんでしたが、当然この場に知り合いがいるということはないらしく。

自分のことは考えてなかった、とでも言わんばかりに少々迷った後。

うまいこと男子生徒の皆さんが固まっている席に目星をつけて向かってゆきます。


のっちゃんが目星をつけたのは、二人の男子生徒がそれなりに距離を開けて座っている、教室の中ほどにある長机のところでした。

……いえ、よくよく見ましたら、先程の亜麻色チョコレート髪の少女以上に、デジャヴも真っ青といいますか、

兄弟親戚と言われたら信じてしまうくらいにはのっちゃんによく似た白髪短髪紅顔の少年の隣には、何故かこちらから隠れるようにしている、長い銀色の髪をわたくしとはタイプの違うドリルめいた巻き髪の少女の姿がありました。


彼女にその自覚はないのか。

分かっていて敢えてなのか。

まるでマナさんがのっちゃんにちょっかいをかけるがごとく、白髪の、別の世界ののっちゃんめいた少年に確かに抱きついていました。


『挑発』スキルを使っていないのっちゃんのように、少年の存在感は希薄で。

のっちゃんに似ていることと、そんなドリルのお嬢様がとっついていなければ教室の中にいてもすぐには気づけなかったかもしれません。


教室に入ってからは明らかに敵視してくるチョコ色髪のコックな天使さまばかり注視していましたが。

彼らも十分気になる相手であるのは確かで。


のっちゃんもそう思っていたのでしょう。

話しかけにいきたい雰囲気を醸し出してはいましたが、興味深い二人のもとへそのまま飛んでいってしまいそうなルプレをさっとそっと掴んで抱えると。

わたくしの方を一瞥した後、気になる彼彼女らには頭下げつつも。

もう一人の……巨人族とまではいかずとも、のっちゃん二人分くらいの体格をお持ちの、こちらは全体的に黒っぽい少年へと、一礼してから話かけます。



「すまない。後ろの列に座らせてもらうよ」

「……あぁ」

(う~む。なんだろなぁ。ちぐはぐっていうか、こっちのクロビカリしてる彼も昔ののっちゃんぽいよな)

(ルプレもそう思いますか? 一体どうなさったのでしょうね。実はわたくしも、ご主人さまが苦手なタイプ……明るさに突き抜けたような方だと思っていたのですが)



こう言う言い方は失礼に当たるのかもしれませんが。

所謂『力こそパワー』と言ってしまうような、陽気で筋肉大好きなお兄さんの素養がありそうなのに。

まるで仮面を貼り付けたかのようにそのお顔には何の感情も浮かんでいないように思えました。



(恐らく彼は自分の意志でここに来たわけじゃないのかもしれない。あるいは心が凍る程の心配事がああるか……しかし今は授業中だ。時期が悪い。二人ともあまり彼を刺激しないようにな)

((了解ですっ))


そして、のっちゃんがそのような支持をくださったということは。

のっちゃん自ら動くまで大人しくしておくべきであり、そうでなければ『死に戻り』の引き金になりかねない、という事でもあって。

わたくしたちは、揃って心内で頷くと。

そのままいつもの定位置、のっちゃんの両肩へと陣取ることにしました。


左前隣の仲睦まじそうな少年少女が、そんなのっちゃんを含めたわたくしたちに注目している様子でしたが。

すぐにアルガ先生の渋めの声が響いてきたので、とりあえずは授業に集中することにしたようで。




「それでは新しく入った者もいるのでもう一度『リヴァ』の魔法属性、それらに類する御技、技能についておさらいをしていこう」


リヴァ』クラスと言う名前は、伊達ではないらしく。

時魔法と言った類のものがどういうものなのかを語り出すアルガ先生。


早速興味深い内容であるからなのか、わたくしたちを定位置に落ち着かせたのっちゃんは。

しっかり用意していたらしいノートを取り出し、集中して授業を聴き始めました。


この様子ならば、いくつか有用そうな魔法やスキルを覚えられそうです。

まだまだのっちゃんのことを知っているようで知らないわたくしの、そんな想像を軽く超えていくことなど予想できようもなく。


わたくしたちは役割分担、適材適所とばかりにマナさんやよっし~さんたちの行方を追うことにしました。

まずは、トゥェルを連れたよっし~さんでしょうか。


二人が向かったのは、ふわとげの竹箒を座席の側に立てかけている、制服の上になのか、メイド服を身につけた少女を中心とする机でした。

アルガ先生にも言われたように、お互いの自己紹介は休憩時間にでも、と言うことなので。

じっくり話し合う感じでもありませんでしたが、勝気といいますかプライドが高そうにお見受けする竹箒メイド服の彼女が、よっし~さんに何度も頭を下げているのを見るに、サウザン理事長先生のように前世界の知り合い、後輩さんなのでしょうか。

その割にはよっし~さんの方も返す刀で何度も頭を下げていましたので、中々にややこしい間柄なのかもしれません。


とはいえ、仲が悪いというわけでもないらしく。

正直よっし~さんはのっちゃんとはまた違ったタイプの、人付き合いが苦手なタイプに見えましたが。

竹箒のメイドさんを含めた周りへのみなさんとのやり取りを見るに中々にうまくいっているようで……。



    (第126話につづく)







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