第百七話:幾百死に戻りを繰り返す理由は、きっと今までにないタイプの彼女
「……あれっ? なんだこれ? あたしの目がおかしくなったのかな。なぁ、マイン。ほら、このご主人さまのステータス、何だかバグってない?」
「バグ……ですか。どれ、ええと……!? こ、これはっ」
《 名前:『のっちゃん』
職業:異界の旅人(異世界人)
状態:大興奮、勇気凛々
生命力:1560/2000
精神力:17300/19000
攻撃力:180/180
守備力:24/24
敏捷力:3300/3300
知力:350/350
運力:36/36
取得スキル
完全言語把握能力(レベル∞)
身体能力向上(レベル6)
ステータス鑑定(レベル5)
逃げ足(レベル∞)
挑発(レベル∞)off
身代わり(レベル6) off
空間転移(レベル3)
精霊化『溶岩』(レベル3)
飛翔(レベル6)
部分獣化(レベル3)
氷魔法初級(レベル2)
自爆(レベル3)
九十九神(レベル6)
念話(レベル5)
暗視(レベル3)
ランダム転移(レベル4)
格闘術(レベル2)new!
光魔法初級(レベル2)new!
魅了誘引(レベル2)new!
生来ギフト
『星を撒くもの(スターダスター・マイン)』
『現に戯れしもの(リアル・プレイヤー)』
『愛に揺蕩いしもの(ラブシック・メイズ)』
ざっくばらんに言えば。
パラメーターの数値が、以前拝見させていただいた時と比べて10倍ほど(守備力と運力をのぞく)になっていました。
スキルの『挑発』は以前から∞……カンストしていましたが。
それに加えて『逃げ足』までカンストしてしまっています。
『精霊化』なんかは火から炎、さらに進化して『溶岩』になっていますし、それ以外にも新しきスキルをいくつか覚えていて。
「もしかしなくても、あたしたちが知らないうちに文字通り死ぬほど繰り返したっての? ……って、あぁーっ! あたしのレベルも上がってるぅっ!!」
「……本当ですね。と言いますか、ギフトにもレベルがあったなんて」
恐らく、スキルよりは上がりにくいのでしょうが。
それでもルプレとわたくしはレベル6まで上がっていました。
確認はしていませんが、オーヴェは据え置きのレベル1であるからこそ、レベル表示が無かったのかもしれません。
レベルが上がったとなると、上がった分だけできることが増えているはずです。
どうやらルプレは、セーブポイント……所謂冒険の書の数が増えたり選択肢が増えたり、かつ『死に戻り』、デッドエンドしか寝ない確率まで出るようになったようで。
更に、地図も色々とグレードアップしているようで。
わたくしの方はというと。
虹の星砂となった主さま、のっちゃんがわかたれた数だけ『ミニのっちゃん』として偵察などができたり、七色ののっちゃんのかけらを人に与えることで様々な効果を及ぼすことができたりするようですが。
そんな考察をしている暇もあればこそ、改めて川を下る……その選択肢を確認すると。
『死に戻る』可能性は25パーセントまで減っているのが分かりました。
それでもまだ、四回に一回は駄目なのかと。
しかしそれほどまでにのっちゃんが繰り返す理由を知るためにと。
わたくしたちは、改めましてとばかりにのっちゃんの視点、小さなわたくしたちからすれば大スクリーンにも等しい外の様子が分かるところへ陣取ります。
「おぉ、これで『川を下っていく』っていう選択肢を主さまが選ぶの、ちょうど百回めだな」
「それでも、『死に戻り』の確率が25パーセント割らないんですね。そうまでして同じ選択肢をえらび続ける理由って一体何なのでしょうか」
基本、縛られるのが嫌いなのっちゃんは、今までルプレの選択肢が表示されても出来うる限りどちらも選ばない方向で行動していました。
というより、今の今までは幾度とない失敗を重ねていたであろうその先の、成功例しか観測できなかったわけですが。
わたくしやルプレのレベルが上がったことで、ある程度その成功までの道筋でさえ認識できるようになったということなのでしょう。
このまま行けば、すべての『死に戻り』が詳らかに、ご主人さまだけのものではなく、共有しすべてを分け与えるようになるのも時間の問題かもしれません。
そのための経験を積むために、幾度となく『死に戻り』を繰り返している、だなんて。
わたくしたちばかりに都合の良いことはないはずで。
だとするなら、恐らくは正解の道を選んだ回もあったのかもしれませんが。
何か、のっちゃんにとって気に入らないことでもあったのかもしれません。
不正解であるはずの選択をし続けているのは何故なのか。
わたくしに分からないのだから、ほとんど同じであると言えるルプレにも分かりようもないはずでしたが。
すぐさま目前のスクリーン広がる、もう何だか見慣れて来た気がしなくもない光景……種類様々、有象無象なモンスターたちが。
正気に返ったかのように割れて散り散りになって逃げていったその向こうにおわす、今までにないタイプ(マナもよっし~さんも、どちらかと言えば肉感的でふわんふわんしているのに対し、ちっちゃくて可愛くて。真白の長い長い髪は、神秘的にすぎて目もくらむほどで)……
恐らく、こちらで会わなければならない天使様の娘さんとは異なる、光のようなもの、魔力でできているらしい翼を持ちし少女を。
けっこうな近くで改めまして目の当たりにしたことで。
ルプレは何故か分かったように得意げに答えてくれました。
(第108話につづく)