第百二十三話、あらゆる世界から来ているからなのか、たらこきゅーぴーのお面でも違和感なく
恐らくは、のっちゃんが現在置かれている状況を説明するためにとソ-カさんの仮面つけているのでしょうが。
そう分かっていた上でお伺いを立てるために体を元に戻しつつのっちゃんのもとへ舞い戻ると。
何だか感心したようなのっちゃんのお言葉が帰ってきました。
「すごいな、マイン。あんなこともできたのか。スプラッターなハウスに出てきそうだ。……まぁ、脅かしついでにちょうどいい。みんな、聞いてくれ。実は昨日、ここへ来た目的のひとつである、天使族らしき娘に会ったんだ。だが、素のままだと背中の黒い翼もあって、敵対……あるいは逃げられてしまうことが分かったので、こうして変装することにした。この状態でならばとりあえずのところは受け入れてもらえたので、しばらくはこのまま過ごすことにするよ」
「……なるほど。『ソーカ』さんですか。悪役を負わされてはいるけれど、けっして自分から攻撃を仕掛けることはない、敵対の意志はないとアピールしているわけなのね」
「そう、なにゅむ」
「ええっ、何それっ。いつの間にそんなお面……え? 作ったの? のっちゃんが? 着ぐるみもあるって? すっごい! じゃ、じゃあ『みゃんぴょう』のお面とかも作れたりする?」
「え? みゃんぴょうですって!? それは私もちょっと欲しいかも」
「……恐らく、いけるとは思うが、マナがみゃんぴょうが死ぬほど好きなのは知っていたが、もしかしなくともよっし~さんもなのか?」
「ええと……その、実は兄が生まれ変わっても愛してやまなかったのが影響しちゃってて」
「ふむ。だったら着ぐるみ……ぬいぐるみの方がいいか。何を元に作られているか気にさえしなければ問題ないが、どうだろう?」
「え? 何でできてるの? のっちゃん自身? のっちゃんから出てる星屑?」
「まぁ……な」
「あー、それなら全然おっけーだよ」
「えぇ。このクオリティで作られたものなら、問題ないわね」
マナさんはいただく気満々で。
よっし~さんは、トゥェルのこともあってか、少しばかり遠慮している風ではありましたが。
減るものじゃないどころか、星屑としてそのまま放置していると、さらさらになって消えてしまいますから、再利用できるのならば是非にでも再利用すべきであろう、ということになって。
とりあえずはまた暇な時にでも。
とにもかくにもはえある学園登校初日であるからして、遅れずに登校せねばと。
のっちゃんはそのままお面を被ったままで『時』クラスへと向かうのこととなりました。
マナさんたちからすれば『ソーカ』さんのお顔でも、元々ののっちゃんでもプリティさは変わらない、とのことですが。
他の人は普通に受け入れてもらえるのか。
のっちゃんいわく、流石に何度も出てきて覚えていた、『夜を駆けるもの』とやらのお面のように、
認識阻害の魔法がかかっていて、周りで見ている人はあまり気にならない、とのことですが。
果たして、その効果のほどは、とばかりに。
いつの回で覚えたのかも分からない、アイテムを創り出す能力に。
大いに期待させていただくことにいたしましょう。
そんなわけで。
わたくしたちのっちゃんパーティは。
『時』の名を冠するクラスへと向かいます。
ジャスポース学園のクラスは、12ほどあるとのことでしたが。
1クラス10人~30人ほどの生徒さんたちが在籍している、とのことで。
『時』クラスは人気がない……と言うよりは、希少らしいその属性の素養を持っている人が少ないが故に人数が少なめと言うことで。(逆に言えば、のっちゃんだけでなくマナさんやよっし~さんにはその素養があると。サウザン理事長が認めているとも言えますが)
のっちゃんたちが新たに加わっても、10人を超えるかどうか、とのことで。
始業前10分ほどでしたが、授業は必ずしも出席しなければならない、と言うわけでもないようで。
(そもそもが、月に一回はあると言う試験に参加しなければ落第になってしまうとのことで。その試験にさえ出ていればいいという人もいるようです)
ざっと見回した限り、広い教室にやはり10人いらっしゃるかどうか。
ある意味で閑散としている、とも言えますが。
『時』クラスの担任である、アルガ先生はあまり気にはしていないご様子でした。
(仙人さまのごときお爺さん先生で。青緑のおヒゲが特徴的な、ダンディな御方です)
「……出られる者は全員揃ったようだな。本日の授業を開始する前に、後発組として入学、この『時』クラスに入ることとなった者達を紹介する。『のっちゃん』君、『よっし~』さん、『マナ』せ……さんだ。何かあれば一言、まずは『のっちゃん』君からだな」
アルガ先生は、お年を召した雰囲気はありつつも、イメージしていたもの以上にいぶし銀な口調でした。
マナさんを呼ぶ時だけは、僅かばかり感情にゆらぎが感じられたような気がしましたが。
それを置いても何やら強者の風格すら漂うカッコ良さがありました。
わたくしたちがそうであるように、のっちゃんもその事に気づいていたのかそれ以外の何かがあるのか、何やら少しばかり驚いたご様子で。
ですがよっし~さんやマナさんは、わたくしたちほどではないというか。
このような不思議と超常溢れる世界の先生であるのだからこれくらいは、何て思っていそうで。
一方で、アルガ先生の言葉を受けた『時』クラスの生徒さんたちは。
案の定、後からやってきて入学、英雄になるための授業を受けんとするのっちゃんたちに対して、様々な感情があるようで。
わたくしが思っていたほど重く昏いものではありませんでしたが。
それまで席についていながらも、各々自分の世界に入っていた風の『時』クラスの皆さんの注目が、一心にわたくしたちに。
特に『ソーカ』さんのお面を被ったのっちゃんに集まっているような気がしていて……。
(第百二十四話につづく)