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第百五話:完全無欠の物語が終わってしまうヒーローばかりを目にするのもいやだから




「……ぬぅ、と。あ、本当だ。選択肢出たぞ」

「んもう。あっさりこなすんだもんなぁ」

「薄々気がついてはおりましたが、主さまって実は天才肌ですわよね」



加えて、一見そうでなさそうに見えて行動力、決断力もあるようで。

それもこれも『死に戻り』の繰り返しの賜物さ、なんてのっちゃんが想っているかどうかはともかくとして。


どれどれ、とばかりにルプレと共に覗き込むと。

ルプレがこうして顕現……外に出ていることでテキスト状態になっている選択肢は、今回二つのようでした。




「んと、なになに。『1、中空を舞い、始まりへと舞い戻る。2、水中を揺蕩い、その終わりへと潜行する……だってよ。何だか、かっこいい感じで変わってね? ってか、あたしは誤魔化されないぞ。これってどう見たって今さっきあたしが口にしたやつじゃん」

「飛んで戻るか、このまま川を下るかの二択ってことですわね。これからもこのように都合よく欲しい選択肢だけ出してもらえると良いのですが」



もしかしたら、のっちゃんの意思と言うよりも、そもそもギフトであるルプレの台詞に反応し、都合が良かったからトレースしただけのようにも思えましたが。


そんな内心は口にせず、だとするならのっちゃんはどう選択するのかを促します。

オーヴェやマナ、よっし~さんがのっちゃんを心配して、大人しくシャーさんの結界内に留まっているとは思えないからこそ一旦戻るのか。


その二択のうちどちらかがデッドエンドであるのならば。

可能性のある方を思い切ってつぶしておくのか。

あるいは、前回のようにどちらも選ばない第三の選択をするのか。


一体、今回はどのような答えを出すのかと、わくわくしつつのっちゃんのそんな答えを待っていた時でした。

同じく、期待しつつもじっと答えを待っていたはずのルプレが、はっとなって声を上げたのは。




「うわっ。ちょっと待てって。なにげに川の向こう、でっかい赤点がめっちゃある! なんだなんだいったい。どうも何かを囲っているようにも見えるけど……これはっ、黄点だってっ!? 敵意のない味方っつーか、仲間を現す色じゃんかっ。まさかマナあたりがご主人のいうこと聞かずに出てきちゃったのか?」



そう言いつつも、上方にいるはずのオーヴェたちを探ってみましたが、シャーさんの結界が邪魔をしているのか、ルプレが言うところの黄点は見当たりません。


例えば万が一オーヴェに何かあれば、さすがにわたくしたちにはわかりますので、ルプレの言う通りその黄点はのっちゃんを心配するあまりに降りてきてしまったマナでなければ、一体誰になるのでしょうか。



「あるいは、この世界にいるという天使さま、でしょうか。お母様からご主人さまのことを聞いていて、迎えにいらした……とか」


どうやって敵性かそうでないのかを判断するのかは、きっとルプレもよくわかっていないでしょうから、

それが本当にわたくしたちのことを知っている味方かどうかは測りかねるところですが……。




「とりあえず、突っ込むぞ。あまりに多勢に無勢の様子。助けないと」

「わぶっ」

「……っ」


わたくしがそう呟いた時には、ルプレとわたくしマインをさっと掴み、その懐へしまったかと思うと。

元々存在していた『逃げ足』のスキルを活かし、虹色の鱗粉を撒き散らしつつそちらへと駆け出していきます。



「いざとなったらあれだ、ギフトの発動準備だけはしておいてくれっ。一旦、中に戻っておいてくれてもいい。……【ボレロ・アンフラメ】。『災厄』の力、発動するっ!」



そして、わたくしたちが何か言うよりも早く。

先程使用したばかりの、溶岩を身に纏いし魔人と化すのっちゃん。


それは、【精霊化】のギフトが進化したもので。

とりあえずのっちゃんの懐の中に入ればその熱さは感じないのかも、なんて思っていましたが、


すぐに尋常ならざる熱を感じ取って、わたくしたちは慌てふためいてのっちゃんの中……待機場であり、終の棲み家でもある内なる世界へと舞い戻ります。


二人して外に出ていたって戦いの役に立つわけでもなし、のっちゃんの足でまといになるだけなのは確かので、大人しく従ったわけでありますが。



「なんつーか思わずしたがっちゃったけどさ。ご主人随分とかわったよな。ご主人ってこんなかっこいい……勇敢だったっけ? こういう時って一にも二にも逃げ出して、結局死に戻りしるのが常じゃなかったか?」

「ある意味でもう、『そのようなこと』には飽きてしまったのかもしれませんね」


もはや、すっかりひとかどの溶岩魔人と化してしまったのっちゃん。

心なしか、迷う様子もなく水しぶきを……苛烈に蒸発させ置き去りにしていって。

その跡に濃霧を発生させつつ、川を下っていくのがのっちゃんの目線、大きな二つのスクリーンをつたって垣間見ることができて。



「そうかぁ。おんなじだったはずなのに、今はもう完全に切り離されちゃってるから、完璧でかっこよくて一度だって失敗しない無敵のヒーローなご主人しか見れないんだな」

「……まぁ、こうして自我を持たなければそもそもそんな事考えもしないわけですけどね」



でもそれだと、のっちゃんに与えられし『死に戻り』の醍醐味が味わえないわけでして。

地の文担当としては何だかそれもつまらない……お話が終わってしまいますので。


ここからは。

少しばかり想像も交えてその一回目をお伝えすることにしましょう。



  (第106話につづく)








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