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第百三話:ぶりっ子ヒロインが余計なフラグを立てたから、チュートリアル



時々忘れ、失念しそうになる、ルプレそのものである【リアル・プレイヤー】の最大の特徴にして、ハズレ能力であると自虐する最たるもの。

それは、選択肢の存在です。



選択肢に従わずスルーする、などといった逃げ道があるのも間違いはないのですが。

正解の選択肢以外を選べばのっちゃんに待っているのは、もれなく『死に戻り』になるます。


ある意味、そういった呪いと表現してもいいのかもしれません。

馬鹿正直にそんな事を言えば、ルプレが傷つくので口にはしませんが。

逆にそれは、抗いがたい死が近づいているからこそ、危機察知の意味合いをもって、選択肢として浮かび上がっているのかもしれなくて。



「……今回は、どんな感じだ? 二つか?」

「うん。二つだな。一つ目は、ここから登って行けって。二つ目はここから下っていけ、だな。どうやら今回ばかりは、無視はきかないようだぜ」


ここにいても仕方ないと、先ほどみんなで認識したばかりだから。

そう言うルプレは、役に立てそうだと思ったそばからのこの状況に、すましてそう言いつつも内心ではへこんでいる様子でしたが。



「ふむ、随分と抽象的だな。しかしだからこそ隙がある、か。ここは敢えて上がらず下がらず、まっすぐ行けるだけ行ってみようか」


とんちと言うかなんと言いますか。

論理の穴をつく事が得意かどうかはともかくとして、そう言うのが好きなのっちゃん。


一つ頷いてみせると、マップで分かる学園らしき広い敷地の建物のある方向……乗っちゃんの背中に控えていたわたくし、マインの後ろ、その向こうを指し示します。

ずっと、降らず登らず真っすぐに行くとなると、今いる場所が山であるならば、そのうち地面がなくなるかと思われますが、それも承知の上での発言なのでしょう。


足場がなくなったら、それぞれの能力でまっすぐ飛べばいい。

選択肢のでた場所から一定の時間、一定距離離れることで、50パーセントのデッドオアアライブの効力が切れると。

何度も『死に戻り』を繰り返して身に沁みて覚えたが故の、ある意味もう一つの『選択』でもあって。




「とにもかくにもひたすらまっすぐね。単純明快でいいじゃん。それじゃ、いざとなったらいつぞやのようにのっちゃんはわたしが運んであげるね」

「いや、自分で飛ぶから……ってこの表現も正直アレだが、うん。それならよっし~さんを運んでやってくれ」

「あの、その。ごめんなさい。迷惑をかけるわね」

「あ、うん。大丈夫です。任せてっ」



これで合法的にのっちゃんにタッチできる。

こうして、のっちゃんの肩に乗ったりするのにも、結構時間がかかったわたくしたちからすれば、すげなく扱われたマナさんご愁傷様、といった気持ちは確かにありましたが。


そもそもが、その飛ぶ力もマナの力を模倣しラーニングしてのっちゃんが使えるようになったものであるし、たぶんきっと、つれないのは照れ隠しだからそれこそ大丈夫ですよ、などとはしゃくであるのに当然口にはしませんでしたが……。



「いいような、悪いような。まったく、なんてーか毎度まぁ、よくもそんな抜け道思いつくもんだぜ」

「あるじ、まさに抜け目なし……」


人の能力を目にしただけである程度再現できてしまう才能こそが、のっちゃんの一番のチャームポイントであると。

問題児ギフト三人娘は、とみに思っていたわけですが。


もしかしたら、そんな好きが高じた思いもよらぬ気づきこそが。

のっちゃんの本当の自慢したいところ、なのかもしれません。


50%のデッドオアアライブを回避できる可能性があるのならばと。

それぞれに思うところはあれど、のっちゃんのそんな『選択』に異を唱えるものなど、いるはずもなくて。



けっして仲が悪い、と言うわけではないのでしょうが。

思惑が外れてしまったことで、何だか申し訳なさそうに頭を下げあって苦笑を浮かべているよっし~さんとマナ。



「……それじゃあ、行こうか」


のっちゃんは、そんな二人を。

おれは関係ないだろう、とでも言わんばかりにスルーして。

だけどそうとだけ一声かけて。

さっさと自身が示した進路へと歩みを進めました。



「おっと。一番やりの先頭はあたしだかんなっ」

「わたくしは、いつものポジションですわね」

「……にゃむ。ここはゆずれない」


おかげでと言いますか何と言いますか。

さりげなく主さま……のっちゃんの肩口やら頭の上やら、ふところやらに潜り込む流れではなくなってしまって。

ちょっぴり恨めしく思いつつも。


ルプレはその七色に透けた羽を駆使して先行し。

わたくしことマインは、いつものようにカメラ人称位置……背後霊のようにのっちゃんの後ろに念力的なもので浮かび上がって。

ちゃっかりオーヴェはよっし~さんの胸元、腕の中に収まって。


しんがりを、マナが務める形で。

のっちゃんと愉快な仲間たち一行は、救世主たる天使さまに会うためにと。

歩みを進めたわけですが。



思えば召喚用の魔法陣とその付近、人やモンスターたちが近づかないような結界……『異世』のようなものが張ってあったのでしょう。

恐らく、シャーさんのアフターフォローによるものだったのでしょうが。


軽い抵抗がありつつも。

シャボン玉、あるいは風船のごとき薄い膜を。

ルプレはまったくもって気づいた様子もなく。

(ちらちらその度にのっちゃんの方に振り返りつつ気にしながらだったから、と言うのもあるのでしょうが)


あっさり抜け出して、飛び出していった……正にその瞬間でした。





「……って、なんだぁっ!? さっきまでぜんぜんそんな気配なかったのに、赤点(敵性)のやつら、めっちゃ向かってくる!」


少なくとも、のっちゃんには分かるようにと。

蒼く透けたマップを具現したままだったこともあって、焦って叫ぶルプレの言う通りに。

シャーさんの結界……異世を抜け出した途端、まるでそれが合図であったかのように、警報音でも鳴らしてしまったかのように、ダンジョン内で何かをしでかしてしまったかのように。

大小様々な赤点が、一斉にこっちに向かってくるのが分かります。



一旦、異世の内側へ戻りましょうと。

声を上げるよりも早く。

その中でもかなりのスピードで向かってくるものがあって。



「上よっ! 気をつけて!」


よっし~さんが、そう声を上げた時。

咄嗟の急展開に動けなかったルプレの頭上を覆うように三体、湾曲した嘴と翼をを持つ、鳥顔人型のモンスターが飛来してきました。


その手にはぼろぼろながらも、それぞれが異なる得物を持っていて。

よくよく見れば、全身が岩でできたゴーレム……あるいはガーゴイルとでも呼ぶべきモンスターであることが分かりましたが。



「うおぉ、そういやあたしって攻撃のひとつもできないんじゃん! 何でいきって前に出ちゃってんのさぁっ」


今の今まで(それこそのっちゃんがやり直したから知りえないだけなのかもしれませんが)前線に立って戦ったことがなかった事実に気づかされるルプレ。

基本、戦う術を持たないのはマインことわたくしも同じで。

例外があるとすれば、意志ある武具、天使のトゥェルさんに変わっているオーヴェだけで。


ただただ身体を縮こませ頭を抱えるのみのルプレのためにと。

そんなオーヴェを携えたよっし~さんが、マナが、瞬時に戦闘態勢の入らんとしていたわけですが。



「馬鹿野郎っ、調子に乗って先行なんかするからだっ」


その時、真っ先に動いたのは一番近くにいたのっちゃんでした。

前世界の、数多の『死に戻り』による多大なる経験値で、『挑発』スキルくらいしか誇るものがなかったのっちゃんはもう、そこにはいません。

ガーゴイルたちに負けないくらいの素早さで、ルプレの元へと駆け寄ったかと思うと。


特に何かを唱えたわけでもないのに。

そんなのっちゃんの身体がキラキラと。

まるでわたくしそのものであるギフトが発動したかのように明滅していって……。



    (第104話につづく)










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