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第百十六話、世界レベルが違うから、ちょっとどうしたって生徒には見えないですね




「うん、それじゃあ【リヴァ】クラスだね。【リヴァ】クラスの先生には連絡しておくよ。【リヴァ】クラスは他クラスより人数が少なめだったし、ちょうど良かったのかもしれないね。のっちゃんさんはもちろん、よっし~さんも実力としては申し分ないのだろうけれど、それでも学ぶ力にはなれることはあると思うよ。……それで、ええと。マナさんですが。あなたは……例えばのっちゃんさんのファミリアさん、と言うわけではないんですよね?」

「え? わたし? ファミリアって……わたしとのっちゃんってば家族に見えますか? いやーん、参ったなぁ」

「お約束のボケはいいんだ、よっ」

「いたたっ、おでこぺちぺちやめてっ。ついの条件反射なのっ」



ご覧の通り、うちの小悪魔妹ちゃんとも仲良しではありますが。

改めて考えますと、マナさんって謎多きお方ですよね。

のっちゃんは彼女のことを同郷の知り合いと言うこともあって、何か知っていそうですが。

それもこれも明らかにファンタジーの住人らしいヒロさんといった妹さんの存在により、何が本当なのかも分からなくなってきましたからね。



それに、よくよく思い起こせば、初めてのっちゃんがマナさんとお会いした時ののっちゃんの反応も気になります。

マナさんの距離感が少しばかりずれていて。

いたたまれなくなって逃げ出したくなるのは、まぁ分からなくもないですが。


思えばのっちゃんはそこまで女性が苦手、というわけでもないのです。

やはり、二人の間には普通とは違う何かがあるのかもしれなくて。





「うーん。ええとね、これがジャスポースにやってくる可能性のある生徒さんたちの名簿なんですけど、マナさんの名前、載ってないんですよね」

「うわっ、本が急に出てきたっ、魔法だぁっ」

「……あだ名というか、偽名だから? それならば私ものっちゃんも同じだけれど」

「むにゃ、おふれこ」

「うん、のっちゃにゃよっし~さんはちゃんと載っているからね。と言うことは……」

「えっ? もしかしてわたし、さっきおっしゃっていた稀代の悪役だったり、中々その正体のつかめないS級悪役ってやつ?」

「そんな訳ないだろう」

「そ、そう? のっちゃんにそう言われると何だか嬉しいなぁ」

「いちいちくっつくな」



いかにも、目立っていて、言われてみればいかにもな感じではありますが。

そうであるからこそ、のっちゃんはすぐさま否定したのでしょう。

そんな展開は、面白くないとでも言わんばかりです。

 


「うーむ。底知れない魔力と、そこはかとなく沸き立つ神気……もしかして」


そこで、サウザン理事長先生は、おもむろにガラスでできたベルのようなものを取り出し、りんと鳴らします。

オーヴェ改めトゥェル(さん)が、一瞬だけぱちっと目を見開いて。

ルプレがふるふる羽を震わせ、わたくしめがどこまでも届きそうな音の波に思わず目をつむっていると。



「や~ん、しょぅっ!」


ついさっき聞いたばかりのようで、ちょっと違う声が聞こえてきて。

大きな机の後ろ、やっぱりいきなり開かれた窓から、金色にピカピカ光るヘルメットにしか見えないものをかぶった、新たな色合いのシャーさんのお友達が飛び込んできました。

その両手には、やはりサウザン理事長が魔法で生み出された本とは似ているようで、装丁の異なる薄めの本を抱えていて。



「ありがとうございます。師匠」

「やんすっ!」

「……」

「や、やんしょっ!?」

「あれ、師匠。行ってしまわれるのですか? 新しき生徒の皆さんを紹介するつもりだったのですが。すみませんね、みなさん。師匠は世界に散らばる他の量産型ダルルロボのみなさんと違って、恥ずかしがり屋でして」


赤色のシャーさんや、緑色のひとの時はそうでもなかったのに。

ぴかぴか金色に光るサウザン理事長がおっしゃるところの、お師匠さまを見とがめるや否や、何か気になることでもあるのか、はたまた好きな色合いであったのか。

基本人に視線をしかと合わせることの少ないのっちゃんにしては珍しく注視していたのがいけなかったのでしょうか。

まるで恥ずかしがり屋の妖精さんかのごとき慌てっぷりで金色な師匠さんは飛んでいってしまいました。



「金色ボディねぇ。トゥェルと色違いじゃない。あの子、つかまえたらうちの子になってくれないかしら」

「おそれおよっ」

「いやいや、分かっていておっしゃってるでしょう、よっし~さん。後生なのでやめておいてあげてください」

「ふふ、冗談にきまってるじゃないの~」

「うーむ。さっきから引っかかってたけど、持ってっちゃうくらいかわいいかなぁ。どっちかって言うと、男のロマンって感じだけど……って! それよりもっ、理事長せんせーっ、今更わたしだけ入学できませんだなんて、なしですからねっ」



確かトゥェルの、真の相棒としての姿は、手から肩にかけて装備するタイプの牙撃などと呼ばれる武器(正確には、意思あるファミリア)で。

それはそれは青銀のフルメタルなボディが、よっし~さん曰く可愛かった、とのことで。

マナさんには申し訳ないですが、見た目がラスボスっぽいのっちゃんや、よっし~さんと比べてもどこか危ういところがあるというか、謎も多くて。

入学できない、なんて言われたら悪堕ちして暴れまわりそうな気がしなくもないマナさんです。

何とはなしに、サウザン理事長も、そんな雰囲気に気づいたのか、大丈夫ですよ、とばかりに穏やかに微笑み本を開いて見せて。




「……えっ? ほ、本家、本校の……こっ!? あ、これは大変誠に失礼いたしましたっ!!」


スマイルをあっさり一瞬で崩したかと思うと。

ほとんど土下座する勢いで、子供のようにぺこぺこしだす理事長先生。



「いややっ、ちょっとぉ!? いったい何が書いてあったらそんなリアクションになるわけっ!? のっちゃぁん、そんな引いた顔で見ないでぇっ。……ってかサウザン理事長先生? ちょーっとお話したいことがあります、よろしいですか?」

「あ、はい。うん。それじゃあみなさんはお菓子とお茶をどうぞ」

「うぉすげっ、追加のおかわりが生まれてきたぞっ」



思わずのっちゃんを見やれば、引いていると言うよりもマナさんならばそういう事? もあるだろうといった達観した表情でしたが。

まるでやんちゃな弟の首根っこをひっつかんでおハナシしにいくマナさんの様は、確かに引かれてもおかしくはないお姉ちゃんっぷりで……。



   (第百十七話につづく)







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