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第百八話:擬似的なものでも太陽は、白黒に構わず扱い抱えきれず




「あぁ、そんなのかんたんだろ。きっと間違いなくご主人、あの銀髪で羽の生えた子がめっちゃタイプなんだよ。見たところ、正気じゃないっていうか、自分の力が抱えきれずに暴走してる感じだし、どうにかして助けたいんじゃないか?」

「ふむ。そう言われますと理にかなっているような気もしますが。あの子が好みのタイプ、運命の人だってご主人さまからお聞きしたわけじゃないのでしょう? ……自分にちょっと似てるからって願望入ってませんか?」

「はっ、はあぁっ!? なにを言い出すかと思えば、ぜーんぜんにてねーしっ!!」



厳密に言えば同じ白銀の髪でもルプレのものは、彼女そのものを表すとも言える虹色がまぶされているし、そもそも髪型ですら全くもって違うのですが。

それでも初めて見た気がしないのは、ルプレと心なしかどこか似通った雰囲気があるからなのだと、感じ取ったのは確かで。


あぁ見えて身内、家族……一度その範疇に入った人には情の熱いところのあるのっちゃんの、行動理念としては間違っていないように見えました。

事実、のっちゃんは溶岩魔人を通り越してもはや炎の根源とも言えなくもない御姿となっても。

けっして彼女に攻撃したり触れたりすることもなく。


だけれど、おれはここにいるぞ、ガンガン打ち込んで来い、とばかりに。

溶岩の鎧を派手にメラメラと滾らせて長い長い真白の髪の少女の周りを回りつつ。

そんな彼女の見た目にそぐわない、随分と洗練された格闘技とも言える間断なく続く拳と足での連続攻撃を。

時にはかわし、時にはいなし、びっくりするくらいにうまく立ち回っていました。




「んん、やっぱり瞳の焦点あってなさそうだな。それなのに腕や足がブレるほどに速いってどういうこと? あのお姫様、『ぶどうか』なのか? それをなんなくかわしちゃってるご主人もやっべぇけど」

「自身の身ひとつで戦うタイプなのでしょうか。見た目だけなら規格外の回復魔法でも扱いそうに見えますのに」



飽きることなく『死に戻り』し続けていった結果。

やはりのっちゃんは必要以上にレベルアップしてしまったようで。

恐らく、一度目の時にお腹に受け、一撃の元に『死に戻り』する羽目になった、光の速さの拳もある程度は避けられるようになったみたいでしたが。


かといって、のっちゃんの方から仕掛ける気配は一切なく。

このまま彼女の攻撃をかわし続けて、彼女が疲れて……溢れるほどに暴発しているようにも見える【セザール】の魔力が尽きるまで根比べでもするつもりなのでしょうか。


今のところ、何とかかわせてはいますが、私のせいで守備力がゼロになってしまっているのっちゃんは、一撃でももらってしまえばアウトなのでしょう。

ここからのっちゃんは、一体如何ようにして『死に戻り』のその先へ行くのでしょうか、なんて考えていると。

何かを思いついたらしいルプレが声を上げます。



「あ、そだ。よっし~さんってふるさとの世界でお医者みたいな仕事してたんだったよな? こうなったらオーヴェを介して助けにきてもらわね? 正気に戻すスキルとか使えないかな。あとついでに、ぶりぶりぶりっ子も」

「ええ、実はもうオーヴェには連絡ついています。皆さんが駆けつけてくれるのにそう時間はかからないと思いますが……」


そうであるのにも関わらず、のっちゃんが幾度となく『死に戻り』を繰り返すこととなったのは。

そんな彼女たちが、間に合わなかったからなのでしょうか。


……なんて、思っていた時でした。




『……来るっ!』


その場の緊張感が伝わってくるほどの、緊迫したのっちゃんの声。

はっとなってスクリーンにかじりつくと、その画面のほとんどが白い光に覆われているのが分かります。



「うおぉ、まぶしっ。なんだよあれ、太陽かよぉっ!」


ようやっとのことで目をすぼめて見つめれば、確かにルプレが言うように小型の太陽、恒星もかくやな代物を。

両手のひらを上に掲げ持っているようにも見える真白の少女の姿がありました。


よっし~さんの故郷を滅ぼしたきっかけとなったらしい黒いものとは違い、神聖さすら感じられる真白な太陽。

ひとたび受ければ七色の星屑と化すだけではすまなそうな膨大な魔力が内包されています。



「うわっ、ノータイムかよ! 容赦ねぇぇっ!」


きっと間違いなくこれこそが。

幾百もの『死に戻り』を繰り返すこととなった一番の原因なのでしょう。

真白の彼女は、それを何のためらいもなくのっちゃんめがけて落としてきたはずで。



むしろ、それを放った彼女ですらただではすまないからこそ。

のっちゃんは終わりの見えない『死に戻り』を繰り返していたのかもしれなくて……。



    (第109話につづく)








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